うちゅうてきなとりで

The Cosmological Fort 無職戦闘員による本メモ、創作、外国語の勉強その他

本メモ

『スターリン時代』クリヴィツキー その2 ――亡命・不審死したソ連情報員の暴露本

4 スターリン、ドル紙幣を偽造する スターリンの指示を受けた各国の工作員たちはドル紙幣の偽造に従事した。 5 オゲペウ(OGPU) OGPUはジェルジンスキーの設立したチェカの後身である。OGPUはスターリンの手先として粛清を実行したが、長官ヤ…

『スターリン時代』クリヴィツキー その1 ――亡命・不審死したソ連情報員の暴露本

◆メモ 著者のワルター・クリヴィツキーは西ヨーロッパのソヴィエト諜報機関長として勤務したのち亡命し、1941年に不審死した。 著者はロシア革命当時からボリシェヴィキとして働いてきたが、スターリンの所業――集団餓死、大粛清、スペイン内戦における不…

『野中広務 差別と権力』魚住昭 ――ある政治の現実

◆メモ 著者によれば野中は弱者に対する気遣いを持った政治家だという。 しかし、政治家としての業務の上では、賄賂や買収、新聞記者への食事振る舞いによる世論統制などを行っている。 こうした汚い行為が政治の現実であり、今も昔も変わっていないという事…

『モンゴル帝国の興亡』杉山正明 その2 ――モンゴル帝国の入門

2 フレグの西方征服……イラン、バグダードのアッバース朝、イスマーイール派(シーア派暗殺教団) ja.wikipedia.org イスマーイール派は10世紀にエジプトでファーティマ朝を起こした。そこから分派した東方イスマーイール派は、イランのアルボルズ山脈を中…

『モンゴル帝国の興亡』杉山正明 その1 ――モンゴル帝国の入門

モンゴル帝国の成立から解体までをたどる。従来のペルシア語史料・中国語史料のみにとらわれず、世界史的な視野からモンゴルを再認識するのが特徴である。 読みやすいが、帝国成立後の内紛過程は複雑である。 モンゴルだけでなく、元朝、明朝、清朝ともに、…

『大元帥・昭和天皇』山田朗 その2 ――最高指揮官の行動をたどる

3 アジア太平洋戦争における天皇の戦争指導 天皇が、対英米戦争への躊躇から、容認へと転換した理由について考える。 海軍……「ジリ貧論」(アメリカから石油禁輸されたら数か月以内に開戦すべし)、勝利の可能性は不明、覚束ないとの永野総長回答 杉山総長…

『大元帥・昭和天皇』山田朗 その1 ――最高指揮官の行動をたどる

――本書は、大元帥としての昭和天皇の軍務と戦争関与の実態を、可能な限り具体的に明らかにしようとしたものである。 ja.wikipedia.org ◆所見 天皇は何も知らなかった説、常に戦争に反対していた説が、資料(側近、軍部、天皇自身の発言録)によって明確に否…

『流転の王妃の昭和史』愛新覚羅浩 ――血統がいい人の話

愛新覚羅溥傑(溥儀の弟)と政略結婚させられた嵯峨侯爵家出身者の自伝。 著者は終戦で夫の溥傑と離別したあと、周恩来の取り計らいで中国に戻り夫と再会、その後北京で生活した。 ja.wikipedia.org ja.wikipedia.org ◆所見 嵯峨家はもともと正親町三条と名…

『権力と支配』マックス・ヴェーバー その2 ――権力を考える古典

8 合議制と権力分立 支配は伝統的にあるいは合理的に制限されることがある。 ・封建制 ・官僚制 ・合議制 合議制原理を最高決定機関に適用することで、支配を弱体化しようとする作用がある。 ――合議制は、――単一支配的な棄却合議制の事例をのぞき――精確かつ…

『権力と支配』マックス・ヴェーバー その1 ――権力を考える古典

◆メモ 歴史上の政治権力に関するデータを集め、定義として一般化しているため、理解が難しい箇所が多い。 しかし重要なのは、ヴェーバーによる民主制や官僚制の分析である。ヴェーバーが描く民主制や官僚制は、きれいごとの定義ではなく、歴史上の現実である…

『Ghost Wars』Steve Coll その3 ――ビンラディンはわしが育てた

15 イスラム主義者が政権を掌握したスーダンは、テロ支援国家となっていた。 ハルツームにおいて、邸宅に住むビンラディンは有力なテロ組織者・テロリストの「フォード財団」として有名になりつつあった。 ユースフの尋問から、合衆国内の民間航空がテロリ…

『Ghost Wars』Steve Coll その2 ――ビンラディンはわしが育てた

6 マスードは軍人の子であり、比較的裕福な環境で育った。1960年代、特にカブールではイスラム主義と共産主義の運動がさかんだった。マスードら若い将校たちはイスラム主義運動に加入した。 アフガンは19世紀以前まで、スーフィーが主流だったが、1…

『Ghost Wars』Steve Coll その1 ――ビンラディンはわしが育てた

副題は、「CIA、アフガニスタン、そしてビンラディンについての、ソ連侵攻から911までの秘史」。 ◆所見 アフガン紛争時代のCIAによる秘密支援がイスラム主義者を育成し、最終的にアルカイダはアメリカを攻撃する。 アメリカは表立ってアフガン情勢…

『児玉誉士夫』有馬哲夫 ――外交のもう1つの顔

本書は、アメリカ(情報関係部署)が蓄積した文書資料をもとに、政治プロデューサーとしての児玉誉士夫を検討するものである。 同盟諸国に対するアメリカの政治工作について細かく書かれている。 著者はメディアや米占領期に関する研究者で、政治的立場は私…

『韓国併合』海野福寿 ――植民地政策の時代

明治政府による朝鮮保護領化から併合までを時系列で説明する本。 ◆所見 著者の立場は、韓国併合は、当時の国際法上は適法だったものの、道義的には問題があったというものである。 明治政府は設立後すぐに台湾や沖縄、朝鮮などの獲得に乗り出しており、完全…

『わが半生』溥儀 その3――宮殿の異常な人びとと、そこにたかる人びと

7 板垣との面会、溥儀が満洲国執政を受け入れる経緯について。 ja.wikipedia.org ――……かれは鞄のなかから『満蒙人民宣言書』と五色の『満洲国国旗』をとりだして、私の前の小卓の上に置いた。私は怒りで胸もはりさけそうになっていた。ぶるぶる震える手でそ…

『わが半生』溥儀 その2――宮殿の異常な人びとと、そこにたかる人びと

6 溥儀は皇后と結婚し、また妃を迎えた。婚礼行事は清朝時代のように盛大におこなわれたため、国民からの反感を買った。各外国行使が出席し、また各地に散っていた清朝の遺臣たちが春の虫のようにやってきた。 しかし、結婚して何が変わるわけでもなく、溥…

『わが半生』溥儀 その1――宮殿の異常な人びとと、そこにたかる人びと

宣統帝、愛新覚羅溥儀が1964年に北京で出版した自伝で、直後香港で話題になり世界で増刷された。 ja.wikipedia.org ◆所見 溥儀は西太后の指令によって光緒帝の養子となり、皇帝となった。溥儀の家系は西太后らが展開する醜悪な権力闘争を生き延びた。 共…

『ゴー・フォー・ブローク』渡辺正清 ――日系人部隊の話

アメリカ人としての存在意義を証明するために従軍した日系二世部隊の足跡をたどる。 著者自身もアメリカ生活が長く、かつての退役日系人たちとともにイタリアの戦跡を再訪することで、かれらの歴史を振り返る。 ◆メモ なぜ日系人部隊に注目するのか ・なぜか…

『グアテマラ虐殺の記憶』 その2 ――グアテマラ内戦に関する数少ない日本語の本

2 ゲリラとの戦いにおいて、軍はゲリラ浸透度合いで地域をゾーン化し、対策した。住民の大量拘留、移動制限、モデル村構築によるゲリラ拠点の無力化が行われた。軍は、様々な学問を利用し、また人種偏見に基づいて先住民族に対応した。 軍は、ゲリラ蔑視、…

『グアテマラ虐殺の記憶』 その1 ――グアテマラ内戦に関する数少ない日本語の本

◆所感と個人的な話 グアテマラ内戦の実態や、被害について詳しく書かれた本。 軍事独裁を行ったリオス・モントは、2013年に国内裁判所で有罪判決を受けた後、2018年に死亡した。 www.cnn.co.jp ja.wikipedia.org ◆グアテマラのフィクション グアテマ…

『Fear』Bob Woodward その2 ――民主主義の実験

14 イランの非公式テロ組織であるヒズボラの危険性について。 元陸軍大佐の情報担当であるデレク・ハーヴェイは、クシュナーからサウジアラビア訪問を打診された。クシュナーはイスラエルのネタニヤフ首相と親交があり、サウジアラビアはイスラエルととも…

『Fear』Bob Woodward その1 ――民主主義の実験

ボブ・ウッドワードによるトランプ政権の調査報告。 アメリカで売れているということで読んだ。 ◆感想 本書で描かれるトランプの振る舞いは無能な君主であり、側近たちはそれに振り回される役人である。 ・報告を聞かない、読まない、理解しようとしない ・…

『禅』鈴木大拙 ――禅の普及に努めた人物による説明

◆メモ 英語版Wikipediaには、鈴木大拙がナチズムとユダヤ人追放政策にある程度の共感を表明していた事実や論争が取り上げられているが、日本語版では丸々省かれている。 キリスト教聖職者とドイツ安楽死作戦に関する本("By Trust Betrayed")でも、多くのド…

『スノーデン 日本への警告』スノーデン ――知識は無知を制する。そして自らを律しようとする市民は知識が与える力で武装しなければならない

“Knowledge will forever govern ignorance, and a people who mean to be their own governors, must arm themselves with the power knowledge gives.”― James Madison スノーデンが暴露した大量監視システムに関する話題を中心に、民主主義社会における監…

『僕は少年ゲリラ兵だった:陸軍中野学校が作った沖縄秘密部隊』NHKスペシャル取材班 ――我が国の少年兵政策

沖縄戦時、北部でゲリラ戦を強いられた少年兵たちがいた。 NHKの取材班は、生き残った当時の人びとを取材しその全貌をつかもうとする。 新潮文庫版は『少年ゲリラ兵の告白』という書名に変わっている。 ◆所見 小野田氏で有名な陸軍中野学校二俣分校が主役…

『東本願寺三十年紛争』田原由紀雄 ――寺の内部抗争について

東本願寺紛争とは、1969年ごろから表面化した、「宗門の天皇家」大谷家――親鸞の血を引く一族であるーーを中心とする伝統擁護派と、「同朋会運動」を中心とする改革派との争いである。 ja.wikipedia.org 本願寺は、親鸞没後、関東の有力門弟が京都東山・…

『タテ社会の人間関係』中根千枝 ――ルールではなく人に従う

日本論の古典の1つだという。 本書の目的は、現代日本社会を社会人類学によって分析し、それがどのようなものかといった理論を提示するものである。 ◆所見 本書で考察されている企業(一体感、家族ぐるみ)の様子は、一昔前のものである。しかし、現代にも…

『自省録』マルクス・アウレーリウス その2 ――生きているうちに、許されている間に、善き人たれ

5 重視するべきなのは次の精神である……「誠実、謹厳、忍苦、享楽的でないこと、運命にたいして呟かぬこと、寡欲、親切、自由、単純、真面目、高邁な精神」 恩を売るようなことは慎むこと。 すべてを与えられたものとして受け入れること。 人間にとって自然…

『自省録』マルクス・アウレーリウス その1 ――生きているうちに、許されている間に、善き人たれ

2世紀のローマ皇帝によるメモ。マルクス・アウレーリウスの治下は戦争が絶えなかった。 エピクテトスのストア哲学から強い影響を受けている。セネカ、エピクテトス、マルクス・アウレーリウスらの後期ストア派は、宗教的色彩を帯びており、「哲学は初期の人…