うちゅうてきなとりで

The Cosmological Fort 無職戦闘員による本メモ、創作、外国語の勉強その他

◆歴史の本

『回顧七十年』斎藤隆夫  ――変革の手段を持たない国家は、自己保存の手段も持たない

引用:エドマンド・バーク “A state without the means of some change is without the means of its conservation. Without such means it might even risk the loss of that part of the constitution which it wished the most religiously to preserve.”…

『海軍伏龍特攻隊』門奈鷹一郎 ――やる前にだれか止めなかったのか

予科練出身の著者が、伏龍特攻隊員となった経緯や体験を語る。 ◆所感 実現可能性のない政策がどのような結果を招くかについて学ぶ必要がある。 伏龍要員や、人間地雷要員に着目すると、まずかれらは失策の被害者ではないかと強く感じる。 航空特攻のように、…

『ジョゼフ・フーシェ』シュテファン・ツワイク ――政治家のあるべき姿

ja.wikipedia.org フランス革命から帝政、王政復古時代にかけて権力闘争を生き延び、黒幕として権力を保持した人物の伝記。 ロベスピエールやナポレオンといった指導者が失脚していくなかで、フーシェは「無性格」、「無道徳」によって危機を回避した。 フー…

『ナチスの「手口」と緊急事態条項』長谷部恭男 ――危機や災害のたびに権限集中を主張しよう

◆所感 法学者による緊急事態条項の説明。 各地のアメリカ人がよく好む対比は「民主主義VS暴政(Democracy VS Tyranny)」だった。 共産主義や社会主義を敵視しながら、同じような政治体制になっていくのは残念なことである。 *** 1 緊急事態条項は「ナチス…

『日本の外交は国民に何を隠しているのか』河辺一郎 ――北朝鮮マインドを持つ腰巾着

著者は国連外交を主要テーマとする研究者である。アメリカ合衆国の軍事政策・イラク戦争に反対し、国際協調と国連を重んじる立場である。 本書もその立場から書かれてはいるが、日本の外交、つまり外務省がどのような行動をしているかを知る点では、政治信条…

『階級』ポール・ファッセル ――人からどう見られているか気になるアメリカ人

民主主義社会であるアメリカにも階級が存在するが、そのことについて大っぴらに話すのはタブーとされているという。 身分制社会とは異なり、民主主義の国では皆が平等である。いいかえれば、だれも大した価値を持たないということでもある。 本書では、身だ…

『The Nemesis of Power』Sir John Wheeler-bennett その4(4/4) ――ヒトラーに制圧されたドイツ軍

3 フリッチュ危機から戦争勃発まで ・1938年9月:チェコスロヴァキア進軍と併合 ヒトラーのチェコスロヴァキア進出計画を聞いた参謀総長ベックは、軍事的に不可能だとして恐慌に反対し、辞職した。司令官ブラウヒッチュに対し、クーデタを呼びかけるが…

『The Nemesis of Power』Sir John Wheeler-bennett その3(3/4) ――ヒトラーに制圧されたドイツ軍

2 シュライヒャーの時代 シュライヒャーは政治的陰謀に長けた、狡猾で陰険な人物と描写される。 ja.wikipedia.org 1928年には国防相をグレーナーに据えるなど自らと親しい人物(兵務局長ハンマーシュタイン(Hammerstein)など)で固め、自身は官房局(…

『The Nemesis of Power』Sir John Wheeler-bennett その2(2/4) ――ヒトラーに制圧されたドイツ軍

2 ゼークトの時代 共和国軍(Reichswehr)の創設……共和国の存立基盤であり、政治から超然とし、いかなる党派にも属さない軍。 フォン・ゼークトは将軍の子として生まれ、陸軍の中で異例の速さで昇任し参謀本部要員となった。第1次大戦では主に東部戦線で活…

『The Nemesis of Power』Sir John Wheeler-bennett その1(1/4) ――ヒトラーに制圧されたドイツ軍

ドイツ国防軍がヒトラーをあなどり、やがて掌握されていく様子を時系列で詳しく書いた本。 著者であるイギリス人ウィーラー・ベネットは、20年代から30年代までドイツで政治研究を行っていた。 非常に生まれが良いため(ケント州のアッパーミドル出身)…

『餓死(うえじに)した英霊たち』藤原彰 その2 ――日本軍の餓死に関する概説書

7 中国戦線の栄養失調症 敗戦までの2年間は、中国戦線でも餓死・戦病死が戦死を上回った。 ――某病院で数名の栄養失調症患者が臥床していたところ、食餌として与えられた一椀の粥を隣の患者より奪わんとし、仮眠中を利し絞殺しようと喉をしめかけたところ、…

『餓死(うえじに)した英霊たち』藤原彰 その1 ――日本軍の餓死に関する概説書

アジア太平洋戦争の死者310万人のうち軍人は230万人、この過半数が餓死である。また、これは全戦場で起きた現象である。 本書は大量餓死をもたらした日本軍の責任と特質を明らかにする。 著者は陸軍士官学校卒業後中国戦線に派遣され、戦後歴史学者と…

『基地はなぜ沖縄に集中しているのか』 ――経緯と現状

――手触り感の少ない抑止力や地政学的に重要な位置という説明に満足せず、本当は、なぜ沖縄なのか、という問いに、正面から向き合おうというのが、今回の私たちの取材の出発点であった。 ◆所見 沖縄に基地が集中している不公平な実態について書かれている。 …

『死海文書のすべて』ヴァンダーカム その2 ――紀元後1世紀までのユダヤ教徒の記録

*** 4 クムランのエッセネ派 クムランで生活していたのは、エッセネ派約4千人のうち最大300人だけである。なぜクムラン・グループが形成されたのかを考える。 A クムラン・グループの歴史の素描 推測では、紀元前150年頃、ユダヤ教内部で内紛があり…

『死海文書のすべて』ヴァンダーカム その1 ――紀元後1世紀までのユダヤ教徒の記録

1947年に発見された死海文書についての研究成果や概要を細かく記載した本。発見の経緯や、文書の内容、クムラン共同体の説明など、非常に具体的に書かれている。 一部の記述はあまりに細かいため聖書に関する知識が必要になるので、わたしは流し読みした…

『リトビネンコ暗殺』ゴールドファーブ その2 ――「こんな男を支持して大統領にするなんてとんでもない」

大統領の誕生 リトビネンコは、チェチェン和平に反対するイスラム過激派をKGBの工作員だと断定している。 ――「かれらはみなロシア語を話すアラブ人で、中東出身の元KGB幹部要員だった。そしてかれらの資金源はサウジアラビアではなく、モスクワだった…

『リトビネンコ暗殺』ゴールドファーブ その1 ――「こんな男を支持して大統領にするなんてとんでもない」

◆所感 元KGB職員がイギリスで暗殺されるまでの経緯を、ベレゾフスキーの協力者が明らかにする。 ベレゾフスキーは新興財閥の代表的な人物であり、エリツィン後の共産党復権を阻止するためプーチンに協力したが、その後、強権的・権威主義的なプーチン政権…

『太平洋戦争と新聞』前坂俊之 その2 ――マスメディアと権力との癒着

8 滝川事件と機関説 滝川事件: 1933年、滝川教授の刑法学に対し、「マルクス主義的」であるという言いがかりがつけられ、京大から追放される。 このとき新聞は滝川教授を擁護するものもあったが、「学者は何でも自由というわけではない」と軍部の論調…

『太平洋戦争と新聞』前坂俊之 その1 ――マスメディアと権力との癒着

戦争に関して大手メディアの動きをたどり、その責任の一端を明らかにする。 ◆メモ 新聞は第四の権力と評されるように、世論形成や誘導に絶大な影響力を持つ。 また国民が正しい情報を知ることできるかどうかは、民主主義の根幹にかかわる。 この点で、日中太…

『ウィキリークスの内幕』ダニエル・ドムシャイト-ベルク その2 ――ハッカーたちの内輪もめ

10 アイスランドでの法案成立は失敗した。 ウィキリークスチームは、ホテルの部屋で共同生活をした結果、お互いに我慢がならなくなり仲違いし、著者も、無秩序とゴミ、悪臭に耐えられず帰国した。 11 アサンジの被害妄想が強まっていき、またチーム内で…

『ウィキリークスの内幕』ダニエル・ドムシャイト-ベルグ その1 ――ハッカーたちの内輪もめ

ウィキリークスは、オーストラリア人ジュリアン・アサンジが創設した、匿名により機密情報を公開するウェブサイトである。 ウィキリークス内部でジュリアン・アサンジとともに働いた著者は、アサンジと不和になりチームを追い出され、この暴露本を書いた。 ◆…

『サムソン・オプション』セイモア・ハーシュ その2  ――容認された核開発

10 ・施設……テルノフ空軍基地核兵器貯蔵庫、ハイファ核兵器組み立て工場、再処理施設完成(1965) ・ジェリコミサイル(仏支援) ・イスラエルの核武装と、エジプト(アラブ連合)のソ連からの核兵器供与の懸念 ・イスラエルはIAEAによる査察を拒…

『サムソン・オプション』セイモア・ハーシュ その1 ――容認された核開発

イスラエルが、アメリカ政府の黙認のもと、実質核保有国になった経緯を描く本。 イスラエルでは軍による検閲制度があり、摘発された場合ほぼ確実に入国禁止となるという。 著者のセイモア(シーモア)・ハーシュは、ベトナム戦争におけるソンミ村虐殺事件や…

『古代ギリシアの歴史』伊藤貞夫 ――ポリス興亡の歴史を知る

主にポリスの興亡を中心に歴史をたどる。 アテネやスパルタ、テーベといった都市国家が政治的独立を保っていた期間はそう長くない。 各ポリスは、それぞれ植民都市を従え、同盟諸国から富を吸収し繁栄を誇ったが、社会変動や国内対立によって疲弊し、また外…

『未完のファシズム』片山杜秀 その2 ――日本軍の精神主義の起源

5 「持たざる国」の戦争 ドイツ用兵思想の系譜……小モルトケ(普仏戦争で従軍したモルトケの甥)の包囲殲滅戦略と、シュリーフェンの短期決戦主義が、日本陸軍に影響を与えた。 ドイツ帝国軍から学んだ殲滅戦思想は、1928年改訂の『統帥綱領』や続く『戦…

『未完のファシズム』片山杜秀 その1 ――日本軍の精神主義の起源

本書の特徴は、日本軍(主に陸軍)が精神主義に傾倒し暴走した原因を第1次世界大戦によるものと分析した点にある。従来の、日露戦争で驕りが生じ、昭和恐慌期に過激化したという定説に異議を唱える。 近代史、軍事史にそこまで詳しくないわたしのような読者…

『大本営報道部』平櫛孝 ――大本営発表の内側

大本営報道部に開戦直後の数年間在籍していた軍人による著書。 後半は自身の体験談ではなく資料からの抜粋が多くなる。しかし、大本営報道部とマスコミ、国民とのつながりや要素を知ることはできる。 プロパガンダは平時・戦時に関わらず国家政策の重要部分…

『Into That Darkness』Gitta Sereny その3 ――普通の市民が絶滅収容所の所長になったとき

サイモン・ヴィーゼンタールは、戦後、ナチ戦犯の逃亡に手を貸した、「オデッサ」のような組織が存在する、と主張したが、著者は懐疑的である。協力的な人びとはいたが、それははっきりとした秘密結社のような形ではなかったとする。 シュタングルらも、あく…

『Into That Darkness』Gitta Sereny その2 ――普通の市民が絶滅収容所の所長になったとき

グロボクニクは、苦痛を訴えるシュタングルに対して、家族を連れてこさせたり、ルブリンで休養をとらせたりした。しかし、シュタングルは任務から解放されなかった。 続いてシュタングルはトレブリンカでの建設作業監督を命じられた。ここでも、トレブリンカ…

『Into That Darkness』Gitta Sereny その1 ――普通の市民が絶滅収容所の所長になったとき

シュロス・ハルトハイム(Schloss Hartheim)安楽死施設の管理者、ソビボル(Sobibor)、トレブリンカ(Treblinka)絶滅収容所の所長を務めたフランツ・シュタングル(Franz Stangl)とのインタビューをまとめた本。 シュタングルは戦後逃亡し隠れていたが、…