うちゅうてきなとりで

The Cosmological Fort 無職戦闘員による本メモ、創作、外国語の勉強その他

2018-01-01から1年間の記事一覧

『テイクダウン』下村努、ジョン・マーコフ

サンディエゴのスーパーコンピュータ・センターで働くコンピュータ科学者の下村(Tsutomu Shimomura)は、自宅のPCを悪名高いハッカー、ケヴィン・ミトニックに乗っ取られたことに気が付く。 下村は弟子のアンドリューや、コンピュータ業界の友人たちとと…

『韓流スターと兵役』康熙奉

在日韓国人の著者が、韓流スターのファンに向けて、兵役制度とその実際についてわかりやすく説明する。 わたしは映画で観たウォンビンやイ・ジュンギ、有名なペ・ヨンジュンくらいしか知らないが、芸能界と兵役との関わりは、日本にはない独特の要素である。…

残酷物語その他

◆本 引き続きアーレントの『全体主義の起源』を読んでおり、いまは第2部の帝国主義が終わりかけている部分です。 日本語で最近読んでいるのは『日本残酷物語3』、『グァテマラ虐殺の記憶』、『流転の王妃の昭和史』などです。 ・日本残酷物語 日本残酷物語…

『The Indian Mutiny』Saul David その4

15 反動 東インド会社軍マドラス軍のニール大佐(Col. James Neill)は、ベナレス(Benares)とアラハバード(Allahabad)を奪回し、悪名高い市民虐殺を行った。 インド総督カニングは、カーンプル虐殺の報を受けて、イギリス人の敵意がインド人そのものに…

『The Indian Mutiny』Saul David その3

10 「嵐は去った」 アーグラー(Agra)は北西地方政府の首都であり、ヒマラヤのふもとから中央インドのジャバルプル(Jabalpur)までを担任し、デリー、ベナレス(Benares)、アラハバード(Allahabad)、ミルザブール(Mirzapur)、カーンプル(Cawnpore…

『The Indian Mutiny』Saul David その2

4 Go to Hell, Don't bother me! 東インド会社軍の問題は、インド人傭兵だけではなかった。ヨーロッパ人将校も、様々な問題を抱えていた。 ・一般的な会社の将校は、低い階級出身で、学はなく、純粋に金銭的動機によって就職した者たちである。 イギリスの…

『The Indian Mutiny』Saul David その1

1857年、デリー(Dheli)近郊のメーラト(Meerut)から始まったインド反乱についての歴史。 東インド会社によるインド侵略の経緯から始まり、反乱の推移を細かく記述する。 反乱の鎮圧を担当した東インド会社軍の将校たちは、イギリス軍将校とも異なる、…

『オデッサ・ファイル』フォーサイス

報道記者のミラーは、偶然、SS隊員の互助組織オデッサの存在を知る。かれは、リガの収容所でドイツ系ユダヤ人を虐殺したエドゥアルド・ロシュマンを追うが、そこにはもう1つ強い動機があった。 元SS隊員たちは、イスラエルを消滅させるために、エジプト…

ハテナの笛

はっきりと、輪郭をととのえる ふちどりを、紺と藍の 二重のひもで 神明にちかって 形をころすことが、いま その年だ わたしは、監視を続けたい 天の一角と、大顔の 面をかぶった大きな仏僧たちが 分列行進しながら 笛を吹いている、その あの人たちを わた…

『シルクロード』スヴェン・ヘディン

『馬仲英の逃亡』に続くシルクロード3部作の2作目だが、時系列としては前作よりも前から始まる。 1933年秋、北京のスウェーデン・ハウスに滞在していたヘディンは、国民政府の重役と会談し、民国発展のために新疆への自動車道路開発が有意義なのではな…

『ドキュメント アメリカの金権政治』軽部謙介

アメリカ民主主義の実態について批判的に検討する。 テーマはロビイスト、政治献金、利益誘導、そうした金権政治に抵抗する市民の活動である。 自由民主主義の価値観と制度に立脚していても、権力や金に由来する、不正や金権政治を防止するのは非常に困難で…

『海上護衛戦』大井篤

◆著者の基本的立場 ――なにしろあの太平洋戦争という民族的大悲劇は、決して天災ではなく、まったくの人災だった。しかもこの人災は、戦略計画上の誤算によって引き起こされ、また長期化、深刻化されたとみるべき点が大いにあったと私は思う。 自身の体験を基…

『Obama's Wars』Bob Woodward その2

ウッドワードは、マクリスタル司令官の極秘文書コピーを入手し、新聞で報じた。 報道の前には、慣習により政府に事前通告と調整を行うが、これは報道の自由を重視する米国ならではの手続きである。 ・極秘文書を入手した民間人は、それをどう扱おうと処分さ…

『Obama's Wars』Bob Woodward その1

「オバマの戦争」であるアフガン戦争に関する、大統領とその側近、NSC、軍の意思決定をたどる本。 袋小路に陥っていくアフガンの状況と、オバマと軍との対立が明らかにされる。 ブッシュの戦争であるイラク戦争が一段落し、オバマ陣営はアフガンの状況悪…

敵の声・敵の部屋

今読んでいる本はハンナ・アーレントの『The Origins of Totalitarianism』(全体主義の起源)で、近代に生まれた反ユダヤ主義が、帝国主義の時代を経て、最終的に、20世紀の特異な現象である全体主義(ナチスドイツやスターリン体制)を生み出した経緯を…

『日本の社会保障』広井良典

社会保障を考える上で、年金、医療費といった個別に分けて論じるのではなく、そもそも国家が負担すべき国民のリスクとは何かを検討し、その後、あるべき社会保障の姿を検討する。 制度自体が複雑でわかりにくいため、この本も自分のような素人には読みにくい…

『検証アメリカ500年の物語』猿谷要 その2

3 第1次大戦終結(1918年)まで ・修正憲法により黒人の自由、市民権、選挙権が認められたが、南部各州では黒人差別の合法化がすすめられた。 ・先住民の追放、虐殺も激化し、1871年の法律により先住民は居留地Reservationへ追い込まれた。 ・18…

『検証アメリカ500年の物語』猿谷要 その1

大航海時代から現在までのアメリカの歴史をたどる。アメリカ合衆国の大きな流れを理解するために役に立つ。 おそらく合衆国では常識であろう事実(建国の経緯など)を覚えることも重要である。 合衆国は自由や平等、民主主義といった理念に基づいて建国され…

『CIAと戦後日本』有馬哲夫

アメリカの国立公文書館史料を基に、アメリカが日本の戦後体制にいかに影響を与えてきたかを検討する。 ◆メモ 占領から一貫してアメリカが日本政治に影響を与えてきたことを検討する本。 日本の有力者たちは、金や自己利益のためにCIAのスパイ、工作員に…

恐怖の男を考える

Fear: Trump in the White House 作者: Bob Woodward 出版社/メーカー: Simon & Schuster 発売日: 2018/09/11 メディア: ハードカバー この商品を含むブログを見る ウォーターゲート事件に関する著作『大統領の陰謀』、『ディープ・スロート』や、ブッシュ、…

『インテリジェンスの基礎理論』小林良樹 その2

インフォメーションの分析に関して、以下のような問題が生じる。 ・インテリジェンスの政治化(政治に従属し、または政治を操作するために、収集分析が曲げられること) ・ミラー・イメージング(自分がこうだから相手もこうだろう) ・クライアンディズム(…

『インテリジェンスの基礎理論』小林良樹 その1

安全保障政策に直結するインテリジェンスについて体系的に学ぶことを目的とする本。 書名のとおり、基礎事項が網羅されている。個別の事例や、歴史的な変遷については最低限の記述である。 ◆所見 インテリジェンスのプロセス、すなわち情報収集と分析は、国…

『ふしぎな部落問題』角岡伸彦

『はじめての部落問題』の著者による続編。 部落問題の矛盾点や、メディアによる偏見や誤情報の拡散、近年の新しい事象(ネットでの情報氾濫など)にも触れている。 同時に部落解放運動の新しい形も紹介しており、現状を知る助けとなる。 *** 近年の部落問題…

『社会変動の中の福祉国家』富永健一

本書の主張…… ・福祉国家の新しい定義は、解体しつつある家族を国家が支える制度、というものである。 ・かつて福祉の中心的な担い手であった家族も地域社会も、それができなくなったため国家が引き受けなければならなくなった。 本書の焦点は、高齢化=介護…

イワンとフリッツ

◆買い物 Catherine Merridale『Ivan's War』(邦訳『イワンの戦争』)は独ソ戦を戦った赤軍兵士たちの実態を、証言や報告資料をもとに明らかにした本であり、非常に面白い。 赤軍兵の死者は推定800万人~1300万人であり、これだけで第二次世界大戦に…

『元禄時代』児玉幸多 その2

6 殉死の禁 家綱の代は、江戸時代には珍しい集団指導体制が敷かれた。保科正之、松平信綱らの死後は、酒井忠清が権勢を誇った。 政治的には安定していたが、火事や災害が絶えなかった。 ・家綱はあまりものをいわず、老中らの言いなりだったため「さようせ…

『元禄時代』児玉幸多 その1

中公「日本の歴史」シリーズの1つ。 江戸成立直後の、野蛮と暴力が残る時代、また江戸の発展や文化について知ることができる。 ◆メモ 綱吉の評価、柳沢吉保、荻原重秀らの評価は学者によって幅があるようだ。 度々火災に見舞われる江戸、人の命の軽さ、綱吉…

『極秘特殊部隊シール・チーム・シックス』ワーズディン

◆メモ 「ビンラディン暗殺!」と表題に書かれているが、冒頭の数ページのみであり、出版の際に急きょ付け足された感が強い。セイモア・ハーシュの報道で八百長と噂になった、疑惑の作戦を解説する。 本の大部分は著者の自叙伝である。SEALでの勤務内容や…

『トルコのもう一つの顔』小島剛一

トルコの少数民族とその言語を調査する日本人の紀行報告。 トルコ共和国は成立以来一貫して少数民族や少数言語を抑圧し、同化政策を進めてきた。 例えばクルド人は「山岳トルコ人」とされ、またクルド語はトルコ語の方言であると定められ、公の場でクルド人…

鉄鋼だより

皮ふはどれも黒い 非常に、それは 長い間の 火の中での仕事を かたどるもの だからだ 砂の中の、白と青の 互いに絡まりあう 経典文様の 慈悲の像に囲まれて いや、正しくは 像たちの上に おおいかぶさるように 施設の熱が高まり わたしたちは、機械を 操作す…