本書は「染色体と細胞分裂、メンデル遺伝学、DNAの構造と複製、DNAをもとにタンパク質が合成される過程、遺伝子発現制御、ウイルス、細菌の遺伝学」を取り扱う。
6 染色体、細胞周期及び細胞分裂
ヘンリエッタ・ラックスから摘出されたHeLa細胞は、人工培養されるがん細胞として医学研究に多大な貢献を果たした。
多細胞生物においては、細胞分裂は「成長や組織の修復」のために用いられる。
原核生物においては、細胞分裂は複製、分離という順序をたどる。ヒトや種子植物などの真核生物においては、配偶子から受精卵がつくられ、この細胞から多細胞生物が「発生」する。
減数分裂は核分裂の2つめの仕組みであり、「有性生殖に関与する配偶子をつくる細胞のみに起こる」。減数分裂はよって精子と卵子をつくる細胞にのみ起こる。その機能は多様性の発生である。
細胞には、細胞周期を促進させるサイクリン等のタンパク質が含まれている。
――癌は不適切な細胞分裂に起因しているので、癌細胞においてはこれらサイクリン―Cdkの制御が崩壊している……人間の癌細胞の半数以上は機能異常のp53を有していて、細胞周期の制御が不能となっている。
真核生物のDNAは二重らせんとなり、染色体の中に織り込まれている。有糸分裂によって自己を複製することができる。
有性生殖は親と異なる子が生まれるため多様性が生じ、自然淘汰と進化の基盤となる。
細胞死にはネクローシスとアポトーシスの2つがある。ネクローシスは毒や栄養不足による死で、炎症をともなう。アポトーシスは細胞の自殺で、皮フの代謝などがあてはまる。
7 遺伝学:メンデルとその後
遺伝子はどのように世代から世代へ伝達されるかを議論する。
メンデル遺伝学において、特徴とは観察可能な外観を、形質とは特徴の特定の型を、遺伝形質とは親から子へ伝達されるものをいう。
8 DNAと遺伝におけるその役割
DNA(デオキシリボ核酸)は遺伝物質である。DNAは二重らせんの構造を持ち、右回り、2本の鎖は逆平行(反対方向に走っている)であり、AGとCTの組み合わせがはさまっている。
遺伝物質であるDNAの4つの機能……個体の遺伝情報を保存する、変異の影響を受ける、細胞分裂の周期中に正確に複製される、表現型として表される。
DNAには自己修復機能がある。
9 DNAからタンパク質、遺伝子型から表現型まで
遺伝子とはDNAの配列であり、体の特徴である表現型を作り出す。表現型とはタンパク質である。はじめにDNAからRNAへ転写され、次にRNAからペプチドへと翻訳される。
RNA(リボ核酸)はDNAに似ているが、1本鎖であり、リボースからなる。RNAはDNAとポリペプチド鎖をつなぐ分子である。
セントラルドグマとはDNAからRNA、RNAからポリペプチド鎖への、不可逆の情報の流れをいう。HIVウイルスなど、セントラルドグマに従わないウイルスをレトロウイルスという。
DNAから表現型への変換は遺伝暗号によっておこなわれるが、この暗号は地球上のすべての種でほぼ同一である。
突然変異は塩基でおこるもの、染色体におこるもの等があり生物に多大な影響をもたらす。
10 ウイルスと原核生物の遺伝学
ウイルスは一般的な生物と異なる。細胞を持たず、核酸とタンパク質のみからなり、外界との相互輸送や代謝をおこなわない。
ウイルスは宿主の細胞の中で増殖する。自己増殖のために宿主細胞のDNAとタンパク質を利用し、宿主細胞を破壊する。
11 真核生物のゲノムと遺伝子発見
真核生物と原核生物のゲノムの相違点と、ゲノム構成と遺伝子発現、遺伝子発現の調節について。
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