うちゅうてきなとりで

The Cosmological Fort 無職戦闘員による本メモ、創作、外国語の勉強その他

2020-04-01から1ヶ月間の記事一覧

『未完のファシズム』片山杜秀 その2 ――日本軍の精神主義の起源

5 「持たざる国」の戦争 ドイツ用兵思想の系譜……小モルトケ(普仏戦争で従軍したモルトケの甥)の包囲殲滅戦略と、シュリーフェンの短期決戦主義が、日本陸軍に影響を与えた。 ドイツ帝国軍から学んだ殲滅戦思想は、1928年改訂の『統帥綱領』や続く『戦…

『未完のファシズム』片山杜秀 その1 ――日本軍の精神主義の起源

本書の特徴は、日本軍(主に陸軍)が精神主義に傾倒し暴走した原因を第1次世界大戦によるものと分析した点にある。従来の、日露戦争で驕りが生じ、昭和恐慌期に過激化したという定説に異議を唱える。 近代史、軍事史にそこまで詳しくないわたしのような読者…

戦時下の選挙と徴兵

◆戦時中の民主主義 南北戦争開戦当初は、合衆国(北部)において、連合国(南部)派とみられる政治家等の拘留が行われたものの、戦争を通じて選挙や議会制は継続された。 南北戦争後半の1864年の大統領選においてリンカーンは落選の危機にあった。 北部…

『チリの地震』をまた買った

ハインリヒ・フォン・クライストの本『チリの地震』が読みたくなったが手元になかったので買った。 チリの地震---クライスト短篇集 (KAWADEルネサンス/河出文庫) 作者:H・V・クライスト 発売日: 2011/08/05 メディア: 文庫 あらすじは細かく覚えていないが…

『大本営報道部』平櫛孝 ――大本営発表の内側

大本営報道部に開戦直後の数年間在籍していた軍人による著書。 後半は自身の体験談ではなく資料からの抜粋が多くなる。しかし、大本営報道部とマスコミ、国民とのつながりや要素を知ることはできる。 プロパガンダは平時・戦時に関わらず国家政策の重要部分…

そのうち読みたい南北戦争・独立戦争関連の本

◆南北戦争の主要な将軍たちに関する本 Grant (English Edition) 作者:Chernow, Ron 発売日: 2017/11/02 メディア: Kindle版 William Tecumseh Sherman: In the Service of My Country: A Life (English Edition) 作者:McDonough, James L. 発売日: 2016/06/1…

『Into That Darkness』Gitta Sereny その3 ――普通の市民が絶滅収容所の所長になったとき

サイモン・ヴィーゼンタールは、戦後、ナチ戦犯の逃亡に手を貸した、「オデッサ」のような組織が存在する、と主張したが、著者は懐疑的である。協力的な人びとはいたが、それははっきりとした秘密結社のような形ではなかったとする。 シュタングルらも、あく…

『Into That Darkness』Gitta Sereny その2 ――普通の市民が絶滅収容所の所長になったとき

グロボクニクは、苦痛を訴えるシュタングルに対して、家族を連れてこさせたり、ルブリンで休養をとらせたりした。しかし、シュタングルは任務から解放されなかった。 続いてシュタングルはトレブリンカでの建設作業監督を命じられた。ここでも、トレブリンカ…

『Into That Darkness』Gitta Sereny その1 ――普通の市民が絶滅収容所の所長になったとき

シュロス・ハルトハイム(Schloss Hartheim)安楽死施設の管理者、ソビボル(Sobibor)、トレブリンカ(Treblinka)絶滅収容所の所長を務めたフランツ・シュタングル(Franz Stangl)とのインタビューをまとめた本。 シュタングルは戦後逃亡し隠れていたが、…