うちゅうてきなとりで

The Cosmological Fort 無職戦闘員による本メモ、創作、外国語の勉強その他

とりでポエム

黒檀剣

水たまりの、青い泥の国から 草の胞子へ 野外の緑の人たちが 射出する、ヒドロ虫的な 毒のある胞子 秒針が止まり、まもなく 動き出す、黒檀でできた人 火葬と煙の匂いがする ロシア語の人。

金切り声の山

影そっくりのもの。 わたしと、となりの影を まねるように、時計の 針のゆらぎはあるが、 この児童が持っている、ウサギの 耳の形をした時計の針を 見つめているうちに 日が暮れて、わたしたちは影の 国のなかにすっぽりと 吸い込まれる。 こうやって 昨日の…

やさしいあわれみのはさみが

やさしいあわれみのはさみを 操作する。 ちょきちょき おお、108本の、指の 規律正しい動き。 むかし、わたしの耳の 水槽に住んでいた、 ヒドラを思い出すような 複雑なもの。 では、このはさみは、 何を切ろうか、 ちょきちょき ちょきと 魔法の木から …

サラダ病

その人は、いや、 代理人の長は、 冷却材でゆっくりと脳をひやす。 大理石の脳も当然のこと ではわたしの脳は その人の脳はどのような 素材からできているだろうか。 「残念ながら、大理石 ではない」 赤土と、立体の ための粘土、他には 何があるだろうか、…

連続1

紫色の、海の虫たちのいる 船底から、わたしたちの 歴史が収束し、1つの花の環に なった。 野ばらと、可視光線の編上げによる 皆殺しの環と、 それを、つなぎあう手と手が わたしの頭部になる。 かれらは、その他の区域のすべて、 「心室と、心室との連接」…

霧の国から来る

雪のすきまに、ざくざくと 装備を埋め込むものがいる。 夕方、霧が白い粉に変わり わたしの足元で 摘出した腸になった。 へびの声を出して、続いて 長いへびとなって、 霧の入り口にむかう。 霧の国、へびの帰る、 傲慢の門に わたしたちはいる。 わたしはく…

公園で

夜、乱数の公園で、 鹿肉たちが音楽をつくる。 冷たい霧をはきながらやってきた 肉屋と猟師たちをともなって。 すべての軽い楽器を 軽いラッパと、軽い太鼓を 波形にあわせて まさしく、演奏家のように 調整する者らの影。 プロペラ式の街燈にあてられて 伸…

要望のある太守

草を火にかけて 灰緑の、命の煙を 公文書抹消の煙をあげよう。 首を提灯のようにぶらさげて、 そうした、首、首で 連接された おぞましい友達の環を結んで、 記録と報告を骨まで 燃やそう。 わたしたちは、力強い 太守の背中に、 脂肪が表皮からはちきれそう…

発動

あの人物、壊れた屍体のあの人物が、 歩き出す。 球形になって、取り囲む スコップを持った作業員たちの 中心で。 何度もスコップで叩かれ、胴体の (主たる構成部分について、再びもとには戻らないだろう) 四肢はぼろぼろと落ちた。 しかし、屍体は停止し…

肺と霧

冬の日が、いま 肺を照射した。 ハニカム構造の、宿坊の 1つ1つから、門徒たちが おそるおそる顔を出している シャチの肺を。 生まれては 死ぬ、幼生の 血のひもを 伝っていく。 粒の影は、ゆっくりと 落ちていく。 霧箱と、それを 両手で支える いまわし…

記録

文様のすき間に そのなかに 日の使いと、補給品である 始祖の血液を 落としこむ。 わたしは夢を、線文字とともに たちまち理解する。

増上慢の鳥

青と赤、金を主なより糸として 硫黄の香りで飾られた がらんどうの鳥の器官 わたしは潜水艦に、それは 羊の皮をつぎあわせてできているが 台車の上に棺桶を乗せて、 108人の兄を格納した。 かれらは、子グモのように飛び出した。 これからが、鳥の話。 泥…

会葬

わたしは物乞いの塔にやってきた。 青いくちびるをした法学者の分隊に、たちまち、 捕えられて。 かれらは、歯や舌はもちろん、 食道まで青かった。 主要な骨と肉はすべてひきはがされてしまい、わたしは、 かれらの青い羨道をとおって、 胃のなかに、ぼろぼ…

訓練歌

岩の上で不動の子供オリーブの首筋を通る下手人の弾 減速材がかれらの眼からこぼれ落ちる銀色の飴は物見の塔へ

骨をついばみながらの歌

探検の記録を燃やす異常者のドイツ人にも煙は見えぬ 増上慢のかぶとを吊るしお湯のなかで貨幣をねぶる波の収束 揺れる手で四足の獣の腹をなでる おおこんなにも薄いプロテイン

赤い輪

馬の上に 空中線を たてておく 風力計が 首吊り男の あたまの横で 音をならす 木材相互のたわみにふれて 頭領たちは 土を踏む ひげを伸ばした 残酷おどり

アフリカ歌

砂粒は魚の言葉川底の骨まで届く子供の言葉 郵便局員専用車両の板金をなめて焦げつき不動のネズミ 水色の鉄帽子たちが木の上から屍体を吊るすゴードンあそび 水盤に注入されるロータスの溶液、今日を生き血で洗う

糸との草

声を聴いた、糸をわけてほしいという あぶくとともに、沼の奥から、こんな真夜中にも かかわらず、 脳に負荷のかかる声が聴こえる。 人びとをあみあげる糸、 脳の、球体的な部分をつくる糸、 そのような、 わたしたちの日々の沼を波立てる あらゆる糸が、魚…

粘菌の格子

てのひらから、手首、腕の骨と骨のくぼみ、主たる腕骨の峰をとおっていく水の音がする。 純度の高く、冷たい音のする水。 海の近くの工場から、運ばれてきた。 わたしは、赤い舌と耳をもつ技師たちにたのんで、 長い血液ラインをつくってもらった。 気持ちの…

試験的なとき

あのイヌこそは イヌの中のイヌ 胴体の 中枢まわりにぴったりと 神経基盤が接続され あたかもイヌが 夜霧のなかで からだをきたえるような 幽霊の 骨髄的な声を出した 湿った土と、内燃の 腸を袈裟がけにした 調査官は 黒いブーツで足跡を書く それらは 大き…

端末室の歌

1秒の眼の運動後もう1秒の眼を押下する満足の指 夕焼けの岩の表皮に蚊の腹を押し付けて血の雫をにぎる 逆さ吊りの子供の態度が検査官の心に宿るテレタイプ顔を ヨモギには拡散された棘があるヨモギを食べる牛の尾を踏む

包帯掛

たわむ、腸の道 羊の道と、足踏みし 傷病者らと 黒くにじんだ包帯の 狭間から続く 出血を ポンプで組み上げ 流し込む かれらはやった。 では、わたしは。 わたしの仕事は 何があるか。

認証

光の色のファイルを 開く 大きな、この世の終わりの 音をたてて、 落ちる 青い手のひらの 怪力男。 わたしは、 顔の図像をめくり 溶かして飲んだ。 ところで、溶けていった顔の 組成は あぶらっぽい星の 味がした。

小人の文言

耳の国 しゃれこうべの国 その冬は枯れ木の下で 暖を取り 墓堀人夫の衣類を燃やし 草の上に打ち立てられた 基盤をかじる、怒りの子 自分の兄を食べては太る 児童の城 わがままの城 子供たちに顔向けできない住職の城

終わらない体操

人形の、黒い手と、白い手との 約束ごと。 糖度の高い、大きな眼球の、遠隔監視人形と、 あちらには 原住民をかたどった、槍と盾の人形、 2つのものが、歩調をあわせて 糸をはく。 真鍮色のまばゆい糸に吊るされて わたしは医学の門を閉めた。 数字1つでも…

かれらは怒りの……

かれらは怒りの茶をたてた。 強度の指とともに 手のひらでおしつぶせ、 乱数を。 それらが、技師長の 思考を乱し、 かれらの規則をもって 言わなければならないことの 大半を こわす。 いまだに、親たちは 子供をさしだすというが 何事か。 額からこじあけて…

龍涎門

和尚は言った。 この方路は雨と夜の方路、 雲がかかれば、円形の 濃度の奥から 眼がのぞきこむと。 その眼玉、2つの 写真衛星の眼窩を わたしは疑問におもう。 あの門を見なさい、と 和尚が指をさし、おや、 いまにも木組みが腐って 崩れそうじゃないか。 …

嘘ばかりの地誌

かがり火の門が、坂の 向こうにある。 ひじをついて、砂ぼこりを 口にいれ、ゆっくりと 匍匐前進して、 そういうときの 暗渠から湧き上がる 魚群のにおいは特別だ。 雨粒が降っても 皮フと組織は きれいなまま。 門に辿りつくまえに かれらは土になって 凍っ…

王の、すりばち状の家

あれら、庭の花に唾かける再生の 王様を見よ。 サボテンを折っては むらさき色の歯と舌で呑みこみ 何度も繰り返す 糸をひく、3つの顔の、 いまいましい涎。 大食漢が、もし 手を後ろ手に縛られて、それは 茶色く、さびた銅線によってだが…… もし頭部を射撃…

収穫

ようこそ、という山羊の顔の、 重なった言葉に連れられて やってきた。 まるで重なりあった、火の環どうしが 波長をそろえるように、 言葉は落ちる。 一片の文字と音が 土ぼこりをたてて、それでも 実行者は出てこない。 間者たちのが泥の層にもぐりこんだ。…