うちゅうてきなとりで

The Cosmological Fort 無職戦闘員による本メモ、創作、外国語の勉強その他

2015-11-01から1ヶ月間の記事一覧

『古代文字の解読』高津春繁

現在使われている漢字以外のすべての文字はセム系の1音1文字主義を起源に持つ。アルファベットが普及する過程で古代文字は忘れられていった。 本書はシュメール・アッカド系の楔形文字とミケナイ・ヒッタイトの特殊文字の解読の歴史を伝えるものである。 *…

『共産主義後の世界』スキデルスキー

イギリスのケインズ研究者による「集産主義」の歴史。 集産主義とは「経済的、社会的目標を達成するために国家の権力を意図的、体系的に用いること」を意味する。集産主義の概念は幅広く、社会主義からファシズム、開発独裁、共産主義までをも含む。 集産主…

『パースの城』ブラウリオ・アレナス

夢の世界を題材にしたフィクション。作者はチリ生まれで、シュルレアリスムの作品を制作したという。 チリのある町に住む男ダゴベルトは、子供の時に好きだった女の子が死んだことを新聞記事で知る。ダゴベルトは悲しくなり、長椅子に座ると夢うつつの状態に…

『韓国現代史』文京洙

目的……特に下からの運動及び周縁の動きに注意しつつ韓国現代史を概説するもの。 序章 韓国は日本以上に同質の社会だが、地域主義もまた根強い。韓国には全羅、慶尚、忠清、京畿、江原といった各道があり、中でも全羅道(湖南)は差別を受ける傾向にある。政…

『プラトーノフ作品集』

『土台穴』を書いたロシアの小説家プラトーノフの短篇を集めた本。荒涼とした土地で生きる人びとに注目する。 「粘土砂漠(タクィル)」 ――そしてこれから向こう百年間この場所は無人の地となることだろう。なぜなら、砂漠の民は噂と長期にわたる記憶とで生…

王の、すりばち状の家

あれら、庭の花に唾かける再生の 王様を見よ。 サボテンを折っては むらさき色の歯と舌で呑みこみ 何度も繰り返す 糸をひく、3つの顔の、 いまいましい涎。 大食漢が、もし 手を後ろ手に縛られて、それは 茶色く、さびた銅線によってだが…… もし頭部を射撃…

『戦争請負会社』P・W・シンガー

民間軍事会社について解説する有名な本。戦争の歴史を古代からたどることで、戦争と私企業との長い関係を明らかにする。 メモを見直して気付いたこと……本書に登場する「エグゼクティブ・アウトカムズ社」はダイヤモンド紛争を題材にした映画「ブラッド・ダイ…

『異端審問』ギー・テスタス、ジャン・テスタス

映画『薔薇の名前』(ウンベルト・エーコ原作)において、異端審問の場面が登場したのをきっかけに読んだ本。 訳者まえがきから……「Inquisition 異端審問をおそろしい集団的・組織的思い上がりの歴史として、人間の弱さの歴史として、この事実を受けとめたい…

『ファンタジーの文法―物語創作法入門』ジャンニ・ロダーリ

作者はイタリアの詩人・童話作家であり、『2度生きたランベルト』等の作品がある。 彼は「創造力(イマジネーション)」が大切であると言う。ノヴァーリスの言葉……「論理学があるようにファンタジー学があるならば、創作の方法が見出せるだろう」。 この本…

『守護聖者―人になれなかった神々』植田重雄

キリスト教は一神教といわれるが、民間では聖人信仰が盛んだった。メキシコに行ったときはいたるところにマリアの図像があり感心した。 本書は守護聖者たちの簡単な説明と、各聖者にまつわる逸話、聖者に由来する風習や文化を紹介する。 『ジャン・クリスト…

『戦争論』多木浩二

近代において国家がいかに戦争を作り出してきたかを検討する。戦争についての見方の1つを提供するものである。 著者の専門は芸術・哲学であり、ベンヤミン等の哲学者からの引用が多い。 人道的介入が正しいのかそうでないのか、理に適っているのかそうでな…

『絵画を読む―イコノロジー入門』若桑みどり

図像学のはなし。 図像の単純な意味と、その伝習的知識を総合して出された本質を研究するのが、イコノロジーであるという。 歴史上の絵画を取り上げ、描かれたモチーフが示す意味を解説していく。 西洋絵画は常にキリスト教とギリシア文化の影響下にあり、画…

収穫

ようこそ、という山羊の顔の、 重なった言葉に連れられて やってきた。 まるで重なりあった、火の環どうしが 波長をそろえるように、 言葉は落ちる。 一片の文字と音が 土ぼこりをたてて、それでも 実行者は出てこない。 間者たちのが泥の層にもぐりこんだ。…

『ジョウゼフ・コンラッド書簡選集』

ジョウゼフ・コンラッドはポーランド生まれのイギリス人作家で、『闇の奥』、『ノストローモ』、『ロード・ジム』『西欧人の眼に』等の海洋小説、スパイ小説を製作した。日本では古くから取り上げられ、ほとんどの本は翻訳されている。 コンラッドの小説の印…

『白鯨』ハーマン・メルヴィル

ピークォド号で唯一生き残った乗組員イシュメイルの視点を通して、白鯨との対決と、狂人エイハブに巻き込まれる舟の様子を書く。不気味な存在である白鯨に挑む偏執的な老人の物語である。 読んでからだいぶ経ち、散漫なメモしか残っていないが、エイハブ船長…

『わが読書』ヘンリー・ミラー

ヘンリー・ミラーの書物についての見解、読書遍歴。著者にとっては本を読むことが大きな意味を持っていた。また、当時の現代社会(1920~30年代?)に対して強い批判を行っている。人間は成長するにつれて委縮していく。 少年の選択――軍隊へ入るか、浮…

『日本のインテリジェンス機関』大森義夫

内閣情報調査室長を務めた元警察官僚が、内調の成立の経緯、日本における情報の取組、日本におけるインテリジェンスの概要等について説明する本。 著者のメモからの抜き書きなのか、唐突な文章が多いが、納得する点がありおもしろかった。 インテリジェンス…

『ヒルズ黙示録・最終章』大鹿靖明

『ヒルズ黙示録』の続編で、主にライブドアと村上の逮捕のいきさつについて説明する。 検察は、従来の汚職、ワイロ摘発モデルから、経済犯罪を糾弾する新しいモデルへ転換を試みた。検事たちには経済犯罪について付け焼刃の知識しかなく、どうやって堀江らと…

『土台穴』プラトーノフ

この本は住居群の建設と、コルホーズの建設という2つの場面に分かれる。住居群の建設では、人びとは昆虫のように働かされ、夢の住宅建設のために酷使される。コルホーズでは、かれらは富農を見つけては家から追いたて、筏に乗せてどこかに流してしまう。 コ…

『ヒルズ黙示録』大鹿靖明

ライブドア事件の概要だけでなく、当事者である堀江ら、また、村上世彰、検察官たちの半生がわかり、おもしろかった。事件がおきたときはだいぶニュースになったが、本書を読むとこれまで知らなかった事情も理解できる。 「世論」は、当事者や検察によって簡…

モーテム

鳥の頭をした、銀色の 虹が、中心部をまわっている。 背後では、うすく引き延ばされた パルス信号の音がする。 起伏のないうごき。 月面と、裏庭とを往復する 電子的なやりとりが 粘土人形たちの頭越しに交わされた。 そして、わたしの 時間の束は、 人知れ…

『精神病』笠原嘉

精神病、とくに分裂病(現在の「統合失調症」)について書かれた本。はじめに、精神病の定義について説明する。 心の不調を分類すると、「神経症」、「精神病」、「パーソナリティのゆがみ」の3つになる。 パーソナリティのゆがみは、本人の心の不調によっ…

『ダブリンの市民』ジョイス

――自分の魂は大勢の死者たちの群がるあの領域に近づいている。その気まぐれに揺らめいている存在を意識したが、それを理解することはできない。自分の正体も灰色の得体の知れない世界に消えうせていこうとしている。これらの死者たちがかつて築きあげ、暮ら…

図書案内:フランス文学

フランスの文芸作品は幅が広く、自分もまだ読んでいない作者や本がたくさんある。 個人的に面白かった本: ・『モンテ・クリスト伯』、『レ・ミゼラブル』、『ジャン・クリストフ』等の長編 ・サン=テグジュペリ ・幻想文学(マルセル・ブリヨン、アンリ・…

『極秘捜査』麻生幾

オウム真理教と警察・自衛隊の戦いを題材にした本。 松本サリン事件発生時、オウムはまだ危険な組織として認識されてはいなかった。信者たちのおこす拉致事件等を通じて、徐々に犯罪組織としての実態があきらかになる。 オウムの企画した化学兵器テロは、世…

『アルトー後期集成1』アントナン・アルトー

アントナン・アルトーはフランスの演劇・映画関係者、作家で、「残酷劇」を提唱するなどの業績を残している。この翻訳と『神の裁きと決別するため』しか読んだことはないが、奇妙な文章を書くのでよく記憶に残る。 「タラウマラ」、「アルトー・ル・モモ」、…

『A Pretext for War』James Bamford

著者は『パズル・パレス』、『すべては傍受されている』等、NSA(国家安全保障局)に関する本で有名。 本書の副題は「9.11、イラク、そしてアメリカ情報機関の悪弊」。 冷戦構造から抜け出せず、イスラム過激派ネットワークを捕捉できなかった情報機関(…

『ヘリオガバルスまたは戴冠せるアナーキスト』アントナン・アルトー

特殊皇帝ヘリオガバルスの家系から、かれの生涯までをえがく本。ヘリオガバルスの母たちの異様な生態、当時の祭典、習俗、また、皇帝が即位してから、乱行をはたらき、叛乱によって殺害されるまでを題材にする。 文体は、奇怪な事物や、皇帝のうごきを書いて…

『近代の奈落』宮崎学

戦前から戦後にかけての部落解放運動家の足跡をたどる本。 部落解放運動には、現実的な要求に基づく運動、アナキズムやマルクス主義に基く運動と様々だが、著者は生活者、部落民としての立場を踏まえた運動に共感しているようだ。 被差別部落はかつて皮革産…