うちゅうてきなとりで

The Cosmological Fort 無職戦闘員による本メモ、創作、外国語の勉強その他

2017-01-01から1年間の記事一覧

『コーカサス 国際関係の十字路』廣瀬陽子

国際関係を中心にコーカサスの概要を説明する本。 コーカサスは西を黒海・トルコ、東をカスピ海、南をイランに囲まれた地域を指す。 南コーカサスはアゼルバイジャン、グルジア、アルメニアからなり、北コーカサスはロシア連邦の共和国……チェチェン、イング…

『オウムと私』林郁夫

著者はオウム信者であり、地下鉄サリン事件その他の犯罪に関与したため無期懲役の判決を受けた。 本書では、生い立ちから、医者として働く生活、オウムへの入信、犯罪への加担までが書かれる。 全編にわたって、オウムの細かい教義や、ワーク(修行)の説明…

歩兵はパレードする

兵隊によるパレードの準備には3か月以上かかるため、この間、たくさんの作業員が全国から集められ、ひたすら行進や会場運営の練習をすることになった。また、大量の燃料、食糧費、移動費を消費した。 わたしはパレードの意義が見いだせず、同じ人数を集めれ…

『ネイティブ・アメリカン』鎌田遵 その2

4 ルーズベルト政権下、インディアン局ジョン・コリア―による「再組織法」→部族の自治権確立へ トゥルーマン政権下の「終結法」→自立を名目とした居留地切り捨て、アメリカ社会への同化政策 先住民のうち居留地や信託地に住むのは4割で、5割弱は都市部に…

『ネイティブ・アメリカン』鎌田遵 その1

先住民の現状について解説する本。 合衆国には約247万人の先住民が住んでいるが、かれらの経済的地位は一般に黒人よりも低いという。 1 だれが先住民であるかという定義を定めるのは難しい。 先住民としてのアイデンティティは、血筋、部族員であること…

『Putin's Russia』Anna Politkovskaya その2

官僚組織の一員である判事たちは、ソ連崩壊によって服従する対象を失った。 かれらが次に選んだ主人はマフィアや新興財閥だった。 買収された判事が、給料20年分に相当するアメリカ車を手に入れる一方、賄賂や口利きを拒否した判事は免職され、または悪党…

『Putin's Russia』Anna Politkovskaya その1

著者は反プーチンで知られた『ノヴァヤ・ガジェタ』紙の記者で、2006年に路上で射殺された。 国民から自由を奪い専制を強めるプーチンを批判する。 本書では、国家の末端で残酷な取り扱いを受ける人びとに注目する。 プーチン自身の行動ではなく、かれの…

日語には、アマゾンのとき

◆文字の整列 日本語でつくられた文列のなかでも、とくに、興味をひかれるものはなにかを考えなければならない。 ふだん読んでいる本のほとんどは歴史に係るもので、最近はフィクションを読むことが少なくなった。本を読み始めた当初は、国内・国外文学の古典…

粘土人形制作 ウンゲルン1号 その1

粘土人形1号はウンゲルン=シュテルンベルクを作ろうとしましたが、やはり最初だけありうまくいかない点がたくさんありました。 この人物は当初ロシア帝国軍に所属していましたが(確か准将か)、革命後に白衛軍に参加しました。指揮系統上は、コルチャーク…

『アデナウアー』板橋拓己 その2

3 アデナウアーは外交を最優先させた。その目標は、ドイツの主権確立と、西側諸国の統合である。 アメリカを欧州に引き留めるため、再軍備を決定した。 かれはソ連に対しては融和を拒否した。スターリン・ノート(ドイツを中立国として統一させるスターリン…

『アデナウアー』板橋拓己 その1

アデナウアーは現在でもドイツの復興、繁栄、建国イメージに結び付けられているが、その実像は複雑である。 また、日本ではヒトラーに比べて無名である。 本書は、自由民主主義体制の定着と西側路線への決断を軸にして、西欧化していくドイツの歴史を、アデ…

たとひわれ死のかげの谷を農王系 18 うばわれた敵

18 うばわれた敵 たとひわれ死のかげの谷を農王系 - 18 うばわれた敵 たとひわれ死のかげの谷を農王系 たとひわれ死のかげの谷を農王系 あらすじ…… 石英の星の下に生まれたわたし、ナーナーが農王系に拉致され、教育戦を指揮し、敵を亡ぼす物語 たとひわ…

『Blowing up Russia』Alexander Litvinenko その2

6 ブイナクスク、モスクワ、ヴォルゴドンスクでの爆弾テロについて。様々な状況証拠や、報道から、著者はFSBが自作自演によって引き起こしたと考える。 ・事前に計画や動きが漏れており、また直後に亡命したFSB士官からの暴露があった。 ・使用された…

『Blowing up Russia』Alexander Litvinenko その1

ソ連崩壊以降、KGB(ソ連国家保安委員会)がいかに権力を掌握してきたかを論じる。 本書はロシアでは発禁とのことである。 著者のリトビネンコは元FSB職員であり、暗殺指令を拒否しイギリスに亡命した。2006年に同僚に放射性物質ポロニウム210…

『白熱講義! 日本国憲法改正』小林節

憲法の役割を改めて説明し、特に9条、二院制、人権条項について部分的な改正の必要性を主張する本。 憲法に対する評価や改正方針は論者によって様々である。著者は憲法調査会で集団的自衛権解釈を否定した学者の一人であり、テレビ等への出演が多い。 近年…

『ぼくはアメリカを学んだ』鎌田遵

岩波新書『ネイティブ・アメリカン』の著者が、自身のアメリカ生活について書いた本。 ◆感想 著者は、留学資金は持っていたかもしれないが、一般的な学歴からは外れた人物である。放浪と異国生活を通して、生きる上で何が重要かを考えた。それは非常に参考に…

電線

夕焼けには 赤い手が 扉をひらく音がする 雲をつくような 手がぬっとあらわれて 神父の目をふさぐ 夏の空に 切り込みをいれるのは だれだ 森から森へ 鉄による、毛糸の 巻き取りの作業 送信は続く。 地面が冷えて 羽虫たちが 兵舎に帰っていくだろう。

粘土人形 道具と計画

粘土人形を作りはじめたので、今後はこれもブログに投稿していきます。 完全な素人のため、いまは練習のために原始ハニワを生産中です。 次回以降、人形の制作過程を投稿します。 ◆粘土の夢 フェーズ1 人形の制作: 単純人形、パペット、球体関節 フェーズ…

『The Great Game』Peter Hopkirk その3

3 終盤 クリミア戦争の結果、ロシアでは反英論(Anglophobe)が高まっていた。 1858年、アレクサンドル2世は、若い軍人イグナティエフ(Ignatiev)をヒヴァ、ブハラに派遣した。かれはその後北京に向かい、アロー戦争中の清国と英国との仲介になり、1…

『The Great Game』Peter Hopkirk その2

2 中盤 中央アジア、特にアフガニスタンを傘下に入れようと、英露の対立が強まり、紛争が各地で勃発した。 1831年頃、ベンガルインド軍のアーサー・コノリー(Arthur Conolly)は、モスクワからインドにかけて探検し、コーカサス地方~カイバル峠間、カ…

『The Great Game』Peter Hopkirk その1

グレートゲームThe Great Gameとは、中央アジアを南下するロシア帝国と、インドを拠点とする大英帝国との紛争を示す言葉である。 なお、この言葉の生みの親とされるイギリス東インド会社のコノリー(Conolly)大佐は、1842年、ブハラ・ハン国(現在のウ…

『戦艦武蔵』吉村昭

戦艦武蔵の建造から撃沈までを題材にした記録文学。取材を基につくられてはいるがあくまで文芸作品のようだ。 特に建造過程が詳細に説明されており、秘密保全や、軍と会社のやり取り等、現代にも受け継がれている要素がありおもしろい。 ・秘密保全……武蔵の…

楽しい粘土、ピエロ

◆戦争論 他国の無職戦闘員との話し合いのために、まじめにクラウゼヴィッツを読んでおくことが必要と思い、アメリカでほぼ定訳となっているらしいピーター・パレ版を買った。 情けないことに『戦争論』は解説本や軍事学の教科書でしか読んだことがない。これ…

『サウジアラビア』保坂修司

矛盾を多く抱えた国家について解説する。 アメリカの同盟国であると同時に、9.11実行者の大多数を輩出し、また冷戦期にビンラディンやアフガン・アラブを支援した国でもある。 日本人の視点からは非常に不思議な社会であり、抱える問題もわたしたちとは…

ねじり技師たち

技師1が扉をあけたとき、 そのとき 彗星の糸とともに 石ころの音がなった。 技師2は 「この音は、この世の終わりがなっている音」 「生きているものの国が、崩れ落ちる音」 と言った。 だれかがそれを聞いた。

『Hitler』Joachim C. Fest その3

6 準備期間 大統領の死に伴いヒトラーは総統及び首相の兼任となった。 国民投票では、社会民主党支持者とカトリック(中央党)がまだヒトラーを拒絶していた。 ・恫喝外交と宥和政策……1935年の英独海軍協定、ヴェルサイユ条約破棄と徴兵制復活、ベルリ…

『Hitler』Joachim C. Fest その2

3 長い待機 ランツベルク刑務所に収監された期間を、ヒトラーは「国費による大学」と形容した。かれは『わが闘争』を執筆し、ヘスらの編集を経た後出版された。この本にはゴビノーの人種理論を曲解したドイツ民族主義、反セム主義が強く反映されている。 1…

『Hitler』Joachim C. Fest その1

ヒトラーの伝記。 フェストは「ヒトラー最期の12日間」の原作者でもあり、本書もヒトラー研究の古典とのこと。 歴史観について……もしヒトラーがポーランド侵攻前に死んでいれば、かれはナポレオンやアレキサンダーに連なる古代的な偉人として称えられ、反…

『在日朝鮮人 歴史と現在』水野直樹、文京洙

19世紀末から現代までの、在日朝鮮人の歴史を解説する本。 在日朝鮮人は特殊な歴史的経緯をもって日本に定住しており、そうした事情を理解することができる。 1 朝鮮人が日本にやってくるのは、1899年頃からである。九州の炭鉱会社や、朝鮮で軍事施設…

『公安警察スパイ養成所』島袋修

昭和49年から59年にかけての、かなり古い時代の公安警察に関する暴露本。 石垣島出身の沖縄県人であるということで、米軍、日本政府と県民の間に軋轢が存在する点が特殊である。 ◆メモ 現在でもなお共産党対策に莫大な予算と人員が使われているのは、果…