うちゅうてきなとりで

The Cosmological Fort 無職戦闘員による本メモ、創作、外国語の勉強その他

『ネイティブ・アメリカン』鎌田遵 その1

 先住民の現状について解説する本。

 合衆国には約247万人の先住民が住んでいるが、かれらの経済的地位は一般に黒人よりも低いという。

 

 1

 だれが先住民であるかという定義を定めるのは難しい。

 先住民としてのアイデンティティは、血筋、部族員であることの証明、文化の継承からなる。

 部族員の証明は、連邦政府が承認する部族から認定を受ける必要がある。なりすましによって支援や福祉、権利を受けるという動きを阻止するために、血筋で厳格に認定する部族が多い。

 しかし、人種間の結婚や他部族同市の結婚が進み、子供が先住民認定を受けられなくなるケースが増えている。

 部族民たち自身は、文化的・社会的要素によって部族員を定義することも多い。

 厳格な人種・血統制を取り入れたのは、かつて同化政策を推進してきた陸軍省インディアン局である。インディアン局は、先住民文化を根絶させることを目的として運営されていた。

 部族員認定の要件は、各部族政府に委ねられているが、その細部も複雑である。

 南東部に住むチェロキー族はかつて白人と同様に他部族や黒人の奴隷を所有していた。20世紀に入ってから、部族政府は黒人の部族員認定を取り消した。

 プエブロ族は、他部族と結婚した部族女性を部族員と認めない。ある女性が訴訟を起こしたが、連邦裁判所は部族の自治権を認め訴えを棄却した。

 

 2

 居留地連邦政府直轄であり、連邦憲法の下での自治を認められる。税も連邦政府に直接収める。重大事件の捜査等では、連邦政府に権限がある。また、ケースによっては居留地に州の行政が介入することもある。

 連邦政府の「部族」定義は恣意的である。

 

 ――先住民を居留地に住まわせることは、移動を禁止する同化政策の一環であり、居留地の設立は部族の文化や生活習慣を無視し、強制的にアメリカ社会の「辺境」に定住させることを目標にしていた。

 

 部族のカテゴリ……「連邦政府承認部族」、「州政府承認部族」、「終結部族」、「未承認部族」

 部族承認は、かつて白人側の資料と同化政策に基づき行われたため、部族民たちの定義とは乖離していることが多い。

 未承認部族が新たに部族として認められるのは困難である。かれらは、すでに亡びた部族として扱われる。

 

 3

 先住民への植民地化の歴史について……疫病、強制移住、侵略、戦争と虐殺。

 ソローの思想、ジャクソン大統領(ジャクソニアン・デモクラシー)と先住民との関係。

 

 ――西部における先住民の征服と、西部へのロマン主義的な崇敬は、まったく異なる方向性のように見えるのだが、アメリカ型民主主義の実践の場とみなされている点では一致している。先住民族を西部の一部(人間としてではなく)と考え、民主主義の名の下にその支配を正当化する思想は、その後もアメリカ社会に深い根を張ることになる。

 

 ジャクソン大統領下の1830年強制移住は「涙の旅路」と呼ばれる。

 ヨセミテ渓谷やグランド・キャニオンには先住民が住んでいたが、政府はこうした土地を国立公園に指定し居住を禁じた。

 「良いインディアンは死んだインディアンだけだ」とは、先住民討伐で有名なフィリップ・シェリダン将軍の言葉である。

 反権力・抵抗の象徴として祭り上げられるアパッチ族ジェロニモは、降伏後、万博で見世物として出演し、自ら白人社会に適応しようと努めた。

 同じ会場ではプエブロ族や、日本のアイヌたちも見世物として出演していた。

 1887年のドーズ法……居留地を細分化し、先住民と非先住民の個人に割り当て、部族所有の土地を減らす法。

 同化政策の一環である寄宿学校での虐待、暴力について。

 

 [つづく] 

ネイティブ・アメリカン―先住民社会の現在 (岩波新書)

ネイティブ・アメリカン―先住民社会の現在 (岩波新書)