うちゅうてきなとりで

The Cosmological Fort 無職戦闘員による本メモ、創作、外国語の勉強その他

2016-09-01から1ヶ月間の記事一覧

『昭和天皇の終戦史』吉田裕 その1

1990年に公開された『昭和天皇独白録』を史料として、「力を持たない天皇」像に対して疑問を投げかける。 古川隆久『昭和天皇』とはまったく違った像が描かれている。 1990年に発見された『昭和天皇独白録』は、終戦直後の46年における天皇の回顧…

「キャピタリズム」

制作:2009年 監督:マイケル・ムーア アメリカの格差問題に焦点をあてる映画。適切なコントロールがなされず、政治と癒着した企業が、自由競争の名の下に国民の大多数を貧困に追い込む状況を描く。 住宅ローン、医療費負担増大、学費の値上げ、過度の民…

動物界に接続されて

あの夕陽が…… 交換手の やわらかい屋根を 指で押すたびに、黄緑の表皮がへこみ、 棘はみな 生きて呼吸をつなぎ、ひもとなっていく 月ののぼるとき、2回めのとき、 鉄条網の 整備のために鳥籠を 解放するわたしは眼のない人夫を使役する 鳥籠、 それで。 わ…

『獄中記』佐藤優

逮捕された元外務省職員の本。大量の本を出しており粗製乱造の感もあるが、本書は獄中での読書やメモをまとめた割と初期のものである。 もし独房に入れられたり軟禁されたりしたら、とりあえず外国語勉強に専念しようという感想を持った。 著者によれば、政…

『The Image』Daniel J. Boorstin その2

3 旅行者から観光者へ 観光業の発展によって、かつては人生の一大イベントであり、限られた人びとしか経験できなかった海外旅行が、誰でも手に入る商品となった。 旅行は陳腐化し、冒険や計画、リスク等の要素は薄れていった。 美術館、国内旅行、ホテル、…

『The Image』Daniel J. Boorstin その1

1960年代に書かれたアメリカのメディアと国民の性質に関する本。メディア論の古典で、現代にも通じる指摘事項が含まれている。 著者いわく、アメリカ人は「過度の期待」に支配されている。 かれらは世界や人生、自己にあまりに多くを期待しすぎて、自分…

伝送

送り込むこと。 木の集まりと 葉でふたをされた、沼地を 抜けて 鳩の、黄金の波が 運動していくこと。 青と銀との 混ざり合った、無言の 翼が、 太陽のつぶれるまで 働いた。 かれらは伝わった。

「ジャージー・ボーイズ」

制作:2014年 監督:クリント・イーストウッド 実在のバンドであるフォー・シーズンズを題材にした映画。元はミュージカルだという。 随所に挿入される歌が場面や展開に合っており感動する。 貧しいイタリア系の若者たちが立身出世していくが、やがてト…

発言歌2

波と雲と対流圏とのお互いの抗体夏のモールス信号 太陽素の足りない牧神いまはもう歯茎まで砂に埋もれて眠る

『三島瑞穂の自衛隊へのアドバイス』

元米陸軍の日系アメリカ人が書いた本。この人物の著作は、ほかに自身の体験を元にした『地上最強のアメリカ陸軍特殊部隊』を読んだことがある。 グリーンベレーとしてベトナム戦争に従軍しており、価値観や経験は、当然、日本人とは異質である。 海外に派遣…

『飛行船の歴史と技術』牧野光雄

日本語では数少ない飛行船関連書籍だという。 1 序論 現在航空機のほとんどは翼の揚力を利用する。一方、空気より軽い気体を使う気球や飛行船は軽航空機Lighter Than Air aircraft略してLTAと分類される。 飛行船は軍事利用できず衰退したが、その欠点は…

『ヤクザと原発』鈴木智彦

暴力団ライターが原発作業員として現場に潜入する手記。 ヤクザと原発事業との関係を体系的に説明するのではなく、潜入手記・メモの形をとっている。 原発事業は東電を頂点としてプラントメーカー(東芝、日立等)、その下に下請けピラミッドが構成されてい…

発言歌

灰色の肥満の犬を手で招く諱(いみな)をよけるつま先愉快 海面が4つの旗に覆われてわたしはマイモニデスにしたがう 象は縮む皮フは広がる断裂の奥にはラパッロの庭があった

「最強のふたり」

制作:2011年 監督:エリック・トレダノ、オリヴィエ・ナカシュ 障害者の大富豪と、スラム出身の若者(移民2世)が介護をきっかけに意気投合する映画。 人種や育ち、嗜好等全て違うが、それでもお互いに友人になれることを示す。 若者のジョークがおも…

緑色の技術

骨がしぼりこまれた後も、 眼球は、能力が低いため 枝と枝とのつながりを 見つけることができなかった。 葉の表面に管が浮き出し その日の太陽が、光の 無数の穴となり わたしは系統を書いた。

『Origins of the Second World War』A.J.P Taylor その3

7 ヒトラーは武力による威嚇と小規模紛争によって野望を達成できると考えていた。 かれは一般的な侵略者のイメージとは異なり、自分からは動かずに、機会を待つことに長けていた。 英仏は、ヴェルサイユ条約におけるドイツの不満を理解しており、その要求に…

『Origins of the Second World War』A.J.P Taylor その2

3 ヴェルサイユ条約における最大の不備が賠償金であることを説明する。 ・賠償金は戦後数年たっても確定しなかった。研究の結果、ドイツは賠償金の支払いを怠慢していたことが判明している。 ・ドイツのインフレと困窮は戦費が主因だが、ドイツ国民の大半は…

『Origins of the Second World War』A.J.P Taylor その1

第1次大戦や、列強の覇権争いについての著作がある、イギリスの歴史家テイラーによる本。 第2次大戦の原因を、歴史学者の視点から検討する。 テイラーの本は『ビスマルク』、『第1次世界大戦』、『The Struggle for Mastery in Europe』を読んだが、どれ…

サヤト・ノヴァの墓

サヤト・ノヴァ(Sayat-Nova 1712~1795)はジョージア(グルジア)のトビリシで生まれたアルメニア人の詩人である。 ジョージア王朝に詩人、外交官として仕えた後、アルメニア正教の僧侶となり、トビリシや、アルメニアのハフパット修道院を含む教…

サボテン作戦

その日、視察団の一行が 粒子のじゅうたんの上を 歩いてやってきた。 青、金、銀の、馬の毛皮を加工したものに 対して、モノクルを光らせる 足の裏、足の裏たちの横断 時刻にあわせた動きが 明らかになる。 暗闇から手がのびて、そのまま 用水路に沈むものは…

「ナイロビの蜂」

制作:2005年 監督:フェルナンド・メイレレス 原題はthe constant gardener. ジョン・ル・カレが原作だがまだ読んでいない。 不正を追及する人びとを描く映画。 イギリス外交官の妻は、英国と製薬会社による不正を追及するが抹殺される。外交官は、妻の…