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ソ連の重要施設……ベルズク、ポクロフ、オムトニンスク、ステフノゴルスク
米英のソ連施設査察と、その妨害について。
米英視察団に対する、ソ連側からの一連の妨害は、亡命科学者ケン・アリベックの『生物兵器』に、ちょうど相手の立場から書かれている。
・長たらしい無駄なスピーチ、的を外した説明。
・見られてはまずい部屋に入ると、電気を消し停電だと言い張る。
・小型懐中電灯をスパイ道具と決めつけ、つかみあいになる。
――ソ連の科学者たちは、それがただの懐中電灯で、007の映画に出てくるQが作ったものではないことを、ようやく納得した。
・爆発実験の跡は、兵器開発の有力な証拠となる。
――「ドアのあちこちにあるへこみはなんですか?」……ふたたび、モンティ・パイソンなみの喜劇の時間となった。「えー……ドアを取り付けるときに、作業員がトンカチでたたいてしまったんです」
・生物兵器開発の兆候:
過度の生物製剤製造能力、エアロゾルおよび爆発実験室、BL4研究室(最高厳重警戒度の密閉施設)、大型霊長類を使っての研究、異様に厳しい安全予防対策、民間施設と連結した軍事施設。
・宿泊先の豪華なスイートルームでは荷物を物色された。
・なぜ天然痘ウイルスのクローンをつくる必要があるのか? との質問に対し、
――……温暖化現象が進んで、シベリアの永久凍土が融け、第2次世界大戦前に天然痘が流行したときに死亡した人びとの墓が露出する危険性があるからだという。……査察団は、テレビドラマ「Xファイル」なみの想定を聞いて仰天した。
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生物兵器管理交渉を進める枠組みとして米英ソの三国協議が進められていたが、ゴルバチョフが失脚し事態は暗礁に乗り上げた。
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担当キム・ブロンソンを中心に、ソ連の査察団受け入れが行われた。
米英側はやましいところがなかったため、誠意をもって対応したつもりだったが、ソ連はあら捜しに終始し、また自国の国防相にマイナス情報を伝えようとしていた。
――……全行程でもっとも滑稽だったのは、ジュコフ大佐が、かれの完全主義の性格と、はしご登りの技術を見せびらかしたときだろう。バスで施設内をみてまわっているとき、かれは、高い給水塔のそばで、運転手にバスを停めるように頼んだ。ジュコフひとりがバスを降りて、給水塔のはしごを登りはじめた。他のソ連人は、かれが頂上まで登るのを見ながら、くすくす笑い、写真をとったりしていた。かれがようやくバスに戻ってきたとき、だれかが、上になにがあったのかと尋ねた。「水」ジュコフがぴしゃりといった。
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エリツィンは生物兵器開発の真相を明らかにするとブッシュ、メージャーに明言した。
しかし、軍縮問題担当者になったのは、生物・化学兵器開発の権威であるクンセヴィッチ将軍とエウスチグニェーエフ将軍だった。
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三国協議の行き詰まり、ソ連の勝ち逃げ。
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バイオプレパラートの最高責任者アリベコフの亡命について。
かれは、アメリカ側の査察の際に、自分が自国に騙されていたことを知ったのだった。
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クリトン政権下で再度ソ連施設の査察がおこなわれたが、施設は休止しているだけのようだった。
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ソ連側が再度査察にやってきたとき、ファイザー社の施設を執拗に見たがったが、企業秘密保護の問題から拒否せざるを得なかった。
ソ連は、明白な生物兵器開発の証拠を見つけたとして、アメリカを非難した。こうして軍備管理協議は決裂した。
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交渉の頓挫とともに、状況も変わった。
西側は、ソ連の科学者や技術者が「ならず者国家」に亡命し、生物兵器技術が拡散するのを危惧していた。
このため、ソ連に対し保全の強化を呼びかけた。こうして、西側がソ連の開発状況を察知する機会も減った。
ロシアにおける生物戦担当者たち……国防相高官、バイオプレパラート高官のメンバーは変わっていない。
ウイルスで敵を攻撃する計画を進め、条約に違反し開発実験を進めてきた人物たちがいまも第一線で活躍している。
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南アフリカ軍はローデシア紛争に介入し、黒人活動家や反政府軍に対して生物兵器を使用した疑いがある。
イギリスの科学者が、南部アフリカにおける炭疽菌の異常な流行に注目した。
――ローデシアで炭疽菌、コレラ菌、タリウムが使用された事件は、広島の原爆のように人目をひくものではないために、はっきりと歴史に記録されてはいない。だが、このみにくい戦争で、それよりはるかに邪悪なことが起きていたのだ。
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南アフリカ共和国の特殊部隊や、ローデシアの特殊部隊員たちは、政敵の暗殺に生物兵器を利用した。
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南アフリカ共和国軍医、准将ワウター・バスンは、世界各国で生物兵器の資料や材料を入手し、その運用作戦である「プロジェクト・コースト」を指示した第一人者である。
かれは軍医であると同時に特殊部隊の訓練も受けており、黒人や反アパルトヘイト運動家に生物兵器を使用することを躊躇しなかった。
プロジェクト・コーストでは、黒人の人口抑制剤の人体実験もおこなわれた。
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マンデラ大統領は真実和解委員会を設置し、アパルトヘイト時代の報復を行わず、真相を明らかにすることに取り組んだ。
・生物兵器攻撃を実行した特殊部隊員たち、前科者たち。
・アフリカを基盤にした白人至上主義者・極右たち……「ダイ・オーガニサシー」。
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プロジェクト・コーストで開発された、多種多様な暗殺兵器について。
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ワウター・バスン博士は訴追されることなく第二の人生を謳歌した。かれは一時リビアのカダフィ政権下で衛生保健施設の運営を補佐したため、生物兵器技術の供与を疑われた。
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イギリスの会社、ポートンダウン生物研究所のOB、イギリス在住のアフリカ出身白人たちが、南アフリカ国防軍SADFの戦争犯罪に関与していた可能性が高い。
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イラクのサダム・フセインは1980年代にサルマンパクの秘密研究センターで生物兵器開発を開始していた。仮想敵国はイランとイスラエルだったようだ。
また、アルムタンナの化学兵器工場のそばに生物兵器研究施設を建設した。
湾岸戦争時、イラクが生物兵器を使用した場合の想定に、多国籍軍は悩まされた。
UNSCOMは、イラクの大量破壊兵器査察をめぐって交渉を続けた。イラクは妨害をおこなったが、徐々に成果は出つつあったという。
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米軍はグローバル95という朝鮮半島有事における生物兵器演習をおこなったが、結果が壊滅的だったため秘密扱いとなった。
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オウム真理教は、化学兵器開発と並行して、炭疽菌の開発に取り組んでいた。これはうまくいかなかったものの、地下鉄サリン事件はBC兵器担当者や各国の治安機関、軍に衝撃を与えた。
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ニューヨーク、ロンドンでは、生物テロが発生した際の準備に取り組んでいるが、検知、ワクチン配布、隔離、治療等、すべての分野において対応は不十分であり、甚大な被害が想定される。
大都市を舞台にした演習はすべて悲惨な結果となったため、非公表となった。
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特定の人種に作用するエスニック爆弾について。
遺伝子技術の発達により、たとえばアラブ人にだけ、黒人にだけ作用する生物兵器が生まれるだろう。
- 作者: トムマンゴールド,ジェフゴールドバーグ,Tom Mangold,Jeff Goldberg,上野元美
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