うちゅうてきなとりで

The Cosmological Fort 無職戦闘員による本メモ、創作、外国語の勉強その他

◆その他の本

『DNA』ジェームス・ワトソン アンドリュー・ベリー

本書の目的……DNAの謎を解明するまでの歴史を概説し、DNAとは何かを説明する。DNA研究と社会との関わりについても詳しく書かれている。 著者はDNA解明に寄与した科学者であり、上下分冊だが大変読みやすい。 *** 1 メンデルは遺伝子の存在を予見したが…

『社会科学のリサーチ・デザイン』キング コヘイン ヴァーバ

定性的な研究において妥当な因果的推論や記述的推論を行うためのアプローチを発展させることを目的とする本。 *** 1 社会科学の「科学性」 定量的研究と定性的研究とはどちらも、根源的な推理の論理に基づいているか、体系的か、科学的かが重要である。 科…

『生物兵器と化学兵器』井上尚英

化学兵器・生物兵器の歴史と代表的な種類を説明する本。 化学兵器はハーグ陸戦条約、ジュネーブ条約などで制限されてきたが、こうした施策は完全なものではなく、現代においても各戦争において使用され、またテロリストの攻撃手段としても利用されている。 *…

『社会生物学の勝利』オルコック

目的……宗教的・倫理的な観点から批判されることの多かった社会生物学を解説する。 1 何だ 社会生物学はダーウィンの進化理論と動物行動学を結びつける学問分野である。この分野の創始者O.E.ウィルソンによれば「すべての社会行動の生物学的基礎の総合的な研…

『動物分類学』松浦啓一

生物多様性の概念は近年になり提唱された。生物多様性が、地球環境の維持に貢献しているというもので、頻繁に取り上げられている。しかし、その多様性の実質である種の数についてはいまだにわかっていない。少なく見積もっても1000万以上の生物が存在す…

『Walden; Or, Life in the Woods』Henry David Thoreau

アメリカ合衆国の作家・思想家ソローによる代表作。 ウォールデン湖のほとりで仙人のような生活を送ろうとする人物の本。現在の経済活動の大部分に背を向けるよう主張している。 ムダな労働をしない、着飾らない、必要以上に作物をつくらない。気候に耐える…

『アヘン王国潜入記』高野秀行

1995年、著者がミャンマーのワ州に滞在した記録をまとめたもの。政治的な文章や偏見、主義主張はそこまでうるさくないので読みやすい。 1 アヘン生産地帯 東南アジアのゴールデントライアングルとは、ミャンマー、タイ、ラオスの3点で囲まれた国境地帯…

『現場刑事の掟』小川泰平

窃盗犯専門の刑事による体験談。著者は相撲部出身の屈強な人物らしく、文章もどことなく頭が悪そうだが人格の良さは伝わってくる。 警察官は犯罪者や悪そうな人間に対して弱気でいてはいけない。体力がまず重要である。 犯人を捕まえて自首させるまでが刑事…

『大学生物学の教科書3』サダヴァ

内容:情報伝達、遺伝子工学、免疫、発生と分化 *** 12 細胞の情報伝達 細胞に影響を及ぼすさまざまなシグナルについて説明する。どのようなシグナルであっても、それに応答できる細胞には受容体タンパク質が存在する。 細胞は、外部環境からの情報を処理…

『大学生物学の教科書2』サダヴァ

本書は「染色体と細胞分裂、メンデル遺伝学、DNAの構造と複製、DNAをもとにタンパク質が合成される過程、遺伝子発現制御、ウイルス、細菌の遺伝学」を取り扱う。 6 染色体、細胞周期及び細胞分裂 ヘンリエッタ・ラックスから摘出されたHeLa細胞は…

『生物から見た世界』ユクスキュル クリサート

人間や動物は主体である。主体が知覚するものは知覚世界となり、主体が作用するものはすべて作用世界となる。この2つを合わせて「環世界」Umweltとなる。本書はこの環世界を紹介するものである。 *** 動物主体は知覚と作用によって客体をつかむ。 ――……動物…

『原子爆弾』山田克哉

目的……原子爆弾の原理、放射能とは何か、等について説明すること、原子爆弾の理論を歴史を追って書くこと。 原爆と原子力発電の原理はほとんど同一である。原爆を理解することは、原子力行政の理解にもつながる。 *** 原子爆弾とは正確には原子核の分裂を利…

『創造』エドワード・ウィルソン

目的……自然保護を有効に推進する社会的な勢力の形成にある。その勢力とは「愛と科学をもって、あるいは冷静かつ合理的な利害計算をもって生物多様性に対処する非宗教的な勢力と、神による創造を信じるキリスト教的な宗教世界に暮らしつつ、神に想像された自…

『ブラック・チャイナ』田雁

起源 中国黒社会の起源は「幇会(バンホイ)」と呼ばれる秘密結社である。当初は職能組合だったが、明末に満州族に対抗するために結束し、辛亥革命や軍閥の支配に際して権力と協力し勢力を拡大させてきた。 明末の幕僚洪英がつくった「洪門」は、清の時代に…

『アメリカ人弁護士が見た裁判員制度』コリン・ジョーンズ

本書の目的:陪審制度との比較により裁判員制度が誰のための制度かを論じる。 「陪審制度は個人を公権力から守る最後の砦であるのに対して、率直に言って、私が見る限り、裁判員制度は裁判官と国民が一緒になって悪い人のお仕置きをするかどうか決めるための…

『激論!「裁判員」問題』木村晋介

裁判員制度について賛成派と反対派が議論する本。 1 裁判員制度の概要 適用されるのは重大犯罪のみである。審理は裁判官3名と裁判員6名で行われる。裁判員は事実の認定、法令の適用、刑の量定について権限を持つ。 これらは多数決で決定されるが、有罪の…

『国際テロリズム101問』 安部川元伸

本書は国際テロ組織の概要、組織、地域分布、対策等について概要を説明するもの。 *** テロの類型……大量破壊兵器テロ、サイバーテロ、海事テロ、エコテロ等 現代のテロは大別して左翼組織、民族主義組織、イスラム過激派組織に大別される。左翼主義組織は主…

『極左暴力集団・右翼101問』

警察関係者向けの書籍で、極左と極右の成立経緯、宗派、活動内容等を説明する。 *** 極左暴力集団の歴史は日本共産党の路線転換の歴史であるといわれている。同党の路線転換のたびに分裂を繰り返し、地下組織、非公然組織が生まれてきた。 五流二十数派……革…

『腐敗と寛容 インドネシア・ビジネス』中原洋

インドネシアでの経営経験がある人物が、当該国の文化、経済的慣習等について紹介する本。 1 人と国 インドネシアは多民族、多言語国家である。様々な民族間で共通するのは、楽天、寛容、忍耐の精神である。著者はこうした精神要素が生まれた背景として、豊…

『Sultanistic Regimes』Juan J. Linz, H. E. Chehabi

比較政治学において、政治体制を理解するための単語である「スルタニスム」(スルタン主義体制)を考える。 スルタニスムとは……元はヴェーバーが統治の類型を考える上で「スルタン制」を考案し、後に本書の著者であるリンスが発展させた。 イスラーム世界の…

『アラブ人とユダヤ人』シプラー

目的……「アラブ人とユダヤ人が互いに抱き合っている感情やイメージ、先入観を点検し、彼らの敵意の根にあるものや、イスラエルの支配下で両者がまじりあって暮らす小さな土地での相互作用を、じっくり見ることにある」。 イスラエルでの生活や社会について知…

『絵画を読む―イコノロジー入門』若桑みどり

図像学のはなし。 図像の単純な意味と、その伝習的知識を総合して出された本質を研究するのが、イコノロジーであるという。 歴史上の絵画を取り上げ、描かれたモチーフが示す意味を解説していく。 西洋絵画は常にキリスト教とギリシア文化の影響下にあり、画…

『日本のインテリジェンス機関』大森義夫

内閣情報調査室長を務めた元警察官僚が、内調の成立の経緯、日本における情報の取組、日本におけるインテリジェンスの概要等について説明する本。 著者のメモからの抜き書きなのか、唐突な文章が多いが、納得する点がありおもしろかった。 インテリジェンス…

『ヒルズ黙示録・最終章』大鹿靖明

『ヒルズ黙示録』の続編で、主にライブドアと村上の逮捕のいきさつについて説明する。 検察は、従来の汚職、ワイロ摘発モデルから、経済犯罪を糾弾する新しいモデルへ転換を試みた。検事たちには経済犯罪について付け焼刃の知識しかなく、どうやって堀江らと…

『ヒルズ黙示録』大鹿靖明

ライブドア事件の概要だけでなく、当事者である堀江ら、また、村上世彰、検察官たちの半生がわかり、おもしろかった。事件がおきたときはだいぶニュースになったが、本書を読むとこれまで知らなかった事情も理解できる。 「世論」は、当事者や検察によって簡…

『精神病』笠原嘉

精神病、とくに分裂病(現在の「統合失調症」)について書かれた本。はじめに、精神病の定義について説明する。 心の不調を分類すると、「神経症」、「精神病」、「パーソナリティのゆがみ」の3つになる。 パーソナリティのゆがみは、本人の心の不調によっ…

『近代の奈落』宮崎学

戦前から戦後にかけての部落解放運動家の足跡をたどる本。 部落解放運動には、現実的な要求に基づく運動、アナキズムやマルクス主義に基く運動と様々だが、著者は生活者、部落民としての立場を踏まえた運動に共感しているようだ。 被差別部落はかつて皮革産…

『ニュートリノ天体物理学入門』小柴昌俊

科学者の半生、素粒子論、宇宙論、ニュートリノ天体物理学の誕生と発展(カミオカンデとスーパーカミオカンデ)、今後の動向などについて。 小柴氏は次のように書く。 ――学校の成績がよくなくても、何かをやろうと本気になってやれば、ある程度までいけるこ…

『マックスウェルの悪魔』都筑卓司

マクスウェルの悪魔とは物理法則に逆らったうごきをうながす存在である。 この本では、物質の法則の、かんたんな説明からはじまって、熱力学の法則を解説し、また自然界のみならず、人間社会をも規定しているエントロピーについて解説する。数式や計算は省略…

『銀河の世界』ハッブル

この本は銀河の世界について説明する。「はじめに」によれば、銀河の世界は宇宙の一部であり、現在の望遠鏡によって探求できる場所であり、そこでは銀河がうすく分布している。 ――銀河の領域への探求は、巨大な望遠鏡によって達成されたものである。それは、…