◆感想――ブッシュ政権に関する本を読んで
司法や行政から反対が出るにも関わらず強引な法解釈を行う、行政府の権限を際限なく拡大していく、多くの活動や意思決定手続きを非公開にし、国民の眼から隠してしまう……こういった手法は似非民主主義国における権力者の常とう手段である。
このような政治家に加担する小狡い官僚・公務員たちには倫理が欠落している。
策謀家チェイニー 副大統領が創った「ブッシュのアメリカ」 (朝日選書)
- 作者: バートン・ゲルマン,加藤祐子
- 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
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◆ブッシュ政権時代の大規模国内監視
スノーデンの内部告発によって問題になる国内大規模監視は、ブッシュ政権時代に開始された。しかし、当時から官庁ではその合法性が問題になっていた。
チェイニー副大統領は自分の目的に都合の良い顧問弁護士らを登用し、令状なしのアメリカ国民監視(通信メタデータ傍受等)を実行した。
司法省の反対を無視して、違法な監視活動が行われていることに対し、ジェームズ・コーミー司法副長官やロバート・ムラーFBI長官その他司法省首脳部は、一斉辞職を計画した。
司法長官ジョン・アシュクロフトはブッシュ政権当時からの閣僚であり、1期目はブッシュ政権を全面支援していたが、FISA(外国情報監視法)を無視した、令状なしの違法な監視を続けるチェイニーとそのスタッフたちに激怒していた。
コーミーとムラーは、大統領と直接面会したときに問題を伝えている。
ムラーは当時からボーイスカウト・海兵隊出身の頑固な人物として知られていた。
一方、チェイニーに与して法をねじまげようとしたのが、目端の利く官僚タイプであるNSA長官マイケル・ヘイデンである。
ムラーはブッシュ大統領に対し次のように言った。
――これは法の支配の問題なんです。そして、その答えは司法省にある。ムラーは大統領にそう告げた。司法省が刑法違反だと断定する作戦に、FBIは参加できない。参加しろと命令されるなら、自分は謹んで辞めましょう。
ジェームズ・コーミー、ロバート・ムラーともに、トランプ政権のロシア疑惑捜査を担当した人物である。
かれらはブッシュ政権時代から、行政府の暴走に歯止めをかけようと努めていた。
A Higher Loyalty: Truth, Lies, and Leadership
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◆出口がない
イラクとアフガニスタンから抜け出せなくなった米軍について、元国防長官ゲーツの本を読んでいて感じたは以下のとおり。
いったん起こした戦争からは簡単に抜け出せない。もしイラクやアフガンから即時撤退すれば、テロリストの勢力は攻撃前より大きくなる。そして(アメリカの)敵国イランの影響力も増大する。
中国やアメリカを侵略した日本が、戦争から逃げられなくなったのと同じである。
いったん攻撃を行えば、程々のところでやめよう、という都合のいい選択は不可能である。
Duty: Memoirs of a Secretary at War (English Edition)
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◆官製ヘイト、あれこれ
日本に帰ったら嫌というほど人種差別発言を聞かされるに違いないのでいまから憂鬱である。
敵意を煽れば支持率やビュー数が稼げるのではないか。
いまは、運よく白人がマイノリティの州にいるためそこまでひどい差別発言は聞かないが。
逆に白人の子供がネイティブハワイアンにいじめられる話はよく聞く。
子供の世界はどこでもいじめがあるので、フィットネス・ジムや道場には大抵「いじめ対策」教室・講習がある。いじめや差別の間違いを訴える前に、まず自分が生き延びなければならないからである。
富裕層の中国人の子たちがコンドミニアムの植え込みやプールを便所替わりに使うということで嫌われる話を住民から聞いた。こうしたマナー面での苦言は、現実に根差しており、まだ納得のいくものである。生活習慣や風習の違いが不和を起こすのは当たり前のことで、それをどう乗り越えるかが問題である。
人を人種や職業、宗教だけで判断しない人間になるように心がけたい。
滞在中の国の悪い部分を持ち帰らないようにしたい。
聖書の都合の良い文言だけを抜き取る非キリスト教徒の引用:
――学者とパリサイ人とはモーセの座をしむ。さればすべてその言うところは守りて行え、されどそのしわざにはならうな、かれらは言うのみにて行わぬなり。
――すべてそのしわざは人に見られんためにするなり。(マタイ伝福音書)