11 暗黒の王子
本書は元FBI職員のジョン・オニールを、合衆国側の主要人物(狂言回し)として設定している。
FBI本部に着任したジョン・オニールは、ラムジ・ユセフ目撃の報を受けて、パキスタンにおいてただちに「rendition(国外での逮捕連行)」を実行した。
かれは仕事中毒で、他人にもそれを強要した。部下は皆自分の人生を犠牲にした。
FBIは、ニュージャージーやフィラデルフィア出身の、イタリア系、アイルランド系カトリックが多く、これまでは同じ出自のマフィアたちを相手にすることが多かった。
オニールは、当時ほとんど注目されていなかったイスラム過激派に目をつけ、ビンラディンの行方を追った。
アルカイダは、核兵器を入手できないかどうか、ソ連等と交渉していた。
12 少年スパイ
エジプト情報機関は、ザワヒリのジハード団を追い詰めるためにおぞましい作戦を実行した。容疑者の子供を誘拐し、性的暴行を加え、その様子を撮影し、スパイに仕立て上げた。
しかし作戦は失敗し、ザワヒリは子供を処刑した。
ザワヒリらはエジプトを逃れ、各国のエジプト関連施設を爆破した。
ビンラディンもスーダンを出国せざるを得なくなった。かれの事業は失敗し、資金源は絶たれ、スーダンの庇護も受けられなくなっていた。証言では、かれは事態を打開する知力に欠けていた。
13 聖遷
アフガン内戦では、タリバンが台頭しつつあった。ムジャヒディン出身のオマル師が指揮するタリバンは、サウジアラビア及びパキスタンの支援、神学校の経営、アヘン栽培の3つの柱により、急速に勢力を拡大した。
タリバンは原始的なイスラーム主義を強制したが、アフガン人は安定のために仕方なく従った。
ビンラディンはトラボラ山脈の洞窟に住んだ。タリバンとは異なり、アルカイダは重機やビデオメッセージ等、現代的な技術を利用した。
このとき、後にボジンカ計画を立案するハリド・シェイク・モハメドがビンラディンを訪問した。モハメドは、飛行機をハイジャックしアメリカの重要施設に突撃する計画を語り、ビンラディンに影響を与えた。
14 運用状態
FBIとCIAの合同部署と、それぞれの方針の違いについて。
・CIAは、ビンラディンの殺害を第1に考える。
15 パンと水
タリバンのオマル師は、ビンラディンとは主義を異にしていたが、パシュトゥン人の掟に従い、来客をかくまった。
やがて、タリバンとアルカイダは協力し、9.11の2日前に行われたマスード暗殺等でアルカイダも貢献した。
ビンラディンが洞窟で生活している間、エジプトではイスラム集団がテロを起こした。
97年のルクソール観光客襲撃事件では60人あまりの外国人が殺害された。テロリストは観光産業に打撃を与えようとしていた。これを機会に、ムバラクは取締りを強化し、大規模テロは起こらなくなった。
16 「Now it begins」
ザワヒリは組織が分裂するのを承知でアルカイダと連合し、合衆国を主敵に定めた。合衆国から圧力を受けたサウジアラビアは、タルキ王子を派遣し、タリバンに対しビンラディンの身柄引き渡しを求めた。しかし拒否された。
98年、ケニア米国大使館とタンザニア大使館の同時爆破テロが起こった。ジョン・オニールらFBIは現地に赴いて捜査し、容疑者を捕まえた。しかし、CIAとFBIは情報を共有せず(CIAは他部署に情報を与えなかった)、アルカイダの次なるテロにつながる情報は途絶えてしまった。
米軍は、報復としてアフガンのアルカイダキャンプを爆撃した。数人の聖戦士が死亡したが、ビンラディンらは助かった。
17 新しい千年紀
ジョン・オニールらは、ビンラディンとアルカイダのテロを阻止するために尽力した。
18 ブーム
アフガン戦争時代のムジャヒディンは、多くの専門職や犯罪者を含んでいた。
90年代以後、アルカイダのキャンプにやってくるのは富裕層・高学歴の若者が多数だった。かれらは故国を離れて、欧米で孤独な生活をするうちにイスラーム主義に傾倒していった。かれらは殉教することを熱望した。
当時の軍事訓練資料から、アルカイダの目的が明らかにされている。
・地上に神の国をつくる。
・神のもとでの殉教を達成する。
アルカイダの敵は次のとおり。
・異端(世界のムバラクたち)
・シーア派
・アメリカ
2000年に入り、ビンラディンはアメリカ国内での同時テロを企画していた。ハンブルクで教育を受けたモハメド・アタらは、欧米での生活経験があり、英語ができるという点で、テロ実行者の条件に適合していた。
2名の構成員がアメリカに入国したとき、CIAは情報をつかんでいたが、国内担当のFBIに通知しなかった。
911につながる手がかりはこうして失われた。
ビンラディンは次のテロを指示した。2000年10月、イエメンのアデン湾にて給油中の駆逐艦コールに自爆ボートが突撃し、17名の米水兵が死亡した。
オニールらは200名ほどでイエメンに乗りこんだがアルカイダにつながる証拠を発見できなかった。
19 盛大な結婚式
アルカイダ関連人物が続々とアメリカに入国し、飛行訓練を受けているという情報をCIAはつかんでいた。また、偶然逮捕されたムサウィ容疑者への尋問から、同時多発テロ計画が明らかになった。
しかし、CIAはFBIに一切の情報を与えなかった。
このため、9.11の阻止は失敗した。サウジアラビアの内相タルキ王子も、ビンラディンを拘束できなかったために更迭された。
オニールはFBIを退官し、WTCの保安業務についていたが、救助活動を支援している最中に倒壊に巻き込まれ死亡した。
20 解放
FBIの捜査官が、イエメンで勾留されていた容疑者を尋問したことで、9.11とアルカイダの関連が証明された。
捜査官はアラブ系アメリカ人であり、容疑者に対し信仰の面から問い詰めることで自白を引き出した。
アルカイダとタリバンは多国籍軍の攻撃により四散した。ビンラディンとザワヒリはパキスタンへと逃亡した。
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The Looming Tower: Al Qaeda and the Road to 9/11
- 作者: Lawrence Wright
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