うちゅうてきなとりで

The Cosmological Fort 無職戦闘員による本メモ、創作、外国語の勉強その他

歩兵はパレードする

 兵隊によるパレードの準備には3か月以上かかるため、この間、たくさんの作業員が全国から集められ、ひたすら行進や会場運営の練習をすることになった。また、大量の燃料、食糧費、移動費を消費した。

 わたしはパレードの意義が見いだせず、同じ人数を集めればほかに何か有意義なことができるのではないかと思っていた。銃剣振り回しスポーツ以外にも、探せば何かあるはずだ。

 

 先日、年配の無職同志と話しているときに、この話題になった。

 無職同志は、1941年11月、ドイツ軍がモスクワまで迫ってきている緊急事態のなかで、スターリンがパレードを決行したことを引き合いに出した。

 

 ――11月、スターリンは地下鉄において演説を行った。また、アルテミエフ(モスクワ軍管区司令官)、シニロフSinilovらモスクワ防衛の指揮官に対し、例年どおり11月7日革命記念パレードを行うよう命じた。パレードは成功し、市民と兵士は一体感を味わった。

 ――劇場や音楽会も、爆撃を恐れず平常通り実施された。こうした士気高揚は成功し、やがてソ連軍反撃の起点となった。

 

 パレードは、軍の練度を示し、士気を高揚させるという一定の効果があるという。なるほど確かにそういう目に見えない効果もあるかもしれないと思った。

 

 ところが今年のパレードは台風接近により中止になった。わたしはWEBサイトで知ったが、おどろいたことに延期ではなく中止ということだった。

 週明け、無職同志は次のように話した。

 スターリンはおそらく積雪を気象兵器(現在は国際条約(ENMOD)で禁止)で抑制しパレードを強行したが、一方この国のパレードが台風で中止になるのは、それはその程度の実力だということである。

 さらに、特に日程を延期するわけでもないということは、つまりパレード自体あってもなくてもいいということである。

 わたしはなるほどと思った。

 

 わたしたちのパレードは一般客が入れるわけでもないので、広報や採用活動に効果があるかも疑わしい。

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 アメリカ軍やイスラエル軍は――わたしはこれらの軍の活動に全く賛同していないが――パレード(正式な閲兵式)を無意味と考えてほとんど実施しない。かれらにはかれらの本来の仕事があり、無駄なことに税金と人力を使うのは間違いだからである。

 宗主国からきた無職同志は、無駄な行進練習を見て頭を抱えていた。

 

 作業員の存在目的は何なのだろうかと考えた。

 パレードをはじめとする数々の、ほぼ無意味なイベントや作業は、目的にかなった、合理的な活動といえるのだろうか。

 作業員たちが間抜けなことをやっていないかチェックしなくていいのだろうか。それとも、よく知らないが、かれらはちゃんとやっているに違いない、という非常に前向きな信仰があるのだろうか。

 この件に関していえば流れを止められるのは政治と出資者だけである。