うちゅうてきなとりで

The Cosmological Fort 無職戦闘員による本メモ、創作、外国語の勉強その他

2016-10-01から1ヶ月間の記事一覧

『憲兵物語』森本賢吉 その1

徴集兵出身の憲兵による話。 著者は成績優秀によって憲兵となり朝鮮、中国を中心に活動した。 憲兵の仕事だけでなく、当時の中国戦線の様子も詳しく書かれている。特に、占領地域や、後方地域でのスパイやゲリラとの関わりについて参考になる。 *** かれは広…

『靖国参拝の何が問題か』内田雅敏

なぜ靖国神社参拝に対して諸外国が内政干渉を行うのかを、神社の起源等から明らかにする本。 自民党、特に安倍晋三への非難の調子が強烈であるため、同じ意見の読者が安心することはできても、違う考えの読者を説得させることはできないのではないか。 わた…

『スターリンの対日情報工作』三宅正樹

クリヴィツキー、ゾルゲ、日本人スパイ「エコノミスト」等の事例を参考に、昭和前半期における日本政府の内部情報のほぼすべてが、スターリンに伝達されていた事実を明らかにする本。 1 クリヴィツキー クリヴィツキーはスターリンの工作員だったが亡命し、…

契約と輪転

土の奥深くで、数えきれない 死人が押し込まれ 麦粒の山のように、塵と埃を食べながら 再び出土するのを待った。 作業員たちは、土にスコップを差し込んで 埋められた電話線と、薬莢を摘出する。 黒い手袋のかれら、すべての構成員の顔が、 泥を塗られて光る…

ジョージア(グルジア)映画

ちょうど東京でジョージア映画をまとめて上映しているということなので、近々観にいこうと思った。 映画『みかんの丘』『とうもろこしの島』予告編 どちらもジョージア独立時のアブハジア紛争を舞台にした映画のようだ。

『日本軍と日本兵』一ノ瀬俊也

合衆国陸軍省情報部の出版していた部内刊行物「Intelligence Bulletin」(IB)を参考に、日本軍と日本兵の実像を考える。 精神主義、白兵戦一辺倒だったという定説は正確でないことを本書は示す。 狭いレベルにおいては、日本軍は合理性を追求していた。し…

「HUNGER/ハンガー 静かなる抵抗」

制作:2008年 監督:スティーヴ・マックイーン 3部構成……囚人と刑務官の風景、神父との対話、ハンガーストライキ 収監されたIRA活動家が、政治犯としての地位を求めて抵抗を行う。刑務官や警察たちは、活動家らに対し無慈悲な暴力行為、人権侵害を加…

新しい鐘

金属のゆらぎの瞬間、 枝と幹が、ピシピシと鳴り 細かい雪の粒子がこぼれてしまう。 そのとき朝日が、象牙色の 雲を払いのけ、 飲みこみたがる動物が 姿をあらわす。 音のパルスにあわせて 四足の、生き物ではない大きな かたちが、鼻を鳴らした。 それは吹…

"Obama's Wars"を読んで

Bob Woodward『Obama's Wars』のなかで…… オバマ大統領は、就任直後、事態が改善していたイラクに対して、アフガンでの戦争が失敗しつつあることを認識し、米軍および多国籍軍(ISAF)の増派を決定した。 任期中、大統領は数回の増派、派兵延長を決断した。 …

『思考する言語』スティーブン・ピンカー その2

4 わたしたちの認識の基礎をなす空間、時間、因果性について。 わたしたちは、空間、時間、因果性によって世界を認識する。それは世界そのものとは一致しないが、わたしたちはこの心を通じて世界を認識する。 著者は、物質、空間、時間、因果というカントの…

『思考する言語』スティーブン・ピンカー その1

本書は、言語における意味について考える。 人間が自分の思考や感覚をどのように言葉にするかを検討し、人間の性質について探ろうというものである。 特に、具体的な言語の使用例や、日常生活に即して言語における意味について考えようとする方法に特徴があ…

グレートゲーム……

最近読んでいるPeter Hopkirk(ピーター・ホップカーク) "The Great Game"は面白い。 The Great Game: On Secret Service in High Asia (Not A Series) (English Edition) 作者: Peter Hopkirk 出版社/メーカー: John Murray 発売日: 2006/03/27 メディア: …

『立憲主義について』佐藤幸治

立憲主義の成立過程と現状を明らかにする本。 特に重要となる現代立憲主義は次のようなものをいう。 ――主権者である人民が憲法制定権力者として、人権の保障と権力分立ないし抑制・均衡の統治構造を定める憲法典を制定して政府を創設し、立法権を含む政治権…

魚網

土から枝へ 鳥の巣をめがけて 雪が噴きあがる。 組織の主は 火の館のなかに 結節、結節は、 岸辺の、氷と根っこの 狭間に待機した。 わたしは 雪と氷の赤い残片を ぬぐって、肉を噛む。

「偽りなき者」

制作:2012年 監督:トマス・ヴィンターベア 「007 カジノ・ロワイヤル」のマッツ・ミケルセンが主演のデンマーク映画。 主人公が子供の嘘で冤罪を被り、村人から攻撃される映画。 善意や正義が暴走した場合、作中のような事態になることを確認した。…

符号の星

星の粒から 糸くずがしたたり落ちて 大理石のふたをあけた 見張りの犬と、帽子の男たちが 辛抱強く 光を飲んだ かれらは一族になった。 自分たちの、そのとき 光源となった、人体的、 食道・小腸ロープを手のひらに 巻き付けて、裏庭をはしゃぎまわる 生徒た…

『ロシア宇宙開発史』冨田信之 その2

2 ロケット開発 ソ連はペーネミュンデとミッテルヴェルク、その他のロケット関連施設を捜索し、A4ロケットと技術資料、設計図等を持ち帰った。また、スターリンの政令によりロケット開発体制が作られ、ドイツの技術者もソ連に移送された。 コロリョフを開…

『ロシア宇宙開発史』冨田信之 その1

気球の発明から有人宇宙船ヴォストーク(及びヴォスホート)までの、ロシアにおける宇宙開発の歴史を書く。 1 気球からロケットへ 気球は18世紀後半にフランスで発明された。これを受けて、ロシア科学アカデミーも有人気球の研究を推進し、限界高度や、上…

『昭和天皇の終戦史』吉田裕 その2

5 『独白録』の趣旨について…… ・天皇は立憲君主であり、決定権を行使しない。よって、対米開戦の責任はない。 ・対米開戦の責任は軍部、松岡洋右、近衛文麿、大島浩らにある。 ・東条英機は軍をよく統制できるから、天皇はかれを支持した。東条はがんばっ…