うちゅうてきなとりで

The Cosmological Fort 無職戦闘員による本メモ、創作、外国語の勉強その他

本メモ

『児玉誉士夫』有馬哲夫 ――外交のもう1つの顔

本書は、アメリカ(情報関係部署)が蓄積した文書資料をもとに、政治プロデューサーとしての児玉誉士夫を検討するものである。 同盟諸国に対するアメリカの政治工作について細かく書かれている。 著者はメディアや米占領期に関する研究者で、政治的立場は私…

『韓国併合』海野福寿 ――植民地政策の時代

明治政府による朝鮮保護領化から併合までを時系列で説明する本。 ◆所見 著者の立場は、韓国併合は、当時の国際法上は適法だったものの、道義的には問題があったというものである。 明治政府は設立後すぐに台湾や沖縄、朝鮮などの獲得に乗り出しており、完全…

『わが半生』溥儀 その3――宮殿の異常な人びとと、そこにたかる人びと

7 板垣との面会、溥儀が満洲国執政を受け入れる経緯について。 ja.wikipedia.org ――……かれは鞄のなかから『満蒙人民宣言書』と五色の『満洲国国旗』をとりだして、私の前の小卓の上に置いた。私は怒りで胸もはりさけそうになっていた。ぶるぶる震える手でそ…

『わが半生』溥儀 その2――宮殿の異常な人びとと、そこにたかる人びと

6 溥儀は皇后と結婚し、また妃を迎えた。婚礼行事は清朝時代のように盛大におこなわれたため、国民からの反感を買った。各外国行使が出席し、また各地に散っていた清朝の遺臣たちが春の虫のようにやってきた。 しかし、結婚して何が変わるわけでもなく、溥…

『わが半生』溥儀 その1――宮殿の異常な人びとと、そこにたかる人びと

宣統帝、愛新覚羅溥儀が1964年に北京で出版した自伝で、直後香港で話題になり世界で増刷された。 ja.wikipedia.org ◆所見 溥儀は西太后の指令によって光緒帝の養子となり、皇帝となった。溥儀の家系は西太后らが展開する醜悪な権力闘争を生き延びた。 共…

『ゴー・フォー・ブローク』渡辺正清 ――日系人部隊の話

アメリカ人としての存在意義を証明するために従軍した日系二世部隊の足跡をたどる。 著者自身もアメリカ生活が長く、かつての退役日系人たちとともにイタリアの戦跡を再訪することで、かれらの歴史を振り返る。 ◆メモ なぜ日系人部隊に注目するのか ・なぜか…

『グアテマラ虐殺の記憶』 その2 ――グアテマラ内戦に関する数少ない日本語の本

2 ゲリラとの戦いにおいて、軍はゲリラ浸透度合いで地域をゾーン化し、対策した。住民の大量拘留、移動制限、モデル村構築によるゲリラ拠点の無力化が行われた。軍は、様々な学問を利用し、また人種偏見に基づいて先住民族に対応した。 軍は、ゲリラ蔑視、…

『グアテマラ虐殺の記憶』 その1 ――グアテマラ内戦に関する数少ない日本語の本

◆所感と個人的な話 グアテマラ内戦の実態や、被害について詳しく書かれた本。 軍事独裁を行ったリオス・モントは、2013年に国内裁判所で有罪判決を受けた後、2018年に死亡した。 www.cnn.co.jp ja.wikipedia.org ◆グアテマラのフィクション グアテマ…

『Fear』Bob Woodward その2 ――民主主義の実験

14 イランの非公式テロ組織であるヒズボラの危険性について。 元陸軍大佐の情報担当であるデレク・ハーヴェイは、クシュナーからサウジアラビア訪問を打診された。クシュナーはイスラエルのネタニヤフ首相と親交があり、サウジアラビアはイスラエルととも…

『Fear』Bob Woodward その1 ――民主主義の実験

ボブ・ウッドワードによるトランプ政権の調査報告。 アメリカで売れているということで読んだ。 ◆感想 本書で描かれるトランプの振る舞いは無能な君主であり、側近たちはそれに振り回される役人である。 ・報告を聞かない、読まない、理解しようとしない ・…

『禅』鈴木大拙 ――禅の普及に努めた人物による説明

◆メモ 英語版Wikipediaには、鈴木大拙がナチズムとユダヤ人追放政策にある程度の共感を表明していた事実や論争が取り上げられているが、日本語版では丸々省かれている。 キリスト教聖職者とドイツ安楽死作戦に関する本("By Trust Betrayed")でも、多くのド…

『スノーデン 日本への警告』スノーデン ――知識は無知を制する。そして自らを律しようとする市民は知識が与える力で武装しなければならない

“Knowledge will forever govern ignorance, and a people who mean to be their own governors, must arm themselves with the power knowledge gives.”― James Madison スノーデンが暴露した大量監視システムに関する話題を中心に、民主主義社会における監…

『僕は少年ゲリラ兵だった:陸軍中野学校が作った沖縄秘密部隊』NHKスペシャル取材班 ――我が国の少年兵政策

沖縄戦時、北部でゲリラ戦を強いられた少年兵たちがいた。 NHKの取材班は、生き残った当時の人びとを取材しその全貌をつかもうとする。 新潮文庫版は『少年ゲリラ兵の告白』という書名に変わっている。 ◆所見 小野田氏で有名な陸軍中野学校二俣分校が主役…

『東本願寺三十年紛争』田原由紀雄 ――寺の内部抗争について

東本願寺紛争とは、1969年ごろから表面化した、「宗門の天皇家」大谷家――親鸞の血を引く一族であるーーを中心とする伝統擁護派と、「同朋会運動」を中心とする改革派との争いである。 ja.wikipedia.org 本願寺は、親鸞没後、関東の有力門弟が京都東山・…

『タテ社会の人間関係』中根千枝 ――ルールではなく人に従う

日本論の古典の1つだという。 本書の目的は、現代日本社会を社会人類学によって分析し、それがどのようなものかといった理論を提示するものである。 ◆所見 本書で考察されている企業(一体感、家族ぐるみ)の様子は、一昔前のものである。しかし、現代にも…

『自省録』マルクス・アウレーリウス その2 ――生きているうちに、許されている間に、善き人たれ

5 重視するべきなのは次の精神である……「誠実、謹厳、忍苦、享楽的でないこと、運命にたいして呟かぬこと、寡欲、親切、自由、単純、真面目、高邁な精神」 恩を売るようなことは慎むこと。 すべてを与えられたものとして受け入れること。 人間にとって自然…

『自省録』マルクス・アウレーリウス その1 ――生きているうちに、許されている間に、善き人たれ

2世紀のローマ皇帝によるメモ。マルクス・アウレーリウスの治下は戦争が絶えなかった。 エピクテトスのストア哲学から強い影響を受けている。セネカ、エピクテトス、マルクス・アウレーリウスらの後期ストア派は、宗教的色彩を帯びており、「哲学は初期の人…

『回顧七十年』斎藤隆夫  ――変革の手段を持たない国家は、自己保存の手段も持たない

引用:エドマンド・バーク “A state without the means of some change is without the means of its conservation. Without such means it might even risk the loss of that part of the constitution which it wished the most religiously to preserve.”…

『海軍伏龍特攻隊』門奈鷹一郎 ――やる前にだれか止めなかったのか

予科練出身の著者が、伏龍特攻隊員となった経緯や体験を語る。 ◆所感 実現可能性のない政策がどのような結果を招くかについて学ぶ必要がある。 伏龍要員や、人間地雷要員に着目すると、まずかれらは失策の被害者ではないかと強く感じる。 航空特攻のように、…

『ジョゼフ・フーシェ』シュテファン・ツワイク ――政治家のあるべき姿

ja.wikipedia.org フランス革命から帝政、王政復古時代にかけて権力闘争を生き延び、黒幕として権力を保持した人物の伝記。 ロベスピエールやナポレオンといった指導者が失脚していくなかで、フーシェは「無性格」、「無道徳」によって危機を回避した。 フー…

『ナチスの「手口」と緊急事態条項』長谷部恭男 ――危機や災害のたびに権限集中を主張しよう

◆所感 法学者による緊急事態条項の説明。 各地のアメリカ人がよく好む対比は「民主主義VS暴政(Democracy VS Tyranny)」だった。 共産主義や社会主義を敵視しながら、同じような政治体制になっていくのは残念なことである。 *** 1 緊急事態条項は「ナチス…

『日本の外交は国民に何を隠しているのか』河辺一郎 ――北朝鮮マインドを持つ腰巾着

著者は国連外交を主要テーマとする研究者である。アメリカ合衆国の軍事政策・イラク戦争に反対し、国際協調と国連を重んじる立場である。 本書もその立場から書かれてはいるが、日本の外交、つまり外務省がどのような行動をしているかを知る点では、政治信条…

『階級』ポール・ファッセル ――人からどう見られているか気になるアメリカ人

民主主義社会であるアメリカにも階級が存在するが、そのことについて大っぴらに話すのはタブーとされているという。 身分制社会とは異なり、民主主義の国では皆が平等である。いいかえれば、だれも大した価値を持たないということでもある。 本書では、身だ…

『不実な美女か貞淑な醜女か』米原万里 ――翻訳、通訳、外国語学習について

有名な翻訳者、著述家による本。 通訳としての経験を交えて、異なる言語間、文化間のコミュニケーションについて考える。 母国語について深く知ることが通訳のみならず外国語学習にとって重要だという。英語や外国語を使えるというのは、母国語を使いこなせ…

『The Nemesis of Power』Sir John Wheeler-bennett その4(4/4) ――ヒトラーに制圧されたドイツ軍

3 フリッチュ危機から戦争勃発まで ・1938年9月:チェコスロヴァキア進軍と併合 ヒトラーのチェコスロヴァキア進出計画を聞いた参謀総長ベックは、軍事的に不可能だとして恐慌に反対し、辞職した。司令官ブラウヒッチュに対し、クーデタを呼びかけるが…

『The Nemesis of Power』Sir John Wheeler-bennett その3(3/4) ――ヒトラーに制圧されたドイツ軍

2 シュライヒャーの時代 シュライヒャーは政治的陰謀に長けた、狡猾で陰険な人物と描写される。 ja.wikipedia.org 1928年には国防相をグレーナーに据えるなど自らと親しい人物(兵務局長ハンマーシュタイン(Hammerstein)など)で固め、自身は官房局(…

『The Nemesis of Power』Sir John Wheeler-bennett その2(2/4) ――ヒトラーに制圧されたドイツ軍

2 ゼークトの時代 共和国軍(Reichswehr)の創設……共和国の存立基盤であり、政治から超然とし、いかなる党派にも属さない軍。 フォン・ゼークトは将軍の子として生まれ、陸軍の中で異例の速さで昇任し参謀本部要員となった。第1次大戦では主に東部戦線で活…

『The Nemesis of Power』Sir John Wheeler-bennett その1(1/4) ――ヒトラーに制圧されたドイツ軍

ドイツ国防軍がヒトラーをあなどり、やがて掌握されていく様子を時系列で詳しく書いた本。 著者であるイギリス人ウィーラー・ベネットは、20年代から30年代までドイツで政治研究を行っていた。 非常に生まれが良いため(ケント州のアッパーミドル出身)…

『餓死(うえじに)した英霊たち』藤原彰 その2 ――日本軍の餓死に関する概説書

7 中国戦線の栄養失調症 敗戦までの2年間は、中国戦線でも餓死・戦病死が戦死を上回った。 ――某病院で数名の栄養失調症患者が臥床していたところ、食餌として与えられた一椀の粥を隣の患者より奪わんとし、仮眠中を利し絞殺しようと喉をしめかけたところ、…

『餓死(うえじに)した英霊たち』藤原彰 その1 ――日本軍の餓死に関する概説書

アジア太平洋戦争の死者310万人のうち軍人は230万人、この過半数が餓死である。また、これは全戦場で起きた現象である。 本書は大量餓死をもたらした日本軍の責任と特質を明らかにする。 著者は陸軍士官学校卒業後中国戦線に派遣され、戦後歴史学者と…