定性的な研究において妥当な因果的推論や記述的推論を行うためのアプローチを発展させることを目的とする本。
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1 社会科学の「科学性」
定量的研究と定性的研究とはどちらも、根源的な推理の論理に基づいているか、体系的か、科学的かが重要である。
科学的であるとは……
(1)目的は推論である。個々の観察された事実を超えて推論を行うことにある。
(2)手続きが公開されている。
(3)結論は不確実である。不確実性を判定せずに現実世界の記述や推論を行うことはできない。
(4)科学とは方法である。研究の主題や内容ではない。
科学は、社会的な営為になっているときもっともよい状態にある。
――もっともすぐれた社会科学の研究とは、適切に確立された科学的調査の体系に基づいて展開される洞察と発見の創造的な過程である。
研究テーマについて……研究プロジェクトは、現実世界において重要で、なおかつ特定の学問研究の発展に貢献するような問いを選ぶべきである。
――現実の世界での重要なテーマに注意を払わずに、社会科学に貢献することだけに熱中しすぎると、現実政治にとって意味のない問いばかり立てる愚を犯すことになる。逆に、社会科学の知識体系の枠組み内で、体系的な研究ができる問題には注意を払わずに、現在の政治的課題ばかりに注意を向けると、私たちの理解を深めるのにほとんど役に立たない、いい加減な研究をしてしまうことになる。
理論の改訂……理論を、対象を拡大するように修正してもいいが、新しいデータを集めることなしに、理論を限定的に修正してはならない。
データの質の改善……データとは体系的に集められた、現実の世界に関する情報の一部である。理論検証のために、できるだけ多くの観察可能な含意に関係するデータを集めることが重要である。次に、測定の妥当性を最大化し、信頼できる方法でデータを集めることが必要である。
研究設計のための4ポイント
(1)理論とデータをつなぐ観察可能な含意を用いること
(2)てこ比を最大化すること(できるだけ少ないことがらで、できるだけ多くのことを説明する)
(3)不確実性を報告すること
(4)懐疑主義を持ち、常に推論を疑うこと
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2 記述的推論
社会科学の目的は現実世界の記述と説明である。記述の作業には、
(1)観察された事実から、されていない事実を推論する
(2)体系的部分と非体系的部分を区別する
という過程に分かれる。
研究の問いを立てる前にその題材を深く勉強しなければならない。
推論とは既知の事実を用いて未知の事実を推測する過程である。事実を整理する最良の科学的方法は、事実を理論や仮説の持つ観察可能な含意として整理することにある。
モデルとは世界のある側面を単純化あるいは近似化したものである。
データ収集の重要な点は作成方法と入手方法を明示することである。データ収集モデルは変数、観察単位、観察からなる。データ収集によって、本質的な部分を抽出し、データを要約しなければならない。
記述的推論とは、観察したものから、観察されない現象を理解する過程である。ここでは、体系的な差異と非体系的な差異を区別しなければならない。
――体系的要素は、それがある値をとるときに、継続して一貫した効果をもたらす。それに対して、非体系的要素は一時的なものであり、それゆえ、非体系的要素のもたらす効果を予測することは不可能である。
記述的推論の判断基準……
(1)バイアスのない推論
(2)有効性……反復実験において推定量のばらつきが少ない度合い
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3 因果関係と因果的推論
本書は因果関係を、データとは独立した理論的概念として定義する。因果的推論は反事実的推論であるため、確実ではない。これを因果的推論の根本問題とする。
因果的理論とは、ある現象の原因を知るために設計されるものである。そこで必要なルールは……
(1)反証可能な理論をつくること
(2)内的に一貫した理論を立てること
(3)従属変数を注意深く選ぶこと
(4)具体性を最大化すること、つまり、観察できる概念を用いること
(5)可能な限り包括的に理論を述べること
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4 何を観察するか
分析するときに、観察をどのようにして選択するべきか。理論からできるだけ多くの観察可能な含意を引き出さなければならない。
不適切なデータ収集の例……戦争しか研究せず戦争の原因を説明しようとする研究、革命の研究しかせず革命の発生を説明しようとする研究。
その他、データを扱う際に注意すべき点。
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5 何を避けるべきか
観察における有効性低下やバイアス増加をどう回避すべきか。
内生性とは、説明変数の値が、従属変数の原因ではなく、結果であること。原因と結果が逆になっていること。
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6 観察の数を増やす
――一般に、比較研究においては、より多くの観察に基づいて一般化しようとすればするほど、より良い結果が得られるものである。
比較分析は類推よりも優れている。
- 作者: G.キング,R.O.コヘイン,S.ヴァーバ,真渕勝
- 出版社/メーカー: 勁草書房
- 発売日: 2004/01
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