科学の発展は、パラダイムの転換によっておこなわれる、という主張の有名な本。
科学は科学者集団によって営まれる活動である。通常科学とは、科学的な業績に基づく、さらなる基礎と実践を加えるための研究である。
通常科学において、高度の説得力をもつ、統合的な理論が支持を得た場合、これが科学活動の基盤、つまりパラダイムとなる。このパラダイムにもとづいて、重要事項の定義、理論への組み込み、理論の蓄積がおこなわれる。
通常科学はパズルゲームに似ており、予測されるこたえはパラダイムにすでに示されている。このため、科学者たちは競って問題解決にはげむようになる。
通常科学は、積み重ねによって発展する。しかし、これまでの歴史において、従来の科学と断絶した、新しい理論が出現することがあった。
通常科学では解決不可能な問題、矛盾が生じると、既存のパラダイムそのものにうたがいの眼が向けられる。パラダイムというルールにもとづいてパズルに取り組んでいた科学者は、ルールに何か現実とそぐわない点があるのではないか、と考える。
このようにして、一般的に若く、既成の価値観にとらわれていない科学者が、より確かで、信憑性のある理論を提唱する。
たとえ、新しい理論が古いものより信頼性をもつとしても、すぐに移行がはじまるわけではない。
科学者集団全体の、新理論への移行には、社会的な要因が影響してくる。新しい理論が大多数に受け入れられることで、科学におけるパラダイム転換がおこり、科学者たちは、新しい世界の見方をとりいれるようになる。これまでの発見はすべて見直され、新しいパラダイムを軸にして歴史と教科書が書きなおされる。
以上がクーンの考える科学革命である。
科学は断絶によって変化してきているので、研究の蓄積による発展という見方は正確ではない。科学革命はふつう、わかりやすいかたちではあらわれない。
こうした性質の学問は科学固有のものであり、たとえば人文科学ではおなじような統一性は見られない。
クーンは、科学者集団の性質、教育方法、社会における科学の地位なども、分析の対象に含めている。このような社会の影響によって、パラダイムからパラダイムへの、科学の発展が生じるという。
The Structure of Scientific Revolutions
- 作者: Thomas S. Kuhn
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