うちゅうてきなとりで

The Cosmological Fort 無職戦闘員による本メモ、創作、外国語の勉強その他

2016-11-01から1ヶ月間の記事一覧

『アフガン侵攻1979-89』ブレースウェート その1

著者はロシア経験の長いイギリスの外交官で、独ソ戦についても本を書いている。 1978年、アフガニスタンにおいて、クーデタにより共産主義政権が成立すると、タラキはスターリンと同じ手段で政権を安定させようと試みた。このため、翌年、ヘラートにて大…

『憲兵』大谷敬二郎

満州事変前夜から終戦までの間、憲兵として勤務した人物の本。 憲兵としての初度配置が関東軍であり、石原莞爾らが謀略によって事変を起こす場面に立ち会うことになった。 軍を含む国家全体が、感情的、短絡的な傾向を強めていく様子を冷静に記述していく。 …

『個人と国家』樋口陽一

人権主体としての個人と、主権の担い手としての国家とを考える本。 個人の自由に対する保障をより強化していこうという考えが貫かれている。 個別の事例にあれこれコメントする形式をとっており、漫談に近い。しかし、憲法とは何か、立憲主義とは何か、国家…

鉱山歌

(マフェキング(Mafeking)において、イエローケーキの塊を飲み込むベーデン=パウエル大佐を見て) 細密画の指からたどる林檎の実をなめて気道のウランを溶かす 岩の中で赤い子黒い子頭をおさえ文様を彫る火の国のため 不整合の真鍮製の人形さえ落ち葉をた…

「オールド・ボーイ」

制作:2003年 監督:パク・チャヌク ネタバレ注意 日本の漫画が原作ということで、各所にデフォルメされた人物、設定が登場する。 内容は、個人的な恨みや思い入れからくる復讐劇であり、登場人物たちにとっては一大事だろうが、わたしはそこまで入って…

『ダーウィンの危険な思想』デネット その4

16 道徳と進化の関わりについて考える。 道徳の起源を論じた学者として、ホッブズ、ニーチェに言及する。 ニーチェはダーウィンの影響を受けているが、同時代の社会ダーウィニズムについては厳しく批判した。 ニーチェは、道徳が成立することによって、そ…

『ダーウィンの危険な思想』デネット その3

10 ダーウィン主義に対して大きな影響を及ぼした、批判者の1人であるグールドについて。 スティーヴン・グールドは、進化論を普及させる上では素晴らしい業績を残した。しかし、彼の説は進化論に「スカイフック」(何者かが進化を今あるように導いたとす…

『ダーウィンの危険な思想』デネット その2

6 現在の生命の形は、DNA配列により可能な無数の形の中のごく一部に過ぎない。それらは、盲目的で無作為な過程によってつくられた生物学的秩序である。 種は非行為者であり、自然淘汰が様々な問題を解決していく。デザインは知性を必要とするが、それは…

『ダーウィンの危険な思想』デネット その1

ダーウィンの持つ重要性をわかりやすく説明するための本。 具体的には、ダーウィン革命が既存の世界観をどのように変えてしまうのか、ダーウィン思想が、その反論に対し、いかに耐えてきたか、ダーウィン思想がヒトにも適用されうることを説明する。 *** 1…

居留地において

沼から足をだした わたしは、底に固まった泥が 無音でふくらみ、表皮まで せまるのを見た 反復する魚たちの、腹をこすり 水の藁と塵を舞い上げる動きに 目をこらす 無数の手がフィールドをかきまわし かれらは探す この国の殻、抜け殻は、 口からマンガンを…

「グランド・ブタペスト・ホテル」

制作:2014年 監督:ウェス・アンダーソン 架空の国にあるホテルのコンシェルジュが主人公の映画。こっけいで非現実的な登場人物が登場し、殺された老女の遺産をめぐって事件が進む。 人物たちのやりとりや動きに、笑える箇所がある。 平面図を意識した…

夢の旗

朝の煙を丸めたもの 黒色火薬のにおいのする 雨を口にふくんだ 生ぬるいこぶしの石 いたるところから 土器たちの戦列が 運動をくりかえす 登場人物たちの 眼のソケットは、1カ所ずつ 除染され ようやく、光において 何も見えなくなる

『憲兵物語』森本賢吉 その2

*** 「注意すべき中国人の慣習」……面子を重んじ、言動に注意し、敵意を持たれないようにすること。大家族主義を認識すること。中国人は収入に応じた生活をする。 *** 北支軍の憲兵の悪評について、小磯国昭陸軍大将に尋ねられた著者は回答する。 ――……憲兵令…