◆絶望死
『絶望死のアメリカ』(みすず書房)は、英国出身の経済学者アンガス・ディートンと、アメリカ人経済学者アン・ケースが書いた本である。
アメリカ疾病対策予防センター(CDC)から取得した死亡率に関するデータを参考に、アメリカの高卒白人中年男性が、他国や、他人種・他民族とは異なる動きを示していることを明らかにする。
すなわち、学士号を持たないアメリカ白人中年男性は、2000年代以降、他の層とは異なり死亡率が上昇しているというのである。その死因は、絶望死(自殺、薬物中毒、アルコール中毒)である。
本書はデータを中心に、なぜこのような現象が起きているかを考える本である。
原因は複合的だが、根本は社会環境(資本主義、能力主義、医療制度、資本側の優位)に何か失敗が発生していることが考えられるという。
ここで語る絶望死、痛みや中毒、アルコール、自殺による死、低賃金のろくでもない仕事、下がり続ける婚姻率、宗教の減退の物語は、主に4年制大学の学位を持たない非ヒスパニック白人アメリカ人に当てはまる物語だ。
西海岸、アパラチア、南部、メイン州、ミシガン北部がひどく、大平原北部と北東部のアムトラック沿線、カリフォルニアのベイエリアはさほどでもない。ここでもやはり、住民の学歴が高い地域ほど痛みの報告は少ない傾向がある。……地域の中で2016年にドナルド・トランプに投票した人びとの割合も、痛みを感じる割合と強い相関がある。
最も自殺率の高い州はモンタナ、アラスカ、ワイオミング、ニューメキシコ、アイダホ、ユタ州である。
一般に、周りに住んでいる人が少なく、銃所持率が多い州ほど自殺が多い。
◆人が読んでいた本
普段、実生活で本の話をすることはほとんどないが、久々に友人と本の話をして、話題に出たものを買った。
無職戦闘員たるもの、労働のことだけ考えていると、それしか脳みそに入らなくなって、わたしの中では昆虫人間になった気分になる。
自分の一生に責任を負っているのは自分である。
◆都合の悪い外国工作機関
ベリングキャットは、オープンソースやインターネットを使い調査報道を行う組織である。
サイバーセキュリティの世界では割とよく目にするが、日本語の概説本があったので買った。
最近、ロシアからは「外国工作機関」認定されて排除されていた。