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5 立法
法の源(Sources):立法、裁判官のつくる法(慣習法、判決、衡平(Equity))
または自然法を源とする学者もいる。
法律の文理解釈は、裁判所に永久に課せられた仕事である。
裁判所は専門的な事柄に対しても技術的解釈を行わなければならない。
立法も、裁判所の解釈と密接につながっている。そして裁判所は、法曹界の意見、世論の力に影響を受ける。
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6 慣習
法源としての慣習は、長い期間にわたる慣行によって是認された法規範から成り立つものである。確定性、継続性、合理性を必要とする。
慣習は、国民的伝統と民衆の思想を根拠として法体系をつくるときに用いられることがある。
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7 判決例
とくにコモン・ローは判例によって成り立つ法である。先例を適用するにあたり、「判決理由」(レイシオ・デシデンダイ(Racio Decidendi))が用いられる。
判例は権威となっていくが、世論と時代の変化に伴って、しだいに変わっていくものでもある。
判決にさいし、古いローマ格言を参照することがあり、ローマ法も間接的に影響を与えている。
一般に成文法は、遡及処罰を禁じるが、判例法制度はそうではない。裁判官によって、考えが正反対となることもある。
――……裁判官が法を作ってゆくその過程において、法は、執行力を伴う命令の形成としてではなく、裁判官の叡智と学識によってえられた現在の権利の宣言としてあらわれてくるという事実のもたらす結果なのである。
判決は、まず、明確な権利宣言でなければならない。
公正と正義によって困難を解決することが本質である。
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8 衡平
衡平(Equity)においては、裁判所の想像力により、法規範に大いに反抗しながら運用されなけばならない。
衡平法の起源は、裁判所に無視されてきた隷属農民の権利保護にある。
衡平法はコモン・ローに従い、コモン・ローが救済を認めない場合に、救済を与える。
3つの機能:
・個別的な取り扱いをなしうることによって問題の解決に助力を与えること
・法の欠陥を補充すること
・法規範から生ずる苛酷な結果を矯正すること。
法が時代にそぐわなかったとき、欠陥があるときに、衡平法が活用される。
衡平の考え方は、ローマ法にまでさかのぼる。
衡平は、複雑な法体系とは不可分である。
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9 自然法
実定法に対して、真に純粋理性または人間性(Human Nature)に基づく法体系があるとするのが自然法の立場である。
その起源は、うつろいゆく正義や道徳の背後に、永遠の正義・不正義観念があるとしたソクラテス、プラトン、アリストテレスまでたどることができる。
人間の本性からなる自然法は、すなわち神の力と深く結びついている。
法の下の平等を唱える自然法観念は、国際法や、とくに人の権利(Rights of Man)に関する原理に大きく影響した。
自然法は直接の法源としてではなく、学問的な法源として作用してきた。また、自然法の内容も、実定法と同様、移り変わっており、統一的な永遠法典にしてしまうのは不可能である。
自然法の内容とは正義であり、法の制定そのものに、根源から働きかけるものである。
既存の法体系が、社会の要求と一致しないとき、自然法は正義をもって法に対し判断を下す。
- 作者: P.G.ヴィノグラドフ,Paul G. Vinogradoff,末延三次,伊藤正己
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※ 参考
『西洋法制史』勝田有恒・森征一・山内進 - うちゅうてきなとりで