帝政ロシアの監獄に入れられた人物の回想という形式をとる本。収容所を書いたフィクションはソルジェニーツィンも制作しているが、ロシアにおいてはこのような施設が連綿と受け継がれてきたということがわかる。
囚人たちの性質や、日日の生活を説明する。以下の項目が印象に残った。
1 階級
主人公は貴族階級出身であり、囚人のほとんどは農民である。農民たちは貴族を敵視しているか、また無視する。貴族階級と農民のあいだには、たとえ囚人同士であっても、連帯感が全く生じない。
貴族である主人公が、農民たちに同情しようとしたところ、農民たちは、どうしてわれわれが仲間などになるのか、と不思議がって質問した。
2 性格
囚人の人格は様々である。道徳観念の欠落した親殺しや殺人者、感情的になって殺人を犯した者、泥棒、スリたちを主人公は観察する。
3 笞刑
所長である少佐は囚人たちから畏れられており、態度の良くない者、規律に違反したものは笞刑を受ける。
根性のある囚人は、笞で背中を叩かれても平然としており、再び受けることに対しても恐怖を抱かない。
4 生活
酒や隠し物品の持ち込みや取引がさかんに行われている。囚人同士の盗みはあるが、どちらもたいして怒らず、反省もしない。喧嘩になると罰を受けるため、皆、口は悪いが殴り合いにまで至ることは少ない。
脱走は困難であり、ほとんど考えるものはいない。
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囚人は出獄すると囚人用の僻地に居住を命じられる。