うちゅうてきなとりで

The Cosmological Fort 無職戦闘員による本メモ、創作、外国語の勉強その他

◆歴史の本

『The Three Trillion Dollar War』Joseph Stiglitz and Linda Bilmes その1 ――イラク戦争のコストは3兆ドル

The Three Trillion Dollar War: The True Cost of the Iraq Conflict (English Edition) 作者:Bilmes, Linda J.,Stiglitz, Joseph E. W. W. Norton & Company Amazon ◆所感 『スティグリッツ経済学』のスティグリッツが書いた本。 ja.wikipedia.org イラク…

『日本残酷物語5』 ――残酷フルネス

日本残酷物語5 作者:宮本常一,山本周五郎 平凡社 Amazon 最終巻は明治以降の貧困がテーマとなっている。 都会のスラム、北海道のタコ部屋、遠洋漁業、炭坑、農業などの現場について紹介される。 北海道に住んでいたときに通った道路やトンネルの多くがタコ部…

『我が朝鮮総連の罪と罰』韓光煕 ――日本における事実上の北朝鮮窓口の歴史

わが朝鮮総連の罪と罰 (文春文庫 は 29-1) 作者:韓 光煕 文藝春秋 Amazon 最近、台湾、韓国、北朝鮮、またそれらの地域と日本との関わりについて調べています。 去年台湾に行きましたが、今年は台湾と韓国に旅行にいく予定です。 この本は、だいぶ昔に読んだ…

『反乱』メナヘム・ベギン その2 ――イスラエル建国テロリストの回想録

後半では、イギリス占領軍がイスラエルのテロリストに攻撃され、最終的にイギリスが撤退するまでが回想される。 後のイスラエル首相の多くが本書ではテロリストや民兵部隊の一員として活動している。現在でも、軍国主義的な国家方針は健在である。 8 ベギン…

『反乱』メナヘム・ベギン その1 ――イスラエル建国テロリストの回想録

反乱―反英レジスタンスの記録〈上〉 作者:メナヘム ベギン ミルトス Amazon 反乱―反英レジスタンスの記録〈下〉 作者:メナヘム ベギン ミルトス Amazon 第7代イスラエル首相メナヘム・ベギンのレジスタンス回想録。 メナヘム・ベギンはイギリス統治下のイス…

『Black Flags』Joby Warrick その2 ――イラクのアルカイダがISISに引き継がれるまで

Black Flags: The Rise of ISIS (English Edition) 作者:Warrick, Joby Anchor Amazon the-cosmological-fort.hatenablog.com 10 当時USSOCOM司令官だったマクリスタルは、ファルージャでザルカウィをとり逃したときのことを覚えていた。特殊部隊による家宅…

『Black Flags』Joby Warrick その1 ――イラクのアルカイダがISISに引き継がれるまで

Black Flags: The Rise of ISIS (English Edition) 作者:Warrick, Joby Anchor Amazon ISIS(イスラム国)発祥の経緯をたどる調査の本。 前半はヨルダンの悪党ザルカウィがイラクのアルカイダを率いてテロを行うまで。後半は、壊滅したイラクのアルカイダが…

『中国共産党 支配者たちの秘密の世界』マクレガー ――中国の政治システムについて入門

中国共産党 支配者たちの秘密の世界 作者:リチャード・マクレガー 草思社 Amazon フィナンシャル・タイムズの記者が中国共産党を分析する。本書は中国政府に対する楽観的な見方に疑問を呈している。 2010年に出版されたが今でもためにはなると思われる。 一…

『日本海軍400時間の証言』NHKスペシャル取材班――有名なサイコロ捏造シミュレーションもある

日本海軍400時間の証言: 軍令部・参謀たちが語った敗戦 (新潮文庫) 作者:NHKスペシャル取材班 新潮社 Amazon NHK取材班に、昭和館の戸髙一成氏が提供した「海軍反省会」録音テープをもとに、戦争時の海軍首脳の実態を検討する本。 ja.wikipedia.org NHKスペ…

『日本残酷物語4』 ――ニートになった旗本が強盗殺人犯になる

日本残酷物語4 (平凡社ライブラリー) 作者:宮本 常一,山本 周五郎,揖西 高速,山代 巴 平凡社 Amazon 所感 幕末から明治にかけての民衆には、正確な情報を知るすべがなく、デマや荒唐無稽な噂が大きな力を持った。また人びとは、今日からは想像もつかないほど…

『自白の心理学』浜田寿美男 ――無実の罪で捕まったら警察を説得できると思ってはいけない。ロボットだとおもえ

自白の心理学 (岩波新書) 作者:浜田 寿美男 岩波書店 Amazon 所見 ことばはしばしば現実から遊離し、現実を裏切り、現実を歪める。それは捜査においても、裁判においてもそうである。そうしてことばは現実にはなかった物語をあたかも現実の物語であるかのよ…

『Bonhoeffer』Eric Metaxas その3 ――私的な徳にこもり、身の回りの不正義に目をつむる

Bonhoeffer: Pastor, Martyr, Prophet, Spy (English Edition) 作者:Metaxas, Eric Thomas Nelson Amazon 20 火星の出現 1938年、ヒトラーは陸軍参謀総長フリッチュを失脚させた後、国防軍最高司令部(OKW)を設立、軍を掌握した。 ja.wikipedia.org ja.w…

『Bonhoeffer』Eric Metaxas その2 ――「平和にむかう安全な道は存在しない」

Bonhoeffer: Pastor, Martyr, Prophet, Spy (English Edition) 作者:Metaxas, Eric Thomas Nelson Amazon 12 教会の闘争が始まる ドイツ的キリスト者の指導者、元海軍従軍牧師のLudwig Mullerはヒトラーに取り入り信望を得た。 en.wikipedia.org かれはドイ…

『Bonhoeffer』Eric Metaxas その1 ――ヒトラー暗殺計画に参加する牧師

Bonhoeffer: Pastor, Martyr, Prophet, Spy (English Edition) 作者:Metaxas, Eric Thomas Nelson Amazon ヒトラー暗殺計画に参加し処刑された牧師、ディートリヒ・ボンヘッファーの伝記。 ja.wikipedia.org 所感 ディートリヒ・ボンヘッファーの生涯や、か…

『「日本人」という、うそ』山岸俊男――「心」のせいにしないで考えること

「日本人」という、うそ: 武士道精神は日本を復活させるか (ちくま文庫) 作者:山岸 俊男 筑摩書房 Amazon 所感 心理学者の研究によれば、心は、人間世界の善悪の源泉ではなく、あくまで進化の産物である。すなわち、動物の他の内臓器官と同じ、特定の機能に…

『日本の歴史 大名と百姓』佐々木潤之介 ――直訴しても死罪になるケースは一部だったらしい

日本の歴史〈15〉大名と百姓 (中公文庫) 作者:佐々木 潤之介 中央公論新社 Amazon 江戸初期の農民社会・制度と、大名の藩経営について説明する本。 ja.wikipedia.org ◆所感 本書に記載されている「慶安の触書」は、現在は幕府の行政文書ではなかったという説…

『Reinhold Niebuhr: Major Works on Religion and Politics』その4 ――人間の限界を知るということ

4部 アメリカ史の皮肉(The Irony of American History) 「皮肉である」とは、当事者たちがそれとは気づかずに悪徳に足を踏み入れているような状態をいう。もしくは、徳や理想そのものに欠点があり、無意識に悪をなしている状態をいう。 1 アメリカ合衆国に…

『Reinhold Niebuhr: Major Works on Religion and Politics』その3 ――人間は罪深い!

3部 光の子供と闇の子供(The Children of Light and the Children of Darkness) 民主主義をより悲観的な視点から分析し、また擁護することがこのエッセイの目的である。自由主義のあまりに楽観的な人間理解は、民主主義への幻滅を生みかねない。 そこでニ…

『Reinhold Niebuhr: Major Works on Religion and Politics』その2 ――人が集まると不正が生まれる

2部 道徳的な人間と非道徳的な社会 副題は「倫理と政治」である。 1932年、世界恐慌により各国の社会問題が深刻化し、共産主義とファシズムが勃興する時期に書かれた。不正義を生み出していた資本主義・民主主義とともに、共産主義についても、その運動が生…

『Reinhold Niebuhr: Major Works on Religion and Politics』その1 ――金満の国で説教する

メモ ラインホルト・ニーバーは米国で有名な神学者であり、宗教とは遠いように思われる20世紀初頭デトロイトの工業地帯や、フォードのブラック労働者を相手に信仰を伝えようとした。 元米陸軍人の著作家アンドリュー・ベースヴィッチもニーバーの魅力を講演…

『追及・北海道警「裏金」疑惑』北海道新聞取材班 ――セルピコという映画があったな~

北海道警の裏金づくりを追及する北海道新聞(以下「道新」)の取り組みをテーマにした本。 ja.wikipedia.org ◆所感 おそらくもっとも自浄能力のない組織の1つである警察の不正を、どのように解明していったかが描かれる。道新の仕事は、政治家、官庁、検察と…

『Civil Disobedience』Thoreau ――キャプテン・アメリカ?

◆所感 ヘンリー・デイヴィッド・ソローは、マサチューセッツ州の人頭税、奴隷制、米墨戦争に反対し、納税を拒否し投獄された人物である。 ja.wikipedia.org 不服従の信条と、投獄されたときの体験談からなる。1849年に、講演録として出版された。 自らの良心…

『モサド・ファイル』マイケル バー ゾウハー ――国家運営の1つのパターン

イスラエルの情報機関モサド(諜報特務庁)の歩みや、特記事項を、ダイジェストで紹介する本。 紹介されるエピソードの大半は、冷戦時代のものである。非常に有名な話も多い。 イスラエルの国の成り立ちや国の方針は非常に明確である。この方針に入っていけ…

『The Morning They Came For Us: Dispatches from Syria』 ――シリア内戦の様子に関する記録

シリアの反政府デモが内戦に転化する2012年を中心に、現地を取材したジャーナリストの記録。 アサド支持者、デモ参加者など、シリアの一般市民の体験談をまとめている。 所感 シリア反乱勢力には空軍力がなく、シリア政府軍はヘリコプターなどで爆撃を行って…

『国家神道と日本人』島薗進 ――「神社は宗教にあらず」戦前には宗教ではなかった神道の話

国家神道は、従来の土着信仰と地続きの神道が国家信仰と統合され、明治時代に神社や学校によって広められた宗教である。 敗戦とともに国家神道は公的には解体されたが、完全に消滅したわけではない。 本書は国家神道とは何かを検討し、日本人の思想史・宗教…

『日本残酷物語3』 ――DIVIDE AND RULE

メモ 鎖国の成立には、隣国である明や朝鮮が同様の政策をとっていたことが影響している。 幕府の統治においては、下の身分や被差別民が抑圧のはけ口として利用された。 各藩、各集落は孤立し、また共同体の中でも相互監視が行われた。こうした閉鎖的な意識は…

『On War』Carl von Clausewitz その1 ――戦争論の古典

戦争論の古典であるクラウゼヴィッツ『戦争論』を数年前に読んだ時のメモ。 定訳となっているというピーター・パレ(Peter Paret)版を読んだ。 思い出 このブログの作者が自〇隊で働いていたとき、海外派遣を待つ間、隊舎の空き部屋をもらって待機していた…

『ザ・フェデラリスト』ハミルトン、ジョン・ジェイ、マディソン ――その権力分立、機能してますか

所感 独立したアメリカ合衆国において、適切な権限を持つ連邦政府を作ろうと主張した古典。 合衆国憲法は、歴史上最古の近代的憲法であり、本書に書かれている基本的な原則は今も有効のものが大半である。 特に「司法の任命権が行政・立法に委ねられていると…

『忘れられた島々』井上亮 ――南洋諸島と日本の歴史

日本は敗戦までの30年間、ミクロネシアを国連委任統治領として支配していた。 歴史から忘れられがちな太平洋諸島と日本の関わりをたどる。 ja.wikipedia.org ◆所感 ・サイパンなどの南洋諸島には10万人超の日本人移民がおり戦闘で半数以上が死んだ(戦死や集…

『愚行の世界史』バーバラ・タックマン その1 ――驕り高ぶり言語道断

歴史上の愚行について考える本。 ◆所感 愚行とは、当時から多くの批判や警告を受けていながら、政府や統治者が誤った固定観念や保身のためから愚かな政策を断行することをいう。 本書で題材になっているヴェトナム戦争と同じく、失敗とされる戦争の多くは、…