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うちゅうてきなとりで

the cosmological fort 無職戦闘員による本メモ、創作、外国語の勉強その他

◆海外のフィクション

『山椒魚戦争』カレル・チャペック

山椒魚が人類に代わって地上の支配者になるという話。 作家は自分が生きている時代が気にかかってしょうがない。よって山椒魚を主人公にしたこのファンタジーは、現実を映す鏡として書かれたものである。両生類ではなくサルが生物の覇者でなくてはいけない、…

『アシェンデン』サマセット・モーム

大戦中、情報員としても働いたモームが体験をもとにつくった短編集。 英国の作家アシェンデンはR大佐の依頼に応じ、スイスで諜報活動を行う。 連作形式になっており、それぞれアシェンデンが出会う人物に焦点をあてる。挿話群に通ずるのは英国人としてのア…

『スペインの遺書』アーサー・ケストラー

スペイン内戦に潜入したケストラーの本。オーウェルの『カタロニア讃歌』と読み比べてもおもしろい。 スペイン内戦は共和国軍の民兵とフランコ率いる叛乱軍の内戦である。フランコは王党派を名乗りファシスト・イタリアの援助を得た。ケストラーは英国の新聞…

『真昼の暗黒』アーサー・ケストラー

スターリンの大粛清を題材にしたフィクション。ジョージ・オーウェルが言及していた。話としてもおもしろいが、ソ連亡命者の体験を参考にしており現実味がある。 「第一人者」スターリンの治下、革命戦争の英雄ルバショフは逮捕される。彼は政治上の意見の相…

『アラーの神にもいわれはない』アマドゥ・クルマ

主人公ビライマの自叙伝がはじまる。 口語文体によって、彼が正規の教育を受けていないことが示される。フランス語を使えないものは稼ぐことができない。 同郷の贋金つくり、ヤクバとともに部族戦争中のリベリアに出発する。部族戦争とはおいはぎが「富の分…

『人間の土地』サン=テグジュペリ

みじめな生活とは何か、なぜ働かなければいけないのかについて考える本。 ――ぼくら人間について、大地が、万巻の書より多くを教える。理由は、大地が人間に抵抗するかがためだ。人間というのは、障害物に対して戦う場合に、はじめて実力を発揮するものなのだ…

『ジョージ・オーウェル 文学と政治』照屋佳男

序章 「常識を武器に政治に関する真実を発見し直した稀有な作家」オーウェルはいまだ未知のものである。 彼は自分の自伝に「私は金もなかった、私は弱かった、醜かった、人気がなかった、慢性のせきに悩まされていた、臆病だった、悪臭がしていた……私は魅力…

『捜査』スタニスワフ・レム

『ソラリス』、『完全な真空』、『砂漠の惑星』につづいてこれを読む。 ――盲目的な偶然、偶然のはてしない組み合わせいがいはなにも存在しないのです。無限にある〝事象〟がわれわれの〝秩序〟を嘲笑っていますよ。 刑事グレゴリイは連続屍体移動事件の捜査…

『寒い国から帰ってきたスパイ』ジョン・ル・カレ

英国の諜報員リーマス・エリックと、東ドイツの諜報員ハンス・ディートリヒ・ムントが対決する。 (冷酷な殺人者)ムントによって東側潜伏の部下を皆殺しにされたリーマスは、一旦落ちぶれたと見せかけて敵を倒そうとする。管理官の計画にしたがい、部署をク…

『コンラッド中短篇小説集 1』

「潟」 マレーの原住民が白人に自分の過去を語る。彼は酋長に仕えるものだったが、この酋長の愛人を、弟とともに掠奪する。逃走中に弟が捕えられ撲殺されるが彼は女のために見捨てた。多島海と熱帯の表現がこまかい。 「進歩の前哨基地」 アフリカの植民地ポ…

『征服者・王道』マルロー

『征服者』は中国における革命運動を舞台にした小説。登場人物は活動家たちだが、特に社会主義文学のような印象は受けなかった。どちらかといえば、ロシアのアナキストたちを主役にしたコンラッドの本を思い出す。 『王道』はこの古本ではなく、その後講談社…

『緑の家』バルガス・リョサ

インディオと交渉するシスター(宣教師)と軍隊が、悶着をおこして退避する場面からはじまる。<緑の家>なる歓楽街の館を構える町ピウラ、インディオ教化につとめる修道院、ペルー軍、商売で儲けをたくらむ行政官ドン・フリオ、刑務所を脱獄した日系人フシー…

『夜間飛行』サン=テグジュペリ

危険な航空業務に従事する人びとの様子を書く話。 夜間飛行 南米のサン・ジュリアンからブエノスアイレスへ夜を徹して飛行する場面からはじまる。ジッドの序によれば航空会社は競争のために夜間飛行も辞さなかったのだという。夜の灯火、人間の火が注目され…

『ゴットフリート・ベン著作集3』

肉の医師はひたすら外科医的な、猟奇風味のことばを使う詩である。評論によれば「即物的な死」、人間の物体化をあらわしたものらしい。 初期の病院連作は猟奇的だが、「アラスカ」、「陶酔の満潮」はすばらしい。ベンは言葉遣いがおもしろいので読む気がおき…

『ゴットフリート・ベン著作集2』 その3

文学は生を改善すべきか 表題のようなことがよく叫ばれるが生活水準の改善という点から見れば国会議員や経済学や技術、医学などが十分やってくれているから文学の入る余地はない。そもそも文学とは……「今日もはや吟遊詩人は存在しないし、現にこのわたしども…

『ゴットフリート・ベン著作集2』 その2

抒情詩の諸問題 抒情詩についてのさまざまな話題。季節や風景を歌った詩は「私たち本当は歯牙にもかけません」。近代では小説と詩をどちらもやるものがいなかった。小説家はどうしても叙述、逸話をもとめてしまう。 ネルヴァルからはじまる表現芸術の根幹た…

『ゴットフリート・ベン著作集2』 その1

文学論 詩の問題性 科学万能の時代に詩の必要はあるのかという疑問が多数の人間によって投げかけられた。ベンの世紀、物理学者とともに双璧をなすのが人類学者である。詩人と時代というのがはやりの形式である。 ――時代とは何か? 時代が我々に口をきいたか…

『ゴットフリート・ベン著作集1』 その6

第五章 文学的なこと 現象学的小説。音の排列による完璧な芸術をはじめに提唱したのがパスカルであり結実させたのがフロベールである。 「サンスクリットの研究者の食卓でのそぶりで、その象形文字を見てとらねばならぬのか、また実存主義者はその哲学のため…

『ゴットフリート・ベン著作集1』 その5

第二部 二重生活 第一章 過去の影 ヒトラーが政権をとったときに亡命した人間の大半はただ個人的な危険を避けてそうしたのだった。それもロシアとは異なり直接処刑の危険にさらされたわけではない。ドイツ亡命者は「むしろ逆に、ロシアの亡命者たちを追い出…

『ゴットフリート・ベン著作集1』 その4

◆自伝 ベンの誕生から、詩人としての活動、ナチ党政権下での生活まで。特にヒトラー政権下での風景は笑える場面が多い。 二重生活 ――二つの自伝的試み―― 第一部 一人の主知主義者の半生 自らのもつドイツ精神の特質とはなにか。 「生まれながらに独特の精神…

『ゴットフリート・ベン著作集1』 その3

芸術と第三帝国 ワイマール朝は「奢侈と享楽の時代」だった。第三階級の力は頂点に達した。実証主義的世界像に亀裂が生じ、陶酔や精神病や芸術が「生物学的劣性」としてくくられる。 ――月の世界以前の人間が視野に歩み出てくる。彼と共に地質学上の天変地異…

『ゴットフリート・ベン著作集1』 その2

ニヒリズムの次に来るもの 「漸層的脳髄進化現象」とはどういう現象か。 ――著者は自問する、すべてを科学的に定義して行こうとする世界像に対して、われわれは今なお、創造的自由をもつ自我を主張しうるのか、と。 「構成的精神」とは一切の唯物的思想から解…

『ゴットフリート・ベン著作集1』 その1

ゴットフリート・ベンは、戦間期から戦後にかけて活動した詩人である。ドイツ語が読めないので翻訳でしか触れていないが、表現主義に影響を与えた言葉の用法に大きな衝撃を受けた。 また、ナチ党の台頭にともない多くの文学者、詩人が亡命する中、かれは軍医…

『プレクサス』ヘンリー・ミラー その3

――スタンレイのうしろには、いつも、戦士、外交官、詩人、音楽家といった系列が見えるのに、このおれはといえば、祖先なんてものがまるでいないのだ。自分でつくりあげるしかないのだ。 彼は自分を「どこの馬の骨ともわからぬ祖先をもった一アメリカ人にすぎ…

『プレクサス』ヘンリー・ミラー その2

引き続き貧乏生活は続く。 「ぼくが生活について無力なことは自他共に認めるところだ」。 ミラーは散文詩『メゾチント』を自分の知り合いに売りつけて回り、ロングアイランドの精神病院の院長にでたらめな署名で、電報にして送った。 ネッドの紹介で雑誌界の…

『プレクサス』ヘンリー・ミラー その1

『薔薇色の十字架』第二部。 「過去は、それが失敗や挫折の文字を綴るかぎり、非存在のまぼろしにすぎないのである」。 彼は近所の図書館で悪名を馳せた。 「ぼくはいつも貸し出し期限超過だとか、紛失(といっても実はぼくの書棚に鎮座ましましていたのだが…

『現代の英雄』レールモントフ

一部小説でよく名作として引用される小説。中短篇が集まってできている。ツルゲーネフ『父と子』といい、舞台は古いロシアだが、今読んでも納得のできる点がある。人間の精神は根底では変わっていないのかもしれない。 ナポレオン戦争後のロシア(推定)、エ…

『南回帰線』ヘンリー・ミラー

『わが読書』『北回帰線』につづく三作目。 有名なことば「私の周囲のものは、ほとんど落伍者であり、落伍者でないやつは、ひどく不愉快な人間ばかりであった」。「どだい、われわれアメリカ人は非常にゲルマン民族的だ――ということは、つまり、大ばかだとい…

『裸者と死者』ノーマン・メイラー

太平洋戦争における米軍と日本軍との戦闘を題材に、軍隊組織の性質について考える小説。 アノポペイ島に上陸する前夜、夜明け前の輸送船から話ははじまる。主人公はレッドという北欧人で、長身痩躯である。彼と敵対するのが脳みそも筋肉でできている好戦的な…

『セクサス』ヘンリー・ミラー その2

ユートピア的政治組織はいつも人間を自由にすると約束する。 ウルリック曰く芸術家はよろこびを手に入れるために食事や金を抑制する。いったい金持ちが貧乏人のように食事を楽しむだろうか? 芸術家はふだんは働かないがもっともゆたかである……そしてミラー…

『セクサス』ヘンリー・ミラー その1

『薔薇色の十字架三部作』の一作目。 彼はマーラに「なぜ本を書かないのか」と言われる。 ――大人は、おのれのまちがった生活によって鬱積した毒物をはき出すために書くのである……だが彼が(書くことによって)なしうるのは、せいぜい自己幻滅のヴィールスを…

『山猫』ランペドゥーサ

シチリア貴族のファブリツィオ氏の家での貴族的日常から小説ははじまる。家庭はひからびており次男は優雅な生活に息をつまらせてイギリスの炭鉱労働者になってしまった。甥のタンクレディは革命勢力と交際している。ファブリツィオ公爵はシチリア王と親しい…

『悪霊』ドストエフスキー

農奴解放前後の無政府主義者を題材にした作品。支離滅裂の青年たちが登場し、各種の犯罪行為をおこなう。 政府が目をつける危険思想家になりたかったステパン・トロフィーモヴィチの話。 自分をひとかどの人物と思い込んではいるが善良な男。彼には乳母、面…

『サートリス』ウィリアム・フォークナー

第1次大戦から帰ってきた、自暴自棄気味の青年が主人公の話。後のフォークナー小説に登場する人物も何人か現れる。 銀行経営の老ベイヤードは御者の黒人サイモンから、孫のベイヤードが第一次大戦から帰ってきたと告げられる。父はジョン・サートリスである…

『消去』トーマス・ベルンハルト その2

遺書 彼は葬儀に立ち会うためにヴォルフスエックにやってくるが、すぐには邸宅に行かず、弓形門の陰から棺の納められたオランジェリーに出入りする庭師たちを観察している。そこで再び彼の思い出しがはじまる。 上の者(彼の家は村の上にある)にはぞっとし…

『消去』トーマス・ベルンハルト その1

オーストリアの代表的な作家。呪詛でつくられた小説だとのこと。薄暗い、暗鬱な、じめじめした旧家、土地持ちの家に一生住み続けることを義務付けられる家に生まれた主人公が、脱出した話。 電報 これはフランツ=ヨーゼフ・ムーラウの手記である。彼は両親…

『コンラッド短編集』

「エイミー・フォスター」 風景と町の説明からはじまる。 「あれを見れば誰だって、彼女が過剰な想像力のもたらす危険からは永久に守られていると思うだろうよ」、「我々すべての者の頭上に絶えず懸かっている不可知なるものに対する畏れから生じる悲劇が………

『ネクサス・暗い春他』ヘンリー・ミラー

ネクサス 三部作の最後。ドストエフスキーの気違いたちの話。モーナはふたなりのスターシャと親しくなり、ミラーはこのスターシャをねたんだ。彼はドストエフスキーの世界を、退屈と狂人に満ちたニューヨークに投影させた。曰く、ドストエフスキーの想像のロ…

『われら・巨匠とマルガリータ』ザミャーチン、ブルガーコフ

「われら」 「1984」や「すばらしき新世界」につながる反ユートピア小説の元祖で、長い間ソ連文学史から抹殺されてきた。 われわれの文明は二百年戦争を経て完全に消滅し、「緑の壁」とよばれる外に追放された。生き残った一〇〇〇万の人びとは「慈愛の…

『A journal of the plague year』Daniel Defoe

古い本のためか、ところどころ今と意味の異なる単語があるようだ。たとえばshyは、(感染者から)逃れたがるという意味で使われている。 一六六五年、イギリスで発生した大規模なペスト禍の記録である。語り手はロンドン市内の商人であり、各教区parishでの…

『第三の男・落ちた偶像・負けた者がみな貰う』グレアム・グリーン

グリーンの娯楽作品三つが収録されている。 『第三の男』では、冷酷な犯罪者に変わり果てた友人を密告する男が描かれる。ハリーは終戦直後の混乱したウィーンで偽ペニシリンを扱う闇商人となっていた。彼に招かれた三文小説家ロロは、ハリーの本質を知らされ…

『Youth』J.M.Coetzee

祖国南アフリカから脱出しようと試みるさえない主人公が、看護婦にもてあそばれるところから本書ははじまる。黒人政策をめぐるデモと弾圧で、数学を学んでいた彼は幻滅し、ロンドンに向かう。ここでIBMに採用されるが、長時間労働と孤独に苦しむ生活を送る。…

『戦う操縦士』サン=テグジュペリ

対独戦の仏軍パイロットとして出撃をまつ場面から本書ははじまる。仏軍は物量的に不利な状態にあり、司令官アリアスの出撃命令は死刑宣告に等しかった。焼け石に水のような貧弱な航空体制のもとで、彼は国家への忠誠を失いかけ、すべてを無意味と考えるよう…

『パーフェクト・スパイ』ジョン・ル・カレ

『寒い国から帰ってきたスパイ』、『鏡の国の戦争』につづいて読む。彼の作品に出てくるスパイは皆自己のコントロールに長けたエリートである。 *** 詐欺師の息子として生まれたマグナス・ピムは嘘に囲まれて育ち、自分も父の片棒を担がされてきた。結果、嘘…

『Storm of steel』Ernst Junger

In the Chalk Trenches of Champagne 学校を繰り上げ卒業して志願兵に応募したユンガーは一九一四年十二月、シャンパーニュに送られる。開戦当時の昂揚した雰囲気について述べられている、偉大な、圧倒的な、聖なる(the Hallowed)体験を、戦争はわれわれに…

『Childhood's End』Arthur C. Clarke

「宇宙の旅」と並ぶクラークの作品。 the Overloadsとよばれる超越者が地球にやってきた世界を主題とする。超越する存在の使い(ロボット?)があやつる巨大宇宙船が大気圏上に降下してくると、人類は無意識のうちに行動を矯正されていく。この超越者と統一…

『Starship Troopers』Robert A. Heinlein

一人用の惑星突入カプセルに乗り込んで侵略をおこなうところからはじまる。いわく「これは戦闘ではなく、侵略だ」。兵隊から恐怖を取り去る催眠教育、大気圏突入用のポッドなど、後世のSFにも受け継がれる要素がそこらに散らばっている。 ジョニーとその仲…

『Rain and other south sea stories』W.S.Maugham

船上の二組の夫妻、マクフェイルとデヴィドソンはお互いを唯一気の会う同行者と感じていた。教父であるデヴィドソンの担当地区には、現地人のあいだに非道徳的な踊りの習慣がある。 雨が降り、彼らの船は感染病者発生のためしばらく停留せざるを得なくなる。…

『星を継ぐもの』ホーガン

本の大部分は科学者たちの努力と研究の発展の記述に割かれている。同じSFとはいえ冒険小説的なものとは大分印象が異なる。月面で発見されたルナリアンおよびガニメデで発見されたガニメアンの生態が徐々に解明されていくところはソラリスにも似ている。 科…

『鏡の国の戦争』ジョン・ル・カレ

『寒い国から帰ってきたスパイ』と共通の世界が舞台のようで、スマイリーやリーマスといった名前も出てくる。リーマスは死んだ、と言及されているので『寒い国~』以後の話らしい。 イギリス諜報部(サーカス)は外務省傘下の機関だが、この本で描かれるのは…