うちゅうてきなとりで

The Cosmological Fort 無職戦闘員による本メモ、創作、外国語の勉強その他

本メモ

『Into That Darkness』Gitta Sereny その1 ――普通の市民が絶滅収容所の所長になったとき

シュロス・ハルトハイム(Schloss Hartheim)安楽死施設の管理者、ソビボル(Sobibor)、トレブリンカ(Treblinka)絶滅収容所の所長を務めたフランツ・シュタングル(Franz Stangl)とのインタビューをまとめた本。 シュタングルは戦後逃亡し隠れていたが、…

『毒ガス戦と日本軍』吉見義明 その2 ――日本軍はどのように化学兵器を使ったか

5 エスカレートする作戦 ・1939年、陸軍は山西省において糜爛性ガス(イペリット、ルイサイト)の実験使用を行った。 残存している命令からわかること……中国民間人への被害は努めて減らすという努力義務を科す一方、三国人(欧米人)に対しては絶対に被…

『毒ガス戦と日本軍』吉見義明 その1 ――日本軍はどのように化学兵器を使ったか

◆所感 日本における毒ガス兵器開発の経緯から実際の使用までを包括的に説明する本。おそらくこれ以上に詳しい日本語の一般書はないのではないか。 毒ガスは第2次大戦時に既に非人道的兵器、国際法違反であるという認識が広まりつつあったが、総力戦のなかで…

『ロシア秘密警察の歴史』リチャード・ディーコン その3 ――秘密警察は人類最古のシステムの1つ

16 リヒャルト・ゾルゲ ゾルゲは近代でもっとも優秀なスパイの1人とされる。かれはGRU(赤軍参謀本部情報総局)職員となり主に極東で活躍した。 ・日本がイギリスの手薄な地点、シンガポールなどを攻撃することを予想 ・ドイツ大使館にドイツ人として…

『ロシア秘密警察の歴史』リチャード・ディーコン その2 ――秘密警察は人類最古のシステムの1つ

9 アゼフの失脚 オフラナは莫大な資金をつぎ込み対ドイツ諜報活動を行い一定の成果をあげた。しかし同時に、多くの革命主義者がオフラナにまんまと浸透してしまった。 ――とくにボリシェヴィキなどは独自の対情報工作組織を作り上げただけでなく、革命が成功…

『ロシア秘密警察の歴史』リチャード・ディーコン その1 ――秘密警察は人類最古のシステムの1つ

イヴァン雷帝時代から現代までの、ロシア秘密警察の歴史を通観する。 特に、モンゴル統治時代の秘密警察システムがその後のロシアに大きく影響したことが示される。 本書はソ連崩壊直前に出版された。 ◆メモ スパイ活動や組織制度について非常に細かく書かれ…

『本土決戦』土門周平 ――ひのきのぼうや石のオノで米軍を迎え撃つ

海軍・陸軍・米軍、それぞれの本土決戦の実情を浮き彫りにする。 戦争指導者たちは、不可能とわかっていながら形ばかりの準備を進めていた。 *** 沖縄陥落前には、米軍を迎え撃とうにも、未然阻止する策がなかった。 ・本土決戦作戦:「決号作戦」の基本は、…

『日本残酷物語 1』その2 ――飢饉から生まれた人食い女

南部藩において、領内で畑を泥棒する者が次々とらえられ、カマスをかぶせられて川に流された。 明治・昭和の飢饉……明治2年の飢饉では外国米を輸入した。このときもたらされた南京袋はその後さまざまな用途に用いられた。 農民は、高値の国産米は売り、自分…

『日本残酷物語 1』その1 ――飢饉から生まれた人食い女

古代から近代までの、歴史の奥に埋もれた貧しい人びとの生活を描く。 ――これは流砂のごとく日本の最底辺にうずもれた人びとの物語である。自然の奇蹟に見放され、体制の幸福にあずかることを知らぬ民衆の生活の記録であり、異常な速度と巨大な社会機構のかも…

『The Bridge on the Drina』Ivo Andric ――ボスニアの一地方をめぐる歴史物語

ボスニア出身の作家アンドリッチの代表作。 『ドリナの橋』という邦訳が出ている。 トルコ、オーストリアと大国に翻弄される人びとの長い歴史を題材にしている。 ja.wikipedia.org 1571年、ヴィシェグラードVisegradを横切るドリナ河に、オスマン帝国の…

『社会契約論』ルソー その2 ――社会契約説の古典を読む

*** 3 政治の法、すなわち政府の形態について ・自由の実現のために力と意志、すなわち「立法権」と「執行権」が不可欠である。立法権は主権者としての人民に属するが、執行権は、主権者の代理・公僕たる政府が担う。 ・執行を担うものが最高行政であり、「…

『社会契約論』ルソー その1 ――社会契約説の古典を読む

副題は「政治的権利の諸原理」。 1762年に出版され、フランス王国、カトリック教会から激しい批判を受けた。 *** ◆所見 人民は自由と平等を確保するために「社会契約」に基づき国家を成立させる。このため国家・政府・統治者の主人は人民でなければなら…

『ロシアン・ダイアリー』アンナ・ポリトコフスカヤ その2 ――権威主義体制の国/服従したい・子供扱いされたい人びと

2 2004.4~12 大統領選が終わった後も、野党や反対派の動きは見られなかった。かれらはすべてをあきらめているように見えた。 イングーシ、チェチェンでは、それぞれ国家元首がクレムリンの傀儡に置き換えられた(イングーシ共和国のジャジコフ、チ…

『ロシアン・ダイアリー』アンナ・ポリトコフスカヤ その1 ――権威主義体制の国/服従したい・子供扱いされたい人びと

著者は2006年10月に何者かに射殺された。 ◆所見 プーチンの2004年大統領選から2005年8月までのロシア情勢を記録した本。生まれかけた民主主義が消え、不正と暴力、無気力に社会が包まれる様子を描く。 人びとの一部は不満を感じているが、自…

『徳政令』笠松宏至

歴史上、もっとも有名な法の1つである徳政令を中心に、中世の法と慣習を考える本。 現代とはかけ離れた法の概念や、運用方法を知ることができる。 ◆所感 ・中世から、不動産トラブル、債権債務のトラブルは社会のなかで大きなウェイトを占めていた。 ・中央…

『Inside the Gas Chambers』Shlomo Venezia その2 ――ガス室運営に従事したアウシュヴィッツ体験者の回想録

4 叛乱はカポ、ゾンダーコマンドの一部、そして外部のレジスタンスによって計画された。これはすぐ失敗し、首謀者や逃亡者は処刑された。 あるときポーランド人のレジスタンス女性が送り込まれてきたが、この人物はユダヤ人にあまり良い感情を持っていない…

『Inside the Gas Chambers』Shlomo Venezia その1 ――ガス室運営に従事したアウシュヴィッツ体験者の回想録

アウシュヴィッツ=ビルケナウ(Auschwitz-Birkenau)に連行され、収容所内でゾンダーコマンド(Sonderkommando)として勤務し、生き延びた人物の貴重な証言。 ギリシア・サロニカのユダヤ人市街で生まれ、イタリア、次いでドイツに占領されるまで、貧しいが…

『苦海浄土』石牟礼道子 ――水俣病を題材に書かれたフィクション

水俣病を題材に、作者が想像力を駆使して書いた文芸作品。作者自身が水俣市近傍の出身であり、水俣病に係る社会運動に参加している。 このため、ノンフィクションであるかのように考えてしまうが、そうではなくあくまでフィクションだとのことである。 患者…

『戦争広告代理店』高木徹 ――インフォメーション・ウォーという戦争行為

◆所感 ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争における情報戦を検討する本。 戦争における情報戦(Information Warfare)とは、国際社会の世論への働きかけ、メディアに自分たちの正当性を理解させることを通じて、戦況を有利にするものである(実際には定義はもっと…

『日本の軍隊―兵士たちの近代史』吉田裕 ――なぜ日本軍は国民から離れていったのか

◆所感 「天皇の軍隊」である日本軍と、社会・民衆との関わりに焦点を当てた本。 明治維新後に創設された軍は、当初、近代化の歯車として機能した。軍隊が近代社会の要素を確立させ、また近代文化を地方に普及させた。 軍隊は、社会のなかの要素として組み込…

『アウシュヴィッツと<アウシュヴィッツの嘘>』ティル・バスティアン

アウシュヴィッツ否定論に対抗するための本。 事実の説明や、否定論や修正主義的言説の経緯が紹介される。 1 アウシュヴィッツ概要 ・1920年に制定されたナチ党綱領には、「ドイツ国民にユダヤ人は含めてはならない」とする規定が既に存在した。 ・19…

『Hegemony or Survival』Noam Chomsky その3 ――テロ国家、合衆国

6 ディレンマと覇権 イラク戦争を支持したヨーロッパ8ヶ国は、ただ「イエス・サー」と叫んだわけではなく、EUに加盟したいという思惑もあった。 合衆国は地球規模の覇権を保持すべきとの方針を継続してきたが、戦後、欧州やアジア地域の復興によりその影…

『Hegemony or Survival』Noam Chomsky その2 ――テロ国家、合衆国

4 危険な時代 国際テロリズムの本家たる合衆国の活動を検討する。 1962年10月キューバ危機の見直し……キューバがソ連に支援を求め、ソ連がミサイルを運搬したのは、キューバを合衆国の侵略から防衛するためだった。 合衆国はソ連のふところであるトル…

『Hegemony or Survival』Noam Chomsky その1 ――テロ国家、合衆国

◆所感 副題は、地球規模覇権へのアメリカの探求。 合衆国の歴史が暴力と独善に彩られている様を、細かい事実や報道を元に浮き彫りにしていく。 要点は、合衆国の掲げる理念――民主主義や自由、人権――といったものがまやかしにすぎず、さらに、その非道行為が…

『蚤と爆弾』吉村昭 ――731部隊と石井四郎

軍医中将石井四郎と731部隊をもとにつくられたフィクション。 京都帝大出身の曽根次郎は、陸軍で勤務する。しかし、軍医の世界は東京帝大派閥が幅を利かせており、出世は望めなかった。かれは「人を救う」という医者としての信条よりも、自分の能力を発揮…

『法における常識』ヴィノグラドフ その2 ――法とは何かを概説する20世紀の古典

*** 5 立法 法の源(Sources):立法、裁判官のつくる法(慣習法、判決、衡平(Equity)) または自然法を源とする学者もいる。 法律の文理解釈は、裁判所に永久に課せられた仕事である。 裁判所は専門的な事柄に対しても技術的解釈を行わなければならない…

『法における常識』ヴィノグラドフ その1 ――法とは何かを概説する20世紀の古典

オックスフォード大教授、1919年初版の、法律入門書。 著者のヴィノグラドフはロシア人だが、帝政ロシアにおいて当局と衝突を繰り返したため、主にイギリスで活動した(最終的に帰化した)。 法律とは何かが簡潔にまとめられている。 調べたところAmazon…

『寺院消滅』鵜飼秀徳 ――衰退していく寺院、世俗化された坊主

全国には7万7000の寺院があり、うち無住寺院は2万、不活動寺院は2000以上である。寺院消滅の問題は、地方の消滅(高齢化、過疎化、人口流出)とつながっている。 本書は、社会構造の変化と寺院との関係に焦点をあてる。 1 ・長崎県五島列島宇久島…

『フランス革命 歴史における劇薬』遅塚忠躬 ――革命の光と闇

フランス革命が、フランスの歴史、フランス国民にとって劇薬であったことを伝えるという趣旨の本。 著者は、革命が人間の偉大(理想)と悲惨(現実の殺戮、恐怖政治、戦争)を体現していると考える。 岩波ジュニア新書ということで、子供向けにわかりやすく…

『英雄なき島』久山忍 ――硫黄島の戦いと名将の実態

海軍航空隊の要員として硫黄島の戦いに参加した大曲覚(おおまがり・さとる)海軍中尉の回想録。 ◆所感 所在航空部隊である海軍の、さらに下級士官からの視点ということで、末端の雰囲気や状況がよく伝わってくる。 防空壕での日本兵たちの生活は、完全に別…