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The Cosmological Fort 無職戦闘員による本メモ、創作、外国語の勉強その他

『The Morning They Came For Us: Dispatches from Syria』 ――シリア内戦の様子に関する記録

シリアの反政府デモが内戦に転化する2012年を中心に、現地を取材したジャーナリストの記録。

アサド支持者、デモ参加者など、シリアの一般市民の体験談をまとめている。

 

所感

  • シリア反乱勢力には空軍力がなく、シリア政府軍はヘリコプターなどで爆撃を行っている。悪名高い「たる爆弾」は、たるにつめた爆薬を単に空から落とすだけのものである。軍事的には低強度紛争だが、その被害は甚大である。

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  • 内戦の根本的な原因は、国民の不平等の上に成り立っていたアサド体制である。ダマスカスは豊かな都市で、そこに住む富裕層は欧米のエリートと変わらない生活をしている。かれらの生活は、縁故や賄賂に汚染された国家システムによって支えられていた。

 

1

反政府デモが武力化しつつあったときも、ダマスカスは平時の様子をかろうじて維持していた。Dama Rosaホテルには、することのなくなった国連平和維持軍とその司令部が駐屯していた。同じホテルのプールでは、能天気なプールパーティーが行われていた。しかし、そこから見える郊外では政府軍による攻撃の煙が見えた。

国連は治安の悪化を受けて任務続行が不可能になり、シリアが内戦に転じていくのをただ傍観するだけだった。

 

2

政府は反政府デモに対し秘密警察や軍、「シャビーハ」と呼ばれるギャングを動員し対抗した。

警察の留置場や尋問センターにおいて、多数の女性が強姦されている。イスラム社会において強姦されることは女性として価値を失うことを意味し、多数の女性が自殺した。

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3

ダマスカス近郊のMaloulaは、イエス・キリスト時代のアラム語がいまも使われている地域であり、キリスト教徒、スンニ派ドゥルーズ派などが共存している。この集落は、シリア内戦が勃発したとき、宗派対立には加わらないことを誓い不干渉を貫いた。

しかし、イスラム主義勢力と政府軍との戦闘が度々続いている。サラフィー主義者たちが一度集落を制圧したとき、キリスト教徒たちが嫌がらせを受け、また銃口をつきつけられ棄教を迫られた。

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4

ダマスカスで暮らすエリート家族は、シリアの安定のためにアサドを支持するといった。かれらは多言語を話し、複数のパスポートを持ち、もしアサド政権がまずいことになればどこかに逃げることができた。

こうしたエリートたちは、典型的なアサド支持者の例である。しかし、著者はかれらもまたシャビーハや秘密警察の支配下にあることに気がついた。

ダマスカスの富裕層にとって、変化は望ましいものではなかった。

 

 

5

自由シリア軍や反乱勢力の拠点だったDarayyaは、政府軍による爆撃と制圧が行われた後、民間人に対する虐殺が発生した。政府の正規兵あるいはシャビーハ、またはイランの武装勢力が男性を無差別に処刑した。

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その後、政府側テレビ局の女性リポーターが負傷者にまとわりつき「反乱勢力、テロリストの犯行」として報道した。

一方、反乱勢力はアラウィ―派のモスクを破壊していた。

 

 

6

ラタキアはアラウィ―派の土地である。アラウィ―派はシリア人口の12パーセントを占める。

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かつての宗主国フランスは、アラウィ―派とドゥルーズのみが戦闘に向いていると考え、かれらを植民地軍に取り込んだ。しかし、多くのアラウィ―派は当時、スンニ派地主のために働く労働者だった。

現在、軍や政府の職業の大半にはアラウィ―派が採用されている。

教育ある、豊かなシリア人の一部は、本当に自分たちの政府が蛮行を行っていることを知らされておらず、信じられないようだった。

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7

著者はホムス奪還を目指すシリア政府軍も取材した。

戦闘の大半は、ビル1つ、部屋1つ、通り1つを抑えるために、狙撃手のすきを狙って待ち続ける時間に費やされた。

市街戦地域で暮らす子供たちは深刻なダメージを受けていた。夜尿症や不眠、抜け毛に悩まされる子供が多かった。

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8

アレッポは聖書でも言及されている古い都だが、反乱勢力と政府軍との激戦地となった。イスラム過激派が一時的に占領したとき、歴史地区の建物は尽く破壊された。

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電力がなくなり、ヴィクトリア朝時代の病……コレラチフス、ポリオが蔓延した。

反乱地域のパン職人は、住民のためにパンを焼いたら殺すと政府に脅迫された。かれはその後自由シリア軍の保護下に入った。

偽のメールで外国人をおびき出し誘拐する、アル・ヌスラ戦線ISISの活動が始まっていた。

著者の知人だったジャーナリスト2名も、イスラム国によって斬首された。