うちゅうてきなとりで

The Cosmological Fort 無職戦闘員による本メモ、創作、外国語の勉強その他

2015-06-01から1ヶ月間の記事一覧

『ゴットフリート・ベン著作集1』 その2

ニヒリズムの次に来るもの 「漸層的脳髄進化現象」とはどういう現象か。 ――著者は自問する、すべてを科学的に定義して行こうとする世界像に対して、われわれは今なお、創造的自由をもつ自我を主張しうるのか、と。 「構成的精神」とは一切の唯物的思想から解…

『ゴットフリート・ベン著作集1』 その1

ゴットフリート・ベンは、戦間期から戦後にかけて活動した詩人である。ドイツ語が読めないので翻訳でしか触れていないが、表現主義に影響を与えた言葉の用法に大きな衝撃を受けた。 また、ナチ党の台頭にともない多くの文学者、詩人が亡命する中、かれは軍医…

シノドスの道

曲率、高い曲率を示すものとともに、 というのは それはわたしの曳く馬の眼だったからだが まず、口と鼻から蒸気を放射する わたしの馬を 綱をたぐりよせた。 わたしは蛇の腹のような、 細く長い道を登った。 そのとき、雲のすき間から 粘土質の7つの柱が積…

『信長・イノチガケ』坂口安吾

イノチガケ 切支丹の話。スペイン系フランシスコ会とポルトガル系ゼズス会の対立、サン=フェリペ号のスペイン人は太閤をおこらせた。殉教者の続出。スペイン皇帝領から独立したオランダ人ウィリアム・アダムズ、イスパニア人の交渉等、日本は帝国の紛争地帯…

『仁義なき戦場』マイケル・イグナティエフ

ボスニアへの介入は、WW2以前なら決しておこなわれなかったろう。 「本書はボスニアやルワンダやアフガニスタンからの痛ましいテレビ報道を見て誰しもが感じる「なんとかしたい」というあの衝動を主題としている」。 帝国主義や冷戦がおわったいま、われわ…

金属と、夕闇は夕闇とするもの

コンクリート製の、枕と毛布にくるまって 寝る。 シャンシャンとにぎやかな、鉄条網の カーテンに守られて、あの人ら、 指さす人が横たわる。 壁の向こうから、放送と、猫と鳥に関する 警報が聴こえた。わたしは 耳を外に向けて、かすかな音声を つかまえる…

『カンボジア戦記』冨山泰

ポル・ポトについてだけ読む。ポル・ポト派はクメール民族主義者であり、少数民族は排除せねばならなかった。ベトナムへの猜疑心が強く、少しでもつながりのある人間は排除せねばならなかった。 「武力闘争のかなりの過程を自力で勝ち抜いたため、指導部がき…

『かくれた次元』エドワード・ホール その4

第十一章 通文化的関連におけるプロクセミックス ここからは具体的に主な国民の空間感覚が述べられる。 ドイツ人 ドイツ系アメリカ人やスイス人はだれもが、アメリカはスケジュール・時間にやかましいと批評する。ヨーロッパ人は、アメリカ人ほど予定を詰め…

『かくれた次元』エドワード・ホール その3

第八章 空間のことば ボアズは異なる語彙の研究により言語と文明の関係を強調した。その系譜であるウォーフの『言語・思考・現実』について。 ――いかなる人も自然を完全に無色透明に叙述することはできない。 ウォーフの研究したホピ族のことばは、空間をは…

『かくれた次元』エドワード・ホール その2

第三章 動物における混みあいと社会行動 動物行動学者ジョン・カルフーンは三年にかけてネズミの繁殖させ、混みあいがどのような状態をひきおこすかを観察した。「彼の目論見は、個体群をストレス状態に維持したままネズミを三世代にわたって飼い、一個体ば…

『かくれた次元』エドワード・ホール その1

各文化による人との距離のとりかたの違いなどを論じた本。人によって感じ方は変わる。また、動物としての特性はいまだに大きな割合を占めている。 だいぶ前に読んだ本だが、言語と現実認識との関わり、動物の本能に関する点など、現在の研究とはかけ離れた点…

『砂時計の書』エルンスト・ユンガー

砂時計への執着を足がかりにした時間についての評論で、いろいろと勉強になった。時計の発達に合わせて人間の時間に対する認識が変わり、生活様式や考え方も変化していく。 砂時計の情熱 「どんなに小さな草花も、まさに無限のなかに多くの根をおろしている…

手の航跡(2012)

あたま、あたまから派生したあたま、 あたまの模様は波打って 大一統はよろこんだ。 雲が目まぐるしく渦をまき、その下で 吹き溜まりをなす雪の 対象物の影に隠れているシカや、 キツネの、ふかふかとした 尻尾を観測する。 手袋から、手を取り外す わたした…

『追悼の政治』エルンスト・ユンガー その2

「平和」 第一部 種子 第二次世界大戦が終戦をむかえたときに書かれた。 平和をもたらす福音は、「戦争が万人に果実をもたらさなければならない、ということである」。尊い犠牲はすでに無数の者によってはらわれた。 「灼熱する縫い目によって初めて地球を一…

『追悼の政治』エルンスト・ユンガー その1

ユンガーの著作は日記、エッセイ、小説の三種に分類される。ドイツでは重要な作者ということだが内容は難しい。 「忘れえぬ人々」 まえがき ドイツ人は無名兵士には尊敬をもたない。 「我々は、敬うこと、畏敬の念を覚えることをも好む。そしてこの畏れとい…

『文学の思い上がり』カイヨワ その3

第三編 人間のために 公認の芸術家とのろわれた詩人の違い。公認の芸術家は、たとえば『神曲』のように、建築に似た霊感の統一様式をもっている。 「建築は当然秩序であり、科学であり、正義であり、そして全く同時に美であり、奉仕であり、力である」。 ま…

『文学の思い上がり』カイヨワ その2

第二編 文学の諸問題 文学は社会のなかにある。言語はなによりも社会的な道具である。社会を軽蔑する作家は言葉の規範も軽蔑するようになる。 「作家はもはやぼんやりした、なぞのような、錯乱したものしか作らない」。 文学は権威を打ちたてようとするか、…

『文学の思い上がり』カイヨワ その1

興味深い題名、『戦争論』のカイヨワによる文学論。題名だけで、何か怒られるのではないか、という気分になる。 文学にあらわれる有害な兆候を論ずる。 これだけ文学に重きがおかれていた時代というのも、隔世の感がある。現在、文学は落ち目の娯楽の1つに…

鉱質調査チーム(2012)

刺しつらぬく、すばやく したがわぬものの 土をかぶった男たちの うごき。 スイッチの光を わたしは手で生みだした。 それは、電磁的な 生みだすことの意味と、同じ 複写の湖において、沼において、 北方の特異な海辺に おいて、 わたしたちは人のかたちをな…

『プレクサス』ヘンリー・ミラー その3

――スタンレイのうしろには、いつも、戦士、外交官、詩人、音楽家といった系列が見えるのに、このおれはといえば、祖先なんてものがまるでいないのだ。自分でつくりあげるしかないのだ。 彼は自分を「どこの馬の骨ともわからぬ祖先をもった一アメリカ人にすぎ…

『プレクサス』ヘンリー・ミラー その2

引き続き貧乏生活は続く。 「ぼくが生活について無力なことは自他共に認めるところだ」。 ミラーは散文詩『メゾチント』を自分の知り合いに売りつけて回り、ロングアイランドの精神病院の院長にでたらめな署名で、電報にして送った。 ネッドの紹介で雑誌界の…

『プレクサス』ヘンリー・ミラー その1

『薔薇色の十字架』第二部。 「過去は、それが失敗や挫折の文字を綴るかぎり、非存在のまぼろしにすぎないのである」。 彼は近所の図書館で悪名を馳せた。 「ぼくはいつも貸し出し期限超過だとか、紛失(といっても実はぼくの書棚に鎮座ましましていたのだが…

最近の英語

近々、トーイックを受けることになったので、最近は英語を勉強しています。スペイン語、フランス語は、試験が終わったらぼちぼち再開するつもりです。 トーイック問題集は一通りやりましたが、試験まではまだ期間が残っています。何冊も買うわけにはいかない…

『現代の英雄』レールモントフ

一部小説でよく名作として引用される小説。中短篇が集まってできている。ツルゲーネフ『父と子』といい、舞台は古いロシアだが、今読んでも納得のできる点がある。人間の精神は根底では変わっていないのかもしれない。 ナポレオン戦争後のロシア(推定)、エ…