うちゅうてきなとりで

The Cosmological Fort 無職戦闘員による本メモ、創作、外国語の勉強その他

2018-09-01から1ヶ月間の記事一覧

『社会変動の中の福祉国家』富永健一

本書の主張…… ・福祉国家の新しい定義は、解体しつつある家族を国家が支える制度、というものである。 ・かつて福祉の中心的な担い手であった家族も地域社会も、それができなくなったため国家が引き受けなければならなくなった。 本書の焦点は、高齢化=介護…

イワンとフリッツ

◆買い物 Catherine Merridale『Ivan's War』(邦訳『イワンの戦争』)は独ソ戦を戦った赤軍兵士たちの実態を、証言や報告資料をもとに明らかにした本であり、非常に面白い。 赤軍兵の死者は推定800万人~1300万人であり、これだけで第二次世界大戦に…

『元禄時代』児玉幸多 その2

6 殉死の禁 家綱の代は、江戸時代には珍しい集団指導体制が敷かれた。保科正之、松平信綱らの死後は、酒井忠清が権勢を誇った。 政治的には安定していたが、火事や災害が絶えなかった。 ・家綱はあまりものをいわず、老中らの言いなりだったため「さようせ…

『元禄時代』児玉幸多 その1

中公「日本の歴史」シリーズの1つ。 江戸成立直後の、野蛮と暴力が残る時代、また江戸の発展や文化について知ることができる。 ◆メモ 綱吉の評価、柳沢吉保、荻原重秀らの評価は学者によって幅があるようだ。 度々火災に見舞われる江戸、人の命の軽さ、綱吉…

『極秘特殊部隊シール・チーム・シックス』ワーズディン

◆メモ 「ビンラディン暗殺!」と表題に書かれているが、冒頭の数ページのみであり、出版の際に急きょ付け足された感が強い。セイモア・ハーシュの報道で八百長と噂になった、疑惑の作戦を解説する。 本の大部分は著者の自叙伝である。SEALでの勤務内容や…

『トルコのもう一つの顔』小島剛一

トルコの少数民族とその言語を調査する日本人の紀行報告。 トルコ共和国は成立以来一貫して少数民族や少数言語を抑圧し、同化政策を進めてきた。 例えばクルド人は「山岳トルコ人」とされ、またクルド語はトルコ語の方言であると定められ、公の場でクルド人…

鉄鋼だより

皮ふはどれも黒い 非常に、それは 長い間の 火の中での仕事を かたどるもの だからだ 砂の中の、白と青の 互いに絡まりあう 経典文様の 慈悲の像に囲まれて いや、正しくは 像たちの上に おおいかぶさるように 施設の熱が高まり わたしたちは、機械を 操作す…

『従軍慰安婦』吉見義明

◆所見 吉見義明は『毒ガス戦と日本軍』の著者でもある。 長年問題となっていた朝日新聞の従軍慰安婦捏造記事は、本書では資料として使われていない。 政府と軍が支えた強制システムの証拠は豊富に残されており、業者の汚れ仕事に見て見ぬ振りをしつつ、慰安…

『The Looming Tower』Lawrence Wright その3

11 暗黒の王子 本書は元FBI職員のジョン・オニールを、合衆国側の主要人物(狂言回し)として設定している。 FBI本部に着任したジョン・オニールは、ラムジ・ユセフ目撃の報を受けて、パキスタンにおいてただちに「rendition(国外での逮捕連行)」…

『The Looming tower』Lawrence Wright その2

5 奇跡 ビンラディンは未熟なムジャヒディン……アラブ・アフガン達を率いて、パキスタン国境の山に秘密基地を作った。それは、「オサマ(ライオン)」の名をとって「ライオンの洞窟(the Lion's den)」と呼ばれた。 かれらはソ連軍に攻撃を加えようとしたが…