うちゅうてきなとりで

The Cosmological Fort 無職戦闘員による本メモ、創作、外国語の勉強その他

2015-06-01から1ヶ月間の記事一覧

Los Arboles ~未完成ゲームより~

youtu.be 写真はだいぶ前に行ったベトナムのミーソンという歴史的建造物で、音楽とはほとんど関係ありません。

『ソロモンの指環』コンラート・ローレンツ

動物研究の古典で、現在は修正されている説も含まれる。 動物や虫、魚への執着に感心する。これらの観察記録は擬人的にえがかれてはいるが、ローレンツは動物学者で、イソップ童話をつくっているのではない。人間と動物には共通するところがあるがよく考えれ…

ふたたび、その日の 崖に向かった。 昨日と同じ文様の 水盤と馬に 囲まれて。 ヒョウモンダコと 潜航艇は、 それぞれ、緑の 皮フを、水面から浮かべて 沖で 待っている。 平板な、線と点の並びが 長い列をつくる。 岸に打ち上げられた 黒っぽいひもが あきら…

『草のつるぎ』野呂邦暢

『諫早菖蒲日記』も書いている作者の最初の本。日本文学にありがちなくどい文言やうっとうしい理屈が無いので読みやすかった。 入隊して三週間の新米自衛隊員が語り手となり、報告調の休日報告からはじまる。写実的な、無味乾燥に近い文章だが主人公海東二士…

『夜間飛行』サン=テグジュペリ

危険な航空業務に従事する人びとの様子を書く話。 夜間飛行 南米のサン・ジュリアンからブエノスアイレスへ夜を徹して飛行する場面からはじまる。ジッドの序によれば航空会社は競争のために夜間飛行も辞さなかったのだという。夜の灯火、人間の火が注目され…

『色川武大・阿佐田哲也全集Ⅰ』

怪しい来客簿 戦中の中学校時代から終戦直後の生活までおもいでを語る。力士、同級生、教師、出版業に勤めていたときの同僚、自分の思うとおりに行かないでそのまま死んだ人間が多くいた。色川はつねに自分の原理にしたがって生活しそれに運良く成功した。 ―…

『うらおもて人生録』色川武大

色川武大は麻雀の本も含めてほとんど読んだ。麻雀プロとしての経歴が有名だが、若いときから作家志望だったらしく賞などに応募している。 戦時体制下で彼は中学を無期停学になり、ニート生活をはじめた。運は結局原点(ゼロ)に戻る。実力は負けないためのも…

『海軍と日本』池田清

世界第三位の海軍国であった日本は終戦時に滅びた。海軍と太平洋戦争を分析すること。 この本は日本海軍の入門である。 Ⅰ 海軍と戦争 マレー沖海戦において日本海軍は英国戦艦プリンス・オブ・ウェールズとレパルスを沈めたがこれは飛行機か戦艦かという論争…

『イギリスと第一次世界大戦』ブライアン・ボンド

イギリスにおいて否定的なイメージで語られることの多い第1次世界大戦について、それは後世の文芸や芸術によってつくられた世界観である、と抗議する本。 ヘイグ将軍や政府の政策を擁護しているが、果たして第1次大戦が、文学によって不当に評価をゆがめら…

『小さな狩 ある昆虫記』エルンスト・ユンガー

ユンガーの昆虫的エッセイ。 「鉱物、植物、動物の採集は、幾世代にもわたる習わしになっていて、息子たちが採集を始めると、年寄りたちは喜んだ」。 少年時代の思い出話が書かれる。父親は十年周期でなにかに熱中する人間だった。一家はチェスにはまり母親…

失われた制御部

赤い銅でできた雲が 軌道を走っていった、 黒い音を立てながら。 横腹の装甲板を 四角い眼の人たちが なでては離れていった。 ごろごろと 光の車輪を転がして、 雲の中枢には、暗号化された 車長の首が1つ。 あのときだ、首の海の 向こうの首へ 放射状の声…

『スペイン史』ピエール・ヴィラール

この文庫はたまにものすごく読みにくい翻訳が混ざっている。本書にも日本語として不自然な個所が散見される。 スペインは地中海と大西洋とピレネー山脈で隔絶されている。また中央には台地(メセタ)があり、フランスのような河川による連絡がない。豊穣な海…

『アーロン収容所』会田雄次

英軍捕虜となった著者の有名な本。イギリスの人種主義を知るうえで参考になる。 著者は「安」師団に配属されビルマ方面で戦った。無条件降伏ののちイギリス軍のアーロン収容所に入れられた。著者はイギリス人に並々ならぬ憎悪を抱いている。ルネサンスを専攻…

『言語』サピア その4

第十章 言語と人種と文化 ――人種、言語、文化は並行的に分布してはいないし、それぞれの分布地域は、じつに困惑するほど互いに交わっているし、それぞれの歴史は、互いに異なる進路をたどりがちであることを発見している。人種は、言語には見られない仕方で…

『言語』サピア その3

第六章 言語構造の類型 「あらゆる言語は形態的な類型に分類することができる」。すべてが独自である、として分類を丸投げするのはあやまちである。 ――世界のさまざまな地方で、それぞれ異なる歴史的な先例から、相似した社会的・経済的・宗教的な制度が発達…

『言語』サピア その2

第四章 言語の形式――文法的過程 言語の形式的パタンと、それを構成する概念はまったく別である。形式的には、unthinkablyとreformersは同種の語である。think,formに接頭辞と接尾辞がついているという点で同一なのだ。ところが機能はまったく別である。 「範…

『言語』サピア その1

言語学の古典とのこと。 言語はどのようなものか、空間的時間的にどのように変化する傾向があるか、人間の根本にたいしてどのようなかかわりをもつか、それを明らかにするのがこの本の目的であるという。 サピアが影響を受けたクローチェは「言語が芸術の問…

『第一次世界大戦』テイラー

一九一四年 フランツ・フェルディナンド夫妻が大学生ガブリロ・プリンチプに射殺される前にも数回暗殺未遂がおこなわれていた。セルビアはスラヴの国であり、オーストリア=ハンガリーがセルビアにたいし宣戦布告するとロシアが対抗した。ドイツとオーストリ…

『ドイツ表現主義の誕生』早崎守俊

ムンクや詩人ホッディスにはじまる表現主義者たちは近代もなく新しい時代もない、「二重の不在」の時代に生きたのだった。ヴォリンガー『抽象と感情移入』は、人間に感情移入をさせる調和したルネサンスの美に対し、機械的法則を用い、抽象による美として、…

買い物予定その他(the labyrinth etc)

無職戦闘員はお金に限界があるので、読んだら売って次の本を買うために貯金しないといけない。 今年はお金をためて次の図書等を買う予定である。 The Labyrinth: Memoirs Of Walter Schellenberg, Hitler's Chief Of Counterintelligence 作者: Walter Schel…

『ノア・ノア』ポール・ゴーギャン

文明から遁走した画家の旅行記。 「六十三日間の変化ある航海の後、私たちは六月八日の夜、海のかなたに稲妻形に移動する奇怪な灯を認めた」、タヒチは仏領で、植民地街は彼曰くすでに汚染されている。奥地に引越し、原住民であるタヒチ人マオリ族の歓迎をう…

光学鳥の歌

鳥の環、鳥の環、 ぬるりとすべる波の上を 4つの足で這いすすむ 脳の白い鳥、 かれの脊椎は2つある。 鳥の環、鳥の環、 キチン質くちびるに 各々が芋虫と、葦をくわえる 精密な鳥、 かれらの行進は 羽を振り、羽を振り、 空の中枢に波を書く。 鳥の環、鳥…

『ゴットフリート・ベン著作集3』

肉の医師はひたすら外科医的な、猟奇風味のことばを使う詩である。評論によれば「即物的な死」、人間の物体化をあらわしたものらしい。 初期の病院連作は猟奇的だが、「アラスカ」、「陶酔の満潮」はすばらしい。ベンは言葉遣いがおもしろいので読む気がおき…

『ゴットフリート・ベン著作集2』 その3

文学は生を改善すべきか 表題のようなことがよく叫ばれるが生活水準の改善という点から見れば国会議員や経済学や技術、医学などが十分やってくれているから文学の入る余地はない。そもそも文学とは……「今日もはや吟遊詩人は存在しないし、現にこのわたしども…

『ゴットフリート・ベン著作集2』 その2

抒情詩の諸問題 抒情詩についてのさまざまな話題。季節や風景を歌った詩は「私たち本当は歯牙にもかけません」。近代では小説と詩をどちらもやるものがいなかった。小説家はどうしても叙述、逸話をもとめてしまう。 ネルヴァルからはじまる表現芸術の根幹た…

『ゴットフリート・ベン著作集2』 その1

文学論 詩の問題性 科学万能の時代に詩の必要はあるのかという疑問が多数の人間によって投げかけられた。ベンの世紀、物理学者とともに双璧をなすのが人類学者である。詩人と時代というのがはやりの形式である。 ――時代とは何か? 時代が我々に口をきいたか…

『ゴットフリート・ベン著作集1』 その6

第五章 文学的なこと 現象学的小説。音の排列による完璧な芸術をはじめに提唱したのがパスカルであり結実させたのがフロベールである。 「サンスクリットの研究者の食卓でのそぶりで、その象形文字を見てとらねばならぬのか、また実存主義者はその哲学のため…

『ゴットフリート・ベン著作集1』 その5

第二部 二重生活 第一章 過去の影 ヒトラーが政権をとったときに亡命した人間の大半はただ個人的な危険を避けてそうしたのだった。それもロシアとは異なり直接処刑の危険にさらされたわけではない。ドイツ亡命者は「むしろ逆に、ロシアの亡命者たちを追い出…

『ゴットフリート・ベン著作集1』 その4

◆自伝 ベンの誕生から、詩人としての活動、ナチ党政権下での生活まで。特にヒトラー政権下での風景は笑える場面が多い。 二重生活 ――二つの自伝的試み―― 第一部 一人の主知主義者の半生 自らのもつドイツ精神の特質とはなにか。 「生まれながらに独特の精神…

『ゴットフリート・ベン著作集1』 その3

芸術と第三帝国 ワイマール朝は「奢侈と享楽の時代」だった。第三階級の力は頂点に達した。実証主義的世界像に亀裂が生じ、陶酔や精神病や芸術が「生物学的劣性」としてくくられる。 ――月の世界以前の人間が視野に歩み出てくる。彼と共に地質学上の天変地異…