『ヒルズ黙示録』の続編で、主にライブドアと村上の逮捕のいきさつについて説明する。
検察は、従来の汚職、ワイロ摘発モデルから、経済犯罪を糾弾する新しいモデルへ転換を試みた。検事たちには経済犯罪について付け焼刃の知識しかなく、どうやって堀江らと村上を犯罪者に仕立て上げるか、右往左往しなければならなかった。
検察のシナリオが何度も訂正されていく記述を読んで、この官庁の役割とはいったい
何なのかと疑念がわいた。
ライブドアの資金を横領した宮内、中村、野口についての文章から、当時の会社のようすがうかがえる。
――3人は1999年、草創期のライブドアで不眠不休で働いた仲だった。……上場に必要な膨大な資料づくりや、証券会社、信託銀行との打ち合わせを、この3人だけでやりぬいた。……「朝は9時過ぎに出社し、帰宅するのは連日午前様でした。午前様といっても零時過ぎどころじゃありません。午前2時、3時は当たり前。土日もほとんど休みなく働きました」
――堀江には最高経営責任者の自覚は乏しかった。大学を中退して創業したため、社会経験は未熟だった。ITバブル時に上場し、身分不相応な大金を取得し、金銭感覚がすっかりマヒしていた……。
堀江には、商売を見つける独特のセンス、また巨大な敵に挑む「蛮勇」があった。しかし「それを安定的なキャッシュを生み出すビジネスに転化させていく具体的な戦術は乏しかった」。
検察について……時代に取り残されたままなのが、検察庁だ。……政治家は手を付けず、経済界も何も言わない。マスコミも記事ネタがほしいのでめったに批判しない。
――批判がない組織は、自制がきかない。霞が関のアンタッチャブル、東京地検特捜部はまるで現代の「関東軍」のようだった。いったん暴走するとだれも止められず、しかもだれも責任をとらなかった。
著者の格差社会論がまたしめくくりにつけられている。
――欧州や米国のように資源と富の蓄積のないこの国で、団塊以上の年寄りの世代が国富を蕩尽し、かれらは子供たちに「貧乏国家」で暮らすことを強制しようとしている。……巨大な借金を抱えたまま人口減少するこの国で、「額に汗する人」では国際競争に勝てない。「必要なのは脳みそに汗をかく人に、資金の出し手がいることです」。……彼らでは「年寄り天国」ニッポンを突破することはできなかった。