ダーウィンの持つ重要性をわかりやすく説明するための本。
具体的には、ダーウィン革命が既存の世界観をどのように変えてしまうのか、ダーウィン思想が、その反論に対し、いかに耐えてきたか、ダーウィン思想がヒトにも適用されうることを説明する。
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1部 中間からのスタート
1
ダーウィン思想の中核はDNAに基礎を置く複製と進化の理論である。ダーウィンと、その後脚光を浴びたメンデルの遺伝理論により確立された思想は、科学者の間でも揺るぎのない地位を得ている。
ダーウィニズムは既存の価値観の大多数を転倒させてしまう危険な思想でもある。
同時代においては、ロックやヒュームの思想のように、世界が存在する根本的な原因として「神」や「精神」が考えられていた。
2
自然淘汰によって、生物の本質が変化していく。『種の起源』は進化によって種が多様化したという事実と、そこに働く自然淘汰の現象を説明する。
ダーウィンの理論は現在の用語でいえばアルゴリズムを提供したといえる。
――アルゴリズムというのは、それが「作動」ないしは実地に運用されれば必ず――論理的には――ある種の結果を生み出すものと期待される、ある種の形式的プロセスのことである。
したがって、ダーウィン理論が、人間を生み出すためのプロセスであるとか、進化の最終ゴールが人間であるとかいった考えは誤りである。
いかなる自然界の現象や生物の様相も、「いかなる知的管理の助けもなしに生起する、個々には心を持たない一群のステップ」、すなわちアルゴリズムで説明できる。
3
ダーウィンの危険な思想は、進化のあらゆる過程を自然淘汰の現象に還元してしまう。
反対者たちは創造主によるデザインや創造者の存在を主張してきたが、そこには確固たる根拠がない。著者は、ダーウィン理論を好ましい還元主義、すべてを神のしわざにする考えを悪しき還元主義と評する。
4
種の観念をどのように定義するかについては、いまだに論争が続いている。ミトコンドリア・イヴはたまたま子孫が生き残っただけで、イヴ本人が特殊だったわけではない。
――結果的に見れば新種の創始者であったことがわかるような個体には――自分の環境にうまく溶け込んでいる個体にも――何か内在的なものや本質的なものがあるわけではないし、またあるはずもない。
ある種から新種が生まれたかどうかは、過去をさかのぼってみなければわからない。
5
この章は素人には難しかった。
可能性には論理的、物理学的、生物学的、歴史的の4つの段階が存在する。
DNAの配列はあらゆる組み合わせが可能である。しかし、DNA配列と実際の表現型との関係規則が定まっていないため、ある表現型を作りたいとおもってDNA配列をすぐに特定することはできない。
この世で可能な生物学的可能性について、著者は次のように定義する。
――もしもxが、何らかのアクセス可能なゲノムの1つの実例となっていたり、そのゲノムの表現型の産物の1つの特徴となっていたりすれば、その場合にのみ、Xは生物学的に可能である。
QWERTYキーボードと同じように、実際の生物群は、局所的な条件により生き残ったものである。
[つづく]
- 作者: ダニエル・C.デネット,Daniel C. Dennett,山口泰司,大崎博,斎藤孝,石川幹人,久保田俊彦
- 出版社/メーカー: 青土社
- 発売日: 2000/12
- メディア: 単行本
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