うちゅうてきなとりで

The Cosmological Fort 無職戦闘員による本メモ、創作、外国語の勉強その他

『虎よ、虎よ!』ベスター

 主人公に勢いのあるSF小説ジョウントという瞬間移動を身につけた人類たちの未来世界が舞台である。

 ガリヴァー・フォイルは宇宙船で遭難し、救難信号を射出する。しかし、通りかかった宇宙船ヴォーガは信号を無視し、フォイルを見捨てる。ここで、フォイルは八つ当たりに近い憎悪を抱き、ヴォーガ号の乗組員を殺すため復讐を開始する。

 惑星同盟間の戦争、財閥たち、等、雑多な要素がつめこまれており、台詞も支離滅裂なところがある。話のつながりよりは、各人が言いたい台詞を言っているような印象を受けた。まとまりはないが、話の展開は早く、すらすらと進む。

 哲学的なのか、曖昧模糊としているのか判断しにくい文章が所々に見られる。

 ――まさに黄金時代だった。雄渾な冒険が試みられ、生きとし生けるものが生を謳歌し、死ぬことのむずかしい時代だった……しかし、誰ひとりそんなことを考えてはいなかった。これこそ、富と窃盗、収奪と劫略、文化と悪徳の未来の実現だった……しかし、誰ひとりそのことを認めてはいなかった。いっさいが極端にはしる時代であり、奇矯なものにとって魅力的な時代だった……しかしそれを愛するものとてなかった時代なのである。

 台詞の割合が多く、人物たちの会話によって場面と話は進展する。

 

虎よ、虎よ! (ハヤカワ文庫 SF ヘ 1-2)

虎よ、虎よ! (ハヤカワ文庫 SF ヘ 1-2)