うちゅうてきなとりで

The Cosmological Fort 無職戦闘員による本メモ、創作、外国語の勉強その他

2022-01-01から1年間の記事一覧

最近、観ているもの

◆子供と貧乏 DVDで持っている「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」をDisney+で観直しました。 「泥の河」もそうですが、貧しい環境の中で生きる子供の話に弱くなりました。 貧しさがテーマではないですが、田舎の村が舞台ということで「二十四の…

死亡率から考えている ~アメリカの白人中年男性の死亡率が高いそうです

◆絶望死 『絶望死のアメリカ』(みすず書房)は、英国出身の経済学者アンガス・ディートンと、アメリカ人経済学者アン・ケースが書いた本である。 アメリカ疾病対策予防センター(CDC)から取得した死亡率に関するデータを参考に、アメリカの高卒白人中年男…

『44 Months in Jasenovac』Egon Berger ―― クロアチアの絶滅収容所に関する記録

◆ヤセノヴァツとは 著者のBergerはクロアチアのユダヤ人で、ヤセノヴァツ収容所の数少ない生き残りである。 ja.wikipedia.org 第2次世界大戦中、ドイツはクロアチアに傀儡国家「クロアチア独立国」を作った。クロアチア独立国を運営したのは、ナチスと友好関…

海のサバイバルと、ヘブライ語、関西旅行計画

◆海で生き延びる ダイビングライセンスをとったので、月1回のペースでダイビングをしようと思い、一通り器材を買いました。 あわせて、事故防止・危険生物対策のため、参考書を買いました。 昔から危険な生き物、毒々しい生き物(動物、植物、虫、魚、菌類、…

『歌舞伎の歴史』今尾哲也 ――傾奇者、アウトローたちの話

◆所感 歌舞伎とはなにかについて解説する本。 歌舞伎の成り立ちや、時代ごとに生まれたテーマや題材、著名な作家の代表作や役者について知ることができる。 ただし、各作品の細かいあらすじは、なかなか追うのが大変である。 明治以降も、ヨーロッパ演劇の要…

オープンウォーターダイバーライセンスをとった

◆ダイビング 18mまで潜れるオープンウォーターダイビングライセンスを取ってきました。 中性浮力のコントロールや水中生物(ミノカサゴ、ウツボ、フグ、オコゼなど)を体験するのがとても楽しかったので、洞窟に潜れるようになるまでダイビングをやることに…

『江戸時代の罪と罰』氏家幹人 ――治安があまりよくない

江戸時代の犯罪と刑罰について包括的に書かれた本。著者は江戸期の犯罪や、人斬り、敵討ちといったテーマを専門に研究している。 ◆所感 特に興味深いのは、江戸初期における武士たちの振る舞いである。かれらは試し切りや辻斬りなどで身分の低い者を虫けらの…

読みかけの『釜ヶ崎の福音』(本田哲郎)と、デトロイトのニーバー

◆路上の伝説 『釜ヶ崎の福音』において、フランシスコ会の神父が釜ヶ崎(大阪市西成区)で活動するきっかけを説明した部分が非常におもしろい。 釜ケ崎と福音――神は貧しく小さくされた者と共に (岩波現代文庫) 作者:本田 哲郎 岩波書店 Amazon ・著者は1942…

非信徒が読むキリスト教の本

◆キリスト教関連 買おうとおもっていたドイツの神学者ユルゲン・モルトマンの日本語訳を買った。 モルトマンは20世紀後半から活動している人物で、プロテスタントの世界では有名のようである。 ja.wikipedia.org 希望の倫理 作者:ユルゲン・モルトマン 新教…

豚あるいは豚

◆豚の歴史 とある本を読んでいて、戦後のある時期、文部省を主導していたのが歴史学者平泉澄の門下生、という記載があった。 平泉澄は戦前に力を持っていた皇国史観の歴史学者で、日本会議前身団体の立ち上げにも関わっている。 ja.wikipedia.org 中村が東京…

『思想検事』萩野富士夫 ――人間の思考をとりしまる国/特高と思想検事の連携

◆所感 特高警察とともに思想弾圧を担った思想検事について、当時の行政文書や、検事・思想犯らの回顧資料を用いて概説する。 法の拡大解釈による様々な思想の弾圧は、特高と検察が連携することにより達成された。 さらに検察は戦後の人権指令や公職追放をす…

石垣島とその周辺に行ってきた

◆島 石垣島、西表島、竹富島にいってきました。 先週は雨続きだったそうですが、今週は天気がよく観光を満喫することができました。 ダイビングを体験したのは、自〇隊那覇基地で働いていたとき以来ですが、今回久しぶりにやってとても面白かったので、ライ…

働くことと『人間の条件』、ヘンリー・ミラー、読書の実益

◆働きたくないおじさん 働きたくない、なるべく自分の時間を増やして過ごしたい私のようなニート気質の人間にとっては、「働くこと」は重大な問題である。 最近読み始めたハンナ・アーレント『人間の条件』(The Human Condition)は、働くことの意味や位置…

『いじめの構造』内藤朝雄 ――閉鎖空間からの脱出

◆所見 いじめの性質やいじめを生む構造を提示するだけでなく、そうした閉鎖集団が社会の基礎部分に蔓延する状況を、中間集団全体主義社会として提示している。 学校や職場で生じる醜い状況をほぼ正確に分析しており、解決策も説得力のあるものである。 この…

『帝国以後』エマニュエル・トッド ――2003年当時のロシア認識

著者の2003年時点での認識は2点である。 ・アメリカの力の低下 ・ロシアの協調 9.11以後、アメリカは求心力を低下させた。イラク戦争における仏独、トルコの不服従はその証拠である。 根本的原因は、アメリカが対外政策のための経済的・財政的手段をもはや持…

政教分離について調べた

◆ライシテ 最近、フランス現代史にかんしていくつか本を読んだのをきっかけに、フランスの政教分離(ライシテ)について興味を持ちました。 ・フランスは歴史的経緯により、国家・公的空間から宗教を排除する。 ・あらゆる宗教の平等を認め、信仰の自由を尊…

『日本海軍の戦略発想』千早正隆 ――「アメリカには、物量だけでなく、組織力・精神力でも負けた」

著者は終戦時、連合艦隊司令部で作戦幕僚を務めていた。その後責任をとるために自殺しようと考えたが司令長官の訓示で思いとどまった。 米海軍の要請により、日本海軍の戦術について回答するために作られた史料編纂部署に配属され、日本海軍の作戦を検討する…

『量子コンピュータとは何か』ジョージ・ジョンソン ――量子コンピュータに関する基礎知識

◆メモ 量子コンピュータの仕組みを、専門外の人間にもわかるように解説した本。原理から、その応用、発展が期待できる分野までを紹介する。 ハードウェアの実現には、本書の時点ではまだ時間がかかるとされている。しかし2010年代には、NSAやIBM、中国などが…

最近の本と、今年の活動

◆ロシア、歴史、その他 今読んでいるTimothy Snyderの"Road to Unfreedom"は、プーチンの思想的基盤となっているキリスト教ファシズム思想家イワン・イリインについて解説している。イリインの思想や、本書におけるロシアの未来予測は、現在のウクライナ侵攻…

陣中日誌は読むのが大変 ――『ある軍法務官の日記』と、『アフガンペーパーズ』抜粋

◆軍法務官 『ある軍法務官の日記』は、日本軍で法務官を務めた小川関治郎氏が、南京攻略中に書いた陣中日誌を書籍化したもの。 漢字カタカナで書かれているが慣れればおもしろい。 法務官は、軍法会議を担当する文官(1942年から武官)であり、軍の中では一…

ドイツ文学系の本を買った ――ユンガー、トラークル

◆文字と言葉そのものについて考える 文字を通して知識を身につけるのではなく、文字自体に注目することも大切だとおもった。 トラークル全集 新・新装版 作者:ゲオルグ・トラークル 青土社 Amazon エウメスヴィル ーーあるアナークの手記 (叢書・エクリチュ…

『アフガニスタン・ペーパーズ』を読みながら ~嘘つきを嘘つきと指さすことが大事

◆アフガン戦争は最初から失敗していた ワシントン・ポストが、米政府にもみ消された内部調査資料をもとに出版した『アフガニスタン・ペーパーズ』を読んでいる。 2001年以降、ブッシュ政権、オバマ政権が一貫してアフガニスタン戦争について国民を騙していた…

『日本陸軍と中国』戸部良一 ――陸軍の中国通が見落としていた要素

◆メモ 陸軍は1870年代から中国情報の収集を続けてきたが最終的に判断を誤った。また現地の将校たちは軍閥に操られ、国民党や中国人民に対して一方的な思い入れを抱くことが多く、最終的に自分たちが帝国主義的対象として排除されることを正しく認識でき…

司法関係の仕事にかんする本――検事、弁護士、裁判官、刑務官

『検事失格』という検事の回想録を読んでいますが、非常に忙しくまた組織的な問題の多い仕事という印象がよくわかり面白いです。 ・なぜ検察は無罪を出したくないのか →担当者が延々と詰められる ・なぜいったん起訴したら、間違っていたとわかっても起訴を…

『心でっかちな日本人』山岸俊男 ――なんでも「心」や「文化」のせいにしない

◆所見 社会心理学の観点から、日本文化を分析する本。 わたしたちは行為の原因をただ「心」に見出すことで、その背後にある因果関係を見落としがちである。一見、行為が心や人格から生じているようにみえて、そこには社会的な環境や他人の行動が深く影響を及…

2021年から2022年 おもしろかった本と、今年の目標

◆おもしろかった本 ・『The History of the Peloponnesian War』Thucydides トゥキュディデス『ペロポネソス戦争』、この時代の戦争や社会がどのような様子だったかがわかりおもしろい。 21世紀に書かれた歴史の本でも、退屈で読むに堪えないものが多数ある…