うちゅうてきなとりで

The Cosmological Fort 無職戦闘員による本メモ、創作、外国語の勉強その他

バビロニアの投票

 ◆選挙

 参院選にともない2週間ほど前に在外投票に行ってきた。領事館にトレーラーハウスが設置され、本国と同じような態勢で投票受付が行われていた。

 若者が選挙に行かないことが問題になっているが、わたしは若者に含まれるだろうか。もう今年で30代中盤になるので若者面をするなといわれるかもしれない。

 

 わたしは、投票しない白紙委任者たちに数で負け続けていると日々感じている。わたしのような数で劣る人間にとっては、ただ投票だけすればいいというわけでもない。政治活動は投票だけでなく他に様々な選択肢がある。

 

 合衆国では反逆者、亡命者扱いのスノーデンだが、かつてハワイと東京で勤務していたこの人物を例にあげて、弱者の政治兵器の1つはサイバーだと主張したい。

 

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NCTAMS PAC 海軍通信施設の中にNSAハワイが所在

 

 ――しかし、社会の自由を計るほんとうの尺度は、その社会が反対派やマイノリティをどう扱っているかということにあるのであって、「善良な」信奉者をどう扱っているのかということにあるのではない。……人はただ国家の監視に怯えたくないからといって、権力者の忠実な信奉者になるべきではない。

 ――つまり、民主党の政治家も共和党の政治家も、権力を追求すること以外には確たる信念もなく、節操のない偽善をおこなう傾向にあるということだ。……実際、いくつもの政府が昔からこの手を使って、自分たちの抑圧的な行為には眼をつぶるよう国民を言いくるめてきた。正しかろうとまちがっていようと、社会の片隅にいる取るに足りない人びとだけが抑圧のターゲットになるのであり、それ以外の人間全員にはそうした抑圧が自分たちに及ぶ心配など無用であり、そうした権力の行使を黙認し、支持さえできるよう信じ込ませてきた。

 

 

 

 ◆『Bonhoeffer』を読みながら

 

 ――平和にむかう安全な道は存在しない。平和は、それ自体が挑戦であり大いなる冒険である。平和は決して安全には達成されない。平和は安全の反対である。保障を求めることは自分自身を守ろうとすることである。平和は自分自身を神の戒めに委ね、安全を求めず、信仰と服従のもと、人びとの運命を全能の神の手にゆだね、それを利己的な目標に向けないことである。戦いは武器によってではなく神によって勝ち取られる。道が十字架へと続くとき、戦いに勝利する。

 

 “There is no way to peace along the way of safety. For peace must be dared. It is itself the great venture and can never be safe. Peace is the opposite of security. To demand guarantees is to want to protect oneself. Peace means giving oneself completely to God's commandment. Wanting no security, but in faith and obedience laying the destiny of the nations in the hand of almighty God. Not trying to direct it for selfish purposes. Battles are won not with weapons, but with God. They are won when the way leads to the cross.”

Quote by Deitrich Bonhoeffer: “There is no way to peace along the way of safet...”

 

 

 戦間期を通じて、ディートリヒ・ボンヘッファーは平和主義を掲げるようになった。これは、再軍備を目指すドイツ人のなかでは少数だった。

 

 後に反ヒトラー活動の咎で収容所に送られたニーメラー牧師――警句で有名――も、教会に対してアーリア人条項が適用されるまではナチ党を支援していた。

 ドイツ人は第1次世界大戦の敗北と武装解除で受けた屈辱に執着しており、再軍備と東方への領土拡大主義は、ヒトラー以前のワイマル共和国時代から続く政治傾向だった。

 

 大学で神学を専攻していたボンヘッファーは1923年、学生を対象とする軍事訓練に参加し、「一人前の兵士になった」と手紙で語っている。

 ヴェルサイユ条約はドイツ陸軍の人員を10万人に制限し、また義務兵役を禁止していた。こうした規制の抜け道の1つとして、ボンヘッファーも参加した秘密の学生軍事訓練が運営されていた。

 

 1939年以降、ボンヘッファーが秘密裡に国防軍情報部(反ヒトラー工作の中心)の工作員となり反ナチ活動を始めたとき、告白教会の同僚の大半はかれに賛成する状態ではなかった。

 告白教会牧師の多数は、政権との直接対立を望んでおらず、また戦争中に自国の指導者を攻撃することを非愛国的であるとみなしていた。

 

 ――エレミヤは平和を乱す者、人民の敵として、他のものと同じように当時から現在にいたるまで辱められた。かれは神に捕捉され、またかれにとって神はあまりに強かった。エレミヤは、どんなによろこんで大勢といっしょに平和と「ハイル」を叫んだだろうか……。

 

 Jeremiah was upbraided as a disturber of the peace, an enemy of the people, just like all those, throughout the ages until the present day, who have been possessed and seized by God, for whom God had become too strong… how gladly would he have shouted peace and Heil with the rest…

 

Bonhoeffer: Pastor, Martyr, Prophet, Spy (English Edition)

Bonhoeffer: Pastor, Martyr, Prophet, Spy (English Edition)

 

 

 

 ◆御家騒動

 『大名と百姓』は非常に退屈な史料の積み重ねから、江戸初期の農村社会成立を描き出している。読みにくいが、参考になる。

 「慶安の御触書」の章など、現在の定説・新資料と異なる記述もあるので逐一確認しながら読んでいるが、大半はいまも通用しているようだ。 

 

日本の歴史〈15〉大名と百姓 (中公文庫)

日本の歴史〈15〉大名と百姓 (中公文庫)