うちゅうてきなとりで

The Cosmological Fort 無職戦闘員による本メモ、創作、外国語の勉強その他

2019-01-01から1年間の記事一覧

『不死身のKGB』ゲヴォルキャン その2 ――秘密警察に支配された国

3 保護も権利もなく ――チェキストは子供のおもちゃなどに関心がないかもしれない。だが彼らはこの国の人間の生命と運命を、どんなときでもつねにおもちゃにしてきた。 ソ連公安機関最大の任務は、体制維持のための内部の敵破壊である。 ――要するにKGBと…

『不死身のKGB』ゲヴォルキャン その1 ――秘密警察に支配された国

エリツィン政権時代に書かれたKGBとその未来に関する本。 著者はモスクワの新聞社「モスコーフスキエ・ノーヴォスチ」に所属するジャーナリストであり、ロシアが変わるとしてもKGBとその体質は残るだろうと予言する。 特にソ連崩壊前後のKGBをめぐ…

ゴミゲーム統合プロジェクト

◆自作のガラクタを統合する 本ブログは読書感想文のほかに、作者の制作物も公開していました。 最近はUnityその他のフリーソフトを使ってゲームを作っており、以下はそのリンクです。 今後は、創作物カテゴリーについては、ゲーム関連を除いた純粋制作物(ポ…

ミニキーボードを買った

◆iPhone用Bluetoothキーボード 家の外などでメモや日記を書く際に、iPhoneで入力するのがこれまで不便だったので、キーボードを買った。 サイズはiPhoneSEより少し大きい程度である。少し使ってみたところ非常によかった。 iClever 折りたたみ式Bluetoothキ…

米陸軍の情報教程、またOSINT

◆眠くなる本 参考のために米陸軍の情報教程を読んでいるが、非常に退屈である。 原理原則をまず覚えさせるべきという方針は読み取れるが、無味乾燥とした定義が続くので飛ばし読みになる。 教程が退屈なのは古今東西の軍の宿命なのだろうか。 なるほど、こう…

『細菌戦争の世紀』トム・マンゴールド その2 ――生物兵器開発と使用の実際

13 ソ連の重要施設……ベルズク、ポクロフ、オムトニンスク、ステフノゴルスク 米英のソ連施設査察と、その妨害について。 米英視察団に対する、ソ連側からの一連の妨害は、亡命科学者ケン・アリベックの『生物兵器』に、ちょうど相手の立場から書かれている…

『細菌戦争の世紀』トム・マンゴールド その1 ――生物兵器開発と使用の実際

◆メモ BBCのドキュメンタリー記者らが書いた生物兵器開発についての本。 特に米ソの軍備管理問題、南アフリカにおける生物兵器使用、イラク・北朝鮮・テロ組織による生物兵器利用について、非常に詳しく知ることができる。 ・生物兵器:核兵器に比べはる…

スノーデンの新著『Permanent Record』について

スノーデンの回顧録『Permanent Record』が9月17日発売された。 わたしはAmazonで予約したので、到着次第読もうと考えている。 Permanent Record (English Edition) 作者: Edward Snowden 出版社/メーカー: Macmillan 発売日: 2019/09/17 メディア:…

『Love Thy Neighbor』Peter Maass その2 ――隣人たちが殺し合うボスニアの様子

・若者たちはスルプスカ共和国軍に徴兵される。ここはアメリカではないので、かれらに逃げ道はほぼ残されていない。 ・バニャ・ルカに滞在しながら、著者は、目の前で虐殺と追放が進みながら国際社会が黙殺しているさまを痛感した。 ・当局はモスクを破壊し…

『Love Thy Neighbor』Peter Maass その1 ――隣人たちが殺し合うボスニアの様子

ボスニア戦争の初期に取材した報道記者による報告。 現場で見聞きしたエピソードを通して、戦争によって現れる人間の本性を探る。有名な残虐行為や、後に実際に訴追された戦犯の話題もある。 ◆所見 この現地報告は、サラエボやボスニア各地またクロアチアの…

「心」についての感想

◆心をきたえる 山岸俊男著『「日本人」という、うそ』を読んでいたところ、同じく進行中のラインホルド・ニーバー『道徳的人間と非道徳的社会』と、重複する主張があった。 「日本人」という、うそ: 武士道精神は日本を復活させるか (ちくま文庫) 作者: 山岸…

ブログの「図書案内」を修正中、また女工の話

◆『図書案内』修正中 重すぎて閲覧困難になっていた「図書案内」を改修している。 現在、「戦争と軍」、「日本の歴史」について、リンク形式を変えることで読み込み可能な形に変更している。 ◆ブラック企業 『日本残酷物語5』を読んでいる。 主題は、明治以…

『沖縄決戦』八原博通 その2 ――沖縄戦担当者の回想

◆所感 自殺? 自決? 戦況悪化につれて八原が仕える参謀長・指揮官は自暴自棄になっていき、最終的に自殺する。 米軍の降伏勧告を無視した後、死ぬまで戦えの命令を出して一足先に自殺するというこの状況を受けて、わたしは責任放棄としか感じない。良い悪い…

『沖縄決戦』八原博通 その1 ――沖縄戦担当者の回想

沖縄戦を担当した第三十二軍の高級参謀による回顧録。 ◆メモ1 ・わかりやすい状況説明と冷静な情勢分析が特徴である。 アメリカにおいて、沖縄戦に関する著作の1つとしてロングセラーとなっているのも納得がいく。 ※ 他に米Amazonでレビュー数が多いのは海…

ラインホルド・ニーバーを読んでいる

いま読んでいるニーバーまとめ本から印象に残った箇所をあげていきたい。 ニーバーは聖職者・神学者だが、現時点では、現実社会のなかで何をするべきなのかを非常に冷静に考えている人物という感想を持った。 なぜ社会の不正義はなくならないのか、また、な…

『The Rise and Fall of the Great Powers』Paul Kennedy その3 ――経済力と軍事力の関係

・同盟と戦争への漂流1899~1914 ビスマルクは、列強に囲まれたドイツが孤立するのを、複雑な同盟関係により予防した。日露戦争の時代には、植民地をめぐる英仏の対立は収束し、かわって、ドイツに対する警戒心が強まった。 英独は建艦競争を巡り対…

『The Rise and Fall of the Great Powers』Paul Kennedy その2 ――経済力と軍事力の関係

3 金融、地政学、そして戦争の勝者1660~1815 17世紀からナポレオン戦争までの特徴……ヨーロッパの多極性の完成、超国家的・宗教的理由から「国益」重視へ。 ・フランスは台頭するが、周辺国に阻止される。 ・イギリス、ロシアの勃興 ・傭兵から常…

『The Rise and Fall of the Great Powers』Paul Kennedy その1 ――経済力と軍事力の関係

『大国の興亡』を読んだ。 近代以降の大国の興亡を、戦略(軍事)と経済の観点からたどり、考察する。歴史を通して、いかに戦費を調達するかが、国家の至上課題だったようだ。 大国(Great Powers, Major Powers)の興亡は、本書の書かれた時点(冷戦末期)…

ニーバーを読み始めた

◆シリア関連本 シリア内戦に関する本を2つ読んだ。どちらも現地報告であり、アサド時代の秘密警察支配や、デモ鎮圧と過激化、国外勢力の流入などを記録している。 確認したところWendy Pearlmanの本は日本語訳があるようだが恐ろしく高額である。 We Crosse…

お墓参り

お盆の期間中は無職戦闘員らしく自宅で大人しくしていた。 今年は、運よくまだハリケーンがきていないので、あまりひきこもりすぎないように近所を散歩した。 ◆マキキ墓地 ホノルル・マキキ地区にある日系人墓地であり、日系移民の慰霊碑や、日本海軍軍人の…

『江戸の刑罰』石井良助 その2 ――残酷すぎる江戸の牢屋

財産刑……闕所(財産没収)、過料(罰金) 身分系……奴、非人手下(ひにんてか)、一宗構、一派構 ・奴は女性にだけ適用された奴隷のようなものである。 ・心中に失敗したものは非人手下の刑となり、非人身分に落とされた。 ・一宗構、一派構は僧侶の閏刑で、…

『江戸の刑罰』石井良助 その1 ――残酷すぎる江戸の牢屋

江戸時代の訴追の流れ、刑罰、牢獄の様子、人足寄場などを説明する。 実際の事件や記録を紹介しながら江戸の刑法制度を理解することができ、非常に面白い。 戦国時代の影響が強く残る江戸前期には、刑罰は一般予防主義(見せしめ、威嚇主義、見懲主義)色彩…

南から北 その7 アーリントン、フレデリックスバーグ、海兵隊国立博物館(ヴァージニア州)

◆リッチモンドを出る リッチモンドの街並み ホロコースト博物館を出発し、市内を走行し、宿泊地のアーリントンに向かった。 古い家やビルが残っており、ヴァージニア・コモンウェルス大学(VCU)の施設が広がる地区は学生でにぎわっていた。 リッチモンド リ…

『陸軍特攻振武寮』林えいだい ――パワハラを受け続けた特攻隊員

生きて還ってきた陸軍特攻隊員を隔離収容し、精神攻撃を加える施設「振武寮」に関する本。 ◆所感 敗戦が近づくにつれて、陳腐化し、単なる消耗品化していった特攻隊員たちの体験に焦点を当てる。 巷で有名な倉澤少佐の振る舞いが具体的に書かれている。 著者…

王様とその手下

◆感想――ブッシュ政権に関する本を読んで 司法や行政から反対が出るにも関わらず強引な法解釈を行う、行政府の権限を際限なく拡大していく、多くの活動や意思決定手続きを非公開にし、国民の眼から隠してしまう……こういった手法は似非民主主義国における権力…

『キメラ―満州国の肖像』山室信一 その2 ――国民の存在しない国

3 道義立国 1932.3.1 満州国建国宣言 リットン調査団到着以前に建国宣言したことで、日本は中国との対立を深め、国際的に孤立していった。 陸軍は満洲国の正統性を強化するため溥儀を利用した。もともと、宣統帝と陸軍とのつながりは深かった。 溥…

『キメラ―満州国の肖像』山室信一 その1 ――国民の存在しない国

――満州国は今後も世界史の中に残り続けるだろう。日本人が、この歴史をなかったことにすることは不可能である。 キメラ:満州国は、日本の傀儡国家であると同時に、一部の人びとにとっては理想の地でもあった。本書はこの両面について検討する。 文体は仰々…

『屍鬼二十五話』ソーマデーヴァ ――インドの怪奇枠物語

ソーマデーヴァは11世紀カシミールの作家である。紀元前3世紀ころつくられたグナーディヤによる伝奇集『ブリハット・カター』を元に、枠物語『カター・サリット・サーガラ』を制作した。その中の一部がこの『屍鬼二十五話』である。 『屍鬼二十五話』は、…

友達料

ロバート・ゲーツ国防長官の回想録からのメモ。 アメリカ合衆国はどのような姿勢で外交を行っているのだろうか。日本とはまた異なるようだ。 ◆別荘に招待 プーチンにとって外交や交渉は、自分のための演出の場でしかなかった。 ゲーツとコンドリーザ・ライス…

最大の復讐は敵と同類にならないことである

◆おぞましい皆既日食 タイトルはマルクス・アウレリウス『自省録』からの引用である。 “The best revenge is not to be like your enemy."― Marcus Aurelius, Meditations https://www.goodreads.com/quotes/428368-the-best-revenge-is-not-to-be-like-your…