◆軍法務官
『ある軍法務官の日記』は、日本軍で法務官を務めた小川関治郎氏が、南京攻略中に書いた陣中日誌を書籍化したもの。
漢字カタカナで書かれているが慣れればおもしろい。
法務官は、軍法会議を担当する文官(1942年から武官)であり、軍の中では一等下に見られていた。
軍法会議でも、軍人や現地指揮官の意向で判決が捻じ曲げられることが多かったという。
本書では、第十軍(柳川兵団)が杭州湾から上陸し、現地で様々な不法行為を働くさまをそのまま記載している。
司令官の柳川平助自身は、不法行為がないようにと注意喚起を発しており、掠奪や殺戮が国際問題に発展しかねないことを認識していたようである。
法務部長は略奪暴行の多く起こらざるよう心配しおると、よって自分は全く無益の殺生は厳禁せざるべからず 結局人道に反せざるよう特に注意の必要ある旨上申す
◆アフガン・ペーパーズ
ダメな戦争の姿はどれも似通ってくるようだ。
アフガン戦争が始まって5年以上たち、ホワイトハウスは戦争目的や理由を検討していた。
現地の特殊部隊指揮官は、兵たちの質問、「我々は何のためにアフガンにいるんですか?」、「我々の敵はだれですか?」に、最後まではっきり回答できなかった。
特に印象的なのが軍・政府首脳において、「戦争目的が定まっていない」と繰り返される点である。戦争をしながら「戦争目的を明確にしなければならない」とは異様である。
この本を読んでいたときはなんとアホな、と思ったが、その後『Obama's Wars』を読んで、オバマ大統領が長期化したアフガン戦争について全く同じ趣旨の発言をしているのを発見した。
――戦争が始まって8年たち、かれらは何が核心的な目的なのかを定めようと奮闘していた。
◆人様の金はどう使っても気にならない
「軍はようやっとる」、税金の使われ方を意識しないチョロい国民の下で、米軍・国務省もすさまじいアフガン復興予算の使い方をしている。
アメリカ政府が一貫して認めようとしなかったが、実際にはアフガン戦争は国家建設(Nation Building)だった。政府は軍・国務省に対し、莫大な税金を投入してアフガン国家建設を行うよう支持を出した。
この膨大な金は、大部分が契約業者や現地有力者の中抜きで失われ、ほぼ何も達成しなかった。・だれも使わない高速道路がつくられた
・老朽化したダムを修復するために巨額が投じられた。しかしダム周辺はタリバン支配地域でありアフガン人は近寄らず維持は不可能だった。
・学校卒業者のための仕事がほとんどない国で学校建設が進められた。
・子供が家から出るのさえ危険な地域に、無数の学校がつくられ、その一部はタリバンの爆弾製造工場となった。
・ガラス張りのきれいな警察署がつくられたが、アフガン人の署長はドアの開け方もわからなかった。
・米国委託業者による工業団地建設の監査をおこなったある将校は、工業団地ではなく単なる荒廃した空き地を発見した。
・排水溝掃除に高給を払っていたところ、地域の学校教師が皆排水溝掃除業に転職し、教育崩壊が起こった。
・CERP(Commander's Emergency Response Program)は、旅団レベルの指揮官がインフラ整備のために使える予算である。このCERP予算を使うよう指示を受けて、現地指揮官たちはイラク戦争で使われた書類のコピペを提出し、アフガン人たちに金を手渡した。そして、ほとんど何も建設されなかった。