うちゅうてきなとりで

The Cosmological Fort 無職戦闘員による本メモ、創作、外国語の勉強その他

◆その他の本

『裁判官はなぜ誤るのか』秋山賢三 ――忙しくて公正や人権など考えているヒマがなさそう

◆所感 公正に判決を下すことを期待されている裁判官の実情について。 裁判所は各裁判官を厳しく統制しており、また裁判官は業務に追われ狭い職場の中で生きている。統制によりかれらは小役人となり、検察の言うことをそのまま流して事件を手早く処理すること…

『天皇家の財布』森暢平 ――三種の神器は非課税かつ売買不可の私的財産

◆所見 天皇家・宮家への国家予算の使われ方を細かく解説した本である。 用途のなかには非効率的なもの、疑問の湧くものも多くあり、今後、時代に適応するよう変えていく必要を実感させる。法律上、天皇家を運営しているのは国民なので、そうした議論は当然行…

『いじめの構造』内藤朝雄 ――閉鎖空間からの脱出

◆所見 いじめの性質やいじめを生む構造を提示するだけでなく、そうした閉鎖集団が社会の基礎部分に蔓延する状況を、中間集団全体主義社会として提示している。 学校や職場で生じる醜い状況をほぼ正確に分析しており、解決策も説得力のあるものである。 この…

『量子コンピュータとは何か』ジョージ・ジョンソン ――量子コンピュータに関する基礎知識

◆メモ 量子コンピュータの仕組みを、専門外の人間にもわかるように解説した本。原理から、その応用、発展が期待できる分野までを紹介する。 ハードウェアの実現には、本書の時点ではまだ時間がかかるとされている。しかし2010年代には、NSAやIBM、中国などが…

『心でっかちな日本人』山岸俊男 ――なんでも「心」や「文化」のせいにしない

◆所見 社会心理学の観点から、日本文化を分析する本。 わたしたちは行為の原因をただ「心」に見出すことで、その背後にある因果関係を見落としがちである。一見、行為が心や人格から生じているようにみえて、そこには社会的な環境や他人の行動が深く影響を及…

『刑法入門』山口厚 その2 ――書名のとおりの本

3 犯罪はどんなときに成立するのか 犯罪の成立要件は基本的には行為、結果、因果関係、意志だが、未遂や不注意など犯罪によって必要な要件は変わる。 ・行為客体(やられる対象)と保護法益(侵害された利益)は必ずしも同一ではない。公務執行妨害は、客体…

『刑法入門』山口厚 その1 ――書名のとおりの本

◆メモ 刑法と刑罰の仕組、その基盤となっている考え方・刑法学についてまとめられている。 ただし、日本の司法運用にまつわる問題は特に取り上げていない。このため、本書だけを見ると非常に理路整然としたきれいなシステムであるかのような印象を受ける。 …

『法哲学』平野仁彦 編 その2 ――法とは何かを考える入門

4 法と正義の基本問題 法が実現すべき正義とは何か。どのような法秩序を形成していくのが望ましいか。 (1)公共的利益 公共の利益を増進するにあたり、功利主義とその批判を並べ、問題を検討する。 功利主義の問題点……個人の人格がなおざりにされる、少数…

『法哲学』平野仁彦 編 その1 ――法とは何かを考える入門

法とは何か、法はどのようなものであるべきか、等を研究するのが法哲学である。 本書は非常に広い範囲をカバーする教科書である。 *** 1 現代の法と正義 現代社会はグローバル化が進んでおり、法もまたその影響を受ける。 法哲学とは、法の基本的なあり方に…

『禅』鈴木大拙 ――禅の普及に努めた人物による説明

◆メモ 英語版Wikipediaには、鈴木大拙がナチズムとユダヤ人追放政策にある程度の共感を表明していた事実や論争が取り上げられているが、日本語版では丸々省かれている。 キリスト教聖職者とドイツ安楽死作戦に関する本("By Trust Betrayed")でも、多くのド…

『自省録』マルクス・アウレーリウス その2 ――生きているうちに、許されている間に、善き人たれ

5 重視するべきなのは次の精神である……「誠実、謹厳、忍苦、享楽的でないこと、運命にたいして呟かぬこと、寡欲、親切、自由、単純、真面目、高邁な精神」 恩を売るようなことは慎むこと。 すべてを与えられたものとして受け入れること。 人間にとって自然…

『自省録』マルクス・アウレーリウス その1 ――生きているうちに、許されている間に、善き人たれ

2世紀のローマ皇帝によるメモ。マルクス・アウレーリウスの治下は戦争が絶えなかった。 エピクテトスのストア哲学から強い影響を受けている。セネカ、エピクテトス、マルクス・アウレーリウスらの後期ストア派は、宗教的色彩を帯びており、「哲学は初期の人…

『不実な美女か貞淑な醜女か』米原万里 ――翻訳、通訳、外国語学習について

有名な翻訳者、著述家による本。 通訳としての経験を交えて、異なる言語間、文化間のコミュニケーションについて考える。 母国語について深く知ることが通訳のみならず外国語学習にとって重要だという。英語や外国語を使えるというのは、母国語を使いこなせ…

『社会契約論』ルソー その2 ――社会契約説の古典を読む

*** 3 政治の法、すなわち政府の形態について ・自由の実現のために力と意志、すなわち「立法権」と「執行権」が不可欠である。立法権は主権者としての人民に属するが、執行権は、主権者の代理・公僕たる政府が担う。 ・執行を担うものが最高行政であり、「…

『社会契約論』ルソー その1 ――社会契約説の古典を読む

副題は「政治的権利の諸原理」。 1762年に出版され、フランス王国、カトリック教会から激しい批判を受けた。 *** ◆所見 人民は自由と平等を確保するために「社会契約」に基づき国家を成立させる。このため国家・政府・統治者の主人は人民でなければなら…

『法における常識』ヴィノグラドフ その2 ――法とは何かを概説する20世紀の古典

*** 5 立法 法の源(Sources):立法、裁判官のつくる法(慣習法、判決、衡平(Equity)) または自然法を源とする学者もいる。 法律の文理解釈は、裁判所に永久に課せられた仕事である。 裁判所は専門的な事柄に対しても技術的解釈を行わなければならない…

『法における常識』ヴィノグラドフ その1 ――法とは何かを概説する20世紀の古典

オックスフォード大教授、1919年初版の、法律入門書。 著者のヴィノグラドフはロシア人だが、帝政ロシアにおいて当局と衝突を繰り返したため、主にイギリスで活動した(最終的に帰化した)。 法律とは何かが簡潔にまとめられている。 調べたところAmazon…

『寺院消滅』鵜飼秀徳 ――衰退していく寺院、世俗化された坊主

全国には7万7000の寺院があり、うち無住寺院は2万、不活動寺院は2000以上である。寺院消滅の問題は、地方の消滅(高齢化、過疎化、人口流出)とつながっている。 本書は、社会構造の変化と寺院との関係に焦点をあてる。 1 ・長崎県五島列島宇久島…

『私は負けない』村木厚子ほか ――検察の犯罪:冤罪でっちあげと証拠改ざん

◆概要 障害者団体用郵便料金制度の悪用に絡む、大阪地検による冤罪事件とその後の証拠改ざん事件に関して、当事者となった厚労省官僚が回想・説明する本。 村木氏は大阪地検の見立てによって首謀者に仕立て上げられ、虚偽の自白を迫られた。 本書は、検察に…

『Cybersecurity and Cyberwar』P.W.Singer, Allan Friedman その2 ――サイバー戦争に関する最新ガイド

◆サイバー戦争の実際 ・ネットワーク中心の戦争Network Centric War……戦争におけるネットワークとコンピュータの比重の増大 ・サイバー攻撃によって、物理的な破壊と死をもたらすのは簡単ではない。しかし、いずれそういう事態は起こるだろう。 ◆米軍とサイ…

『Cybersecurity and Cyberwar』P.W.Singer, Allan Friedman その1 ――サイバー戦争に関する最新ガイド

サイバーセキュリティとサイバー戦争について、初心者や専門外の人間にも理解できるよう書かれた本。 著者は軍事関係の話題を扱う解説書で有名である(『戦争請負会社』や、無人機、少年兵等)。 *** サイバーセキュリティの重要性は高まりつつあるが、専門…

『世界の名著 モンテスキュー』その3 ――民主主義体制の起源

11 国家構造との関係において政治的自由を構成する法 国家における政治的自由とは、法の許すすべてをなしえる権利である。 専制には自由は存在せず、穏和政体にのみ存在する。 国家には立法権、万民法執行権、私法執行権の三権が存在する。これを言い換え…

『世界の名著 モンテスキュー』その2 ――民主主義体制の起源

「法の精神」 1748年に出版され、政治における権力分立の重要性を唱え、後の政治思想に影響を与えた本。 1 法について 法とは事物の本性に由来する必然的関係である。物理的な法と同じく、正義の法や衡平の法も、人間以前に存在する。 例えば、社会の掟…

『世界の名著 モンテスキュー』 その1 ――民主主義体制の起源

◆メモと感想 政治や社会に関するモンテスキューの意見は、現代にも受け継がれている。一方、いまの基準では偏見や間違いととらえられる文言もある。 ・モンテスキューは政治体制を専制、君主制、共和制に分類する。共和制は、さらに貴族制と民主制に細分化さ…

『テイクダウン』下村努、ジョン・マーコフ

サンディエゴのスーパーコンピュータ・センターで働くコンピュータ科学者の下村(Tsutomu Shimomura)は、自宅のPCを悪名高いハッカー、ケヴィン・ミトニックに乗っ取られたことに気が付く。 下村は弟子のアンドリューや、コンピュータ業界の友人たちとと…

『日本の社会保障』広井良典

社会保障を考える上で、年金、医療費といった個別に分けて論じるのではなく、そもそも国家が負担すべき国民のリスクとは何かを検討し、その後、あるべき社会保障の姿を検討する。 制度自体が複雑でわかりにくいため、この本も自分のような素人には読みにくい…

『インテリジェンスの基礎理論』小林良樹 その2

インフォメーションの分析に関して、以下のような問題が生じる。 ・インテリジェンスの政治化(政治に従属し、または政治を操作するために、収集分析が曲げられること) ・ミラー・イメージング(自分がこうだから相手もこうだろう) ・クライアンディズム(…

『インテリジェンスの基礎理論』小林良樹 その1

安全保障政策に直結するインテリジェンスについて体系的に学ぶことを目的とする本。 書名のとおり、基礎事項が網羅されている。個別の事例や、歴史的な変遷については最低限の記述である。 ◆所見 インテリジェンスのプロセス、すなわち情報収集と分析は、国…

『社会変動の中の福祉国家』富永健一

本書の主張…… ・福祉国家の新しい定義は、解体しつつある家族を国家が支える制度、というものである。 ・かつて福祉の中心的な担い手であった家族も地域社会も、それができなくなったため国家が引き受けなければならなくなった。 本書の焦点は、高齢化=介護…

『パンセ』パスカル

パスカルの残した護教論・エッセイで、広く知られた格言(クレオパトラの鼻云々)が含まれる。 難しい用語が使われているわけではないが、一読して意味がわかりにくい箇所が多い。 わたしが本当に理解できたのはごく一部にすぎない。 特にキリスト教の教義に…