スペイン内戦において活動したアナキスト活動家についての、昔風の記録。
文体や雰囲気が昔の左翼運動を連想させる。
この本の題材であるドゥルティは、スペインのアナキスト団体CNT(全国労働者連合
)=FAI(イベリア・アナキスト連合)の幹部の1人であり、地下活動の時代から、内戦にいたるまで、団体を率いていた。本書によれば伝説的な人物であり、死についても原因は特定されていない。
作者は、ドゥルティについての無数の証言をつみあげることで、この指揮官のイメージを伝えようとする。また、各証言や注記から、アナキストの活動の実態、スペイン内戦の状況、アナキストが敗北するまでの大まかな流れを知ることができる。
かれは、戦力の独裁のない社会を理想にかかげ、アナキスト活動についても、分権型をつらぬいた。おもいやりがあり、常に労働者の立場からものを言ったため、支持者からは人気があった。
このため、CNT=FAIの民兵は規律が弛緩しており、準備が貧弱で、戦術を知らなかった。共産党はソ連の支持を背景にアナキストと対立した。また協和政府はアナキストとは支持層が異なり、つねに対立していた。
ドゥルティの民兵は、武力が決定的になる場面で、決断することができず、理想の形態にこだわったために弱かった。
一方、反乱軍は正規の軍隊を用いたために左翼たちを撃退することができた。この本によれば反乱軍の支持者は軍隊、王党派、教会等であり、かれらは協和政府が生まれたときに迫害をうけている。この階層にも、自分たちが守る利益があった。
民兵の練度の低さについては、トロツキーやヴェイユも指摘している。アナキストは国際関係上、自分たちがどのような位置づけをされているのか、頭をはたらかせることがなかった。
ある証言では、アナキストたちも、反乱軍と同様、戦争犯罪や不法行為をはたらいている。
軍事力及び軍事組織の重要性を再確認した。