裁判員制度について賛成派と反対派が議論する本。
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裁判員制度の概要
適用されるのは重大犯罪のみである。審理は裁判官3名と裁判員6名で行われる。裁判員は事実の認定、法令の適用、刑の量定について権限を持つ。
これらは多数決で決定されるが、有罪の判断には最低1名の裁判官の賛成が必要である。
陪審員制との違い……陪審員は一般的に有罪か無罪かの判断のみに関与する。また裁判官との協議は行わない。裁判員制度はフランスで行われている参審制に近い。
裁判員は選挙人から抽選で選ばれる。裁判員裁判においては概ね3日間で審理を終わらせるよう制度がつくられている。
賛成派
日本の司法制度は腐っている。冤罪が多い。冤罪は、証明できないが確かに存在する。裁判員制度を導入した国は無罪率が高い。よって裁判員制度を導入すると有罪率が減り、冤罪も減る。
反対派
裁判員が司法の誤りを減少させる機能を持つかは疑問である。DNA鑑定が有効ならそれを採用すればよい。何のために裁判員制度を導入するかという目的は全く議論されてこなかった。
審理の短縮はずさんさにつながり、また裁判員制度は国民に苦役を強いることである。先進国で日本だけが導入していないというのは理由にならない。
2
問題点……冤罪防止が目的なのに被告に裁判員制か裁判官制かの選択権がない。マスメディアによる報道が裁判官と裁判員の判断にどのような影響を与えるか。
最高裁判所は制度に賛成している。予算、人員が増え、また責任も軽くなるからである。
賛成派曰く、裁判員制度反対派は反市場主義・反グローバリズム、反国家主義であり、愚民思想の持ち主である。
国民への負担……アメリカには国民の参加と犠牲を当然とする風潮が国民自身のあいだにある。いま日本の国民にその覚悟があるのか、またはそれが適切な国家運営の方式なのかが問題である。
憲法に規定されている苦役の禁止や思想の自由の侵害にはならないか。
守秘義務はいいのか悪いのか。
裁判員として仕事を休む不利益をどうするのか。辞退が増えて公務員と主婦ばかりにならないか。
審理の短縮について……現在の制度では3日で終わるようなものを1日1時間のように引き延ばしている。迅速さか適正さかどちらかを犠牲にしなければならない。そうではなく、集中して取り組んだ方が正確になるという意見がある。
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疑問に思った点
賛成派……裁判員制度が冤罪を減らす直接的な効果があるかは疑問である。冤罪防止のためには本書にあるように科学的捜査の改善や取調の可視化等ほかの方策があるはずである。
反対派……国民に負担を強いることを過度に問題視している。今は時期が悪いというがどういう時期ならばいいのかがわからない。
結論……この本を読んだだけのわたしには判断はできない。