うちゅうてきなとりで

The Cosmological Fort 無職戦闘員による本メモ、創作、外国語の勉強その他

『基地はなぜ沖縄に集中しているのか』 ――経緯と現状

 

 ――手触り感の少ない抑止力や地政学的に重要な位置という説明に満足せず、本当は、なぜ沖縄なのか、という問いに、正面から向き合おうというのが、今回の私たちの取材の出発点であった。

 

 ◆所見

 沖縄に基地が集中している不公平な実態について書かれている。

 問題の根源は日米の力関係、つまり「アメリカのせい」だけではない。日本政府にも、沖縄問題を長期化させてきた原因がある。

在日米軍と住民との関係改善策

司法権

・根底にある沖縄人蔑視

 沖縄県は最も長く米軍・米政府と共存してきたため、その考えは単純・一枚岩ではない。

 

 

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 1章 基地集中の原点

 1

 在沖縄米軍の7割は海兵隊だが、沖縄の海兵隊(3MEF)は、唯一米本土以外に駐留している部隊である。

 朝鮮戦争前後、海兵隊は本土の日本軍基地に駐留していた(茅ヶ崎海岸は海兵隊射撃場)。しかし治安悪化や土地接収で反対運動が高まり、1957年に沖縄に移転した。

 

・対共産主義の拠点として有用

・占領中の沖縄に置くほうがコストの面で有利

・一般国民から隔離することで反米感情を抑制

 

 アイゼンハワー時代の軍備計画資料や、ヴァンフリート陸軍大将のレポートによる。

 

 

 2

 久志村(くしそん)……現在の名護市辺野古住民は50年代から米軍との共存を選択してきた。

 ※ 1952年、日本主権回復の日は、沖縄では屈辱の日である。日本本土から隔離され、アメリカの施政下に置かれたからである。

 

 1955年以降、沖縄各地で米軍による土地の強制収用が始まった。辺野古住民は、米軍と交渉し有利な条件で土地を引き渡す方策をとった。

 このとき、沖縄全土で「島ぐるみ運動」(米軍土地接収反対運動)が行われていた。

 

 辺野古キャンプ・シュワブ建設と同時に町はブームとなった。一方、課題は治安維持・女性と児童保護だった。

 

・親善委員会による交流

・反対運動は分裂、辺野古の活況を見た一部他地区が誘致を開始

 

 

 3

 当時の日本政府……鳩山首相、重光外相らは、海兵隊の沖縄移駐を黙認した。

 岸首相の日米安保改定において、沖縄は相互安全保障の対象外となった。岸は当初、沖縄も相互防衛対象に含めようとしたが、与野党から反発があった。

 

アメリカ施政下の沖縄を含めればアメリカの戦争に巻き込まれる

・基地使用の「事前協議制」を沖縄にも適用すれば、核持ち込みに制限がかかり、核の傘が弱まる

 

 ――日本の安全と平和を保ち、戦争に巻き込まれないために沖縄を切り離す。この行動様式は、この後も、日本の安全保障問題をめぐって、幾度となく繰り返されていく。

 

 

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 2章 固定化

 1

 1972年に沖縄は本土復帰した。同時期、「関東計画」として関東基地の横田への集約が行われ、迅速に達成された。

 福生市は大規模な支援金を要望し、そのために新法が成立した。また、F4部隊が嘉手納に移転することで騒音問題は収束した。

 本土での基地問題は、人目につかない場所に隔離移転するという政策により鎮静化した。一方、沖縄には全在日米軍基地の7割超が残された。

 

 

 2

 琉球政府と沖縄住民は、本土返還に合わせた基地の整理縮小を求めていたが、むしろ佐藤栄作ら日本政府は、米軍の継続駐留を要望していた。

 

 軍用地交渉……沖縄の米軍基地は三割が私有地、三万人の地主

 軍用地料見積もりが当初の三倍となったが、自民党政調会長の鶴の一声により、そのまま支払われることになった(政治的解決)。その後、賃料の値上げは続き、同時に基地の固定化が進んだ。

 軍用地主は、現在では特権階級とみなされ、表立って意見を表明することがない。米軍占領時は、安い土地代だけを与えられ、他人の土地を割り当てられ苦しい生活を強いられていた。

 軍用地は高い、不労所得だという沖縄内外からの批判がある。

 

 ――年間億単位の軍用地料を得る地主は確かに存在するが、約四万二千地主のうち、過半数は年間の軍用地収入が百万円に満たない。しかし沖縄の中では「軍用地料は高い」という見方がもっぱらである。

 

 軍用地は、身内での権利トラブルを招いた。

 こうした問題は沖縄特有である。本土基地のほとんどは公有地だからだ。

 

 

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 3章 海兵隊「抑止力」の内実

 1

 米軍、海兵隊が沖縄に駐留する論理について考える。

 

 沖縄海兵隊はハワイの太平洋海兵隊司令部(MARFORPAC)の指揮下にある。

 インド東端からミシシッピ川以西にわたる広大な地域が海兵隊の担任区域であり、沖縄海兵隊北朝鮮や中国を抑止する機能を果たしている。

 海兵隊員は沖縄のキャンプ・シュワブで市街地戦闘訓練を受けた後イラクに派遣されることが多かった。

 

・アジア地域展開のためのハブ(中継拠点)

・現地での補給・修理拠点

 

 海兵隊の訓練……

・射撃・上陸・基礎体力

・市街地戦闘(MOUT Military Operations on Urban Terrain)

・映像を用いた戦闘行動シミュレーションも行われる。

 

 三か月のブートキャンプの後、二か月の戦闘訓練、そして戦地に送られる。

 

 海兵隊の声明では、パートナーとしての同盟国の協力はあらゆる戦場に不可欠だという。ただし、それが実際の戦闘にとってなのか、政治的置物としてなのかはわからない。

 沖縄海兵隊は他国との共同訓練のほぼすべてを担当する。

 

・前方展開の拠点

・ジャングル戦闘訓練センター

 

 グアムへの司令部移転とハブ機能強化計画について。

 

・一から基地を建設可能

・沖縄では困難な多国間訓練の実施

・人口過密となった基地周辺からの撤退

 

 ハワイの海兵隊タウンミーティングで飛行機運行時間や部隊の出入りを説明する。在日米軍はそのような行事を実施していない。

 日本政府は米軍と日本住民との仲介となって説明責任を果たしてきただろうか。

 

 

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 4章 期待と裏切り、そして迷走へ

 1

 普天間基地の名護市辺野古移設対策……補助金、再編交付金

 再編交付金は、自治体の協力度合いに応じて支払いを実行・停止できる制度である。

 

 2

 2009年、鳩山の「最低でも県外」発言の波紋……続く名護市長選では、基地を拒否できるという期待が高まり拒否派の稲峰進が当選した。ところが民主党政権平野官房長官は選挙結果は政策に関係ないとして一蹴した。

 県外移設の断念……鳩山は、勉強不足により「抑止力」の重要性がわからなかったという理由をつけた。

 

 3

 名護市では補助金や基地の公共工事に依存する体質から抜け出しつつある。

 

 4

 名護市において、辺野古移設容認が大勢となった理由について。辺野古は長年キャンプ・シュワブと共存してきたため、国防を担ってきたという自負もあるという。

 

 5

 普天間移設は米軍再編以前に両政府間で合意された内容である。

 米軍再編は米軍の計画に基づくもので、普天間移設と直接関係はない。

 

 ――沖縄の本土復帰以降、政府は曲がりなりにも「基地問題」と「経済振興」という2つの問題を注意深く切り離して沖縄の理解を得ようと努力してきた。

 

 6

 日米同盟の重要性すなわち沖縄への基地集中ではない。

 

 ――……過重な基地負担が沖縄に集中している現状は、「明らかに不公平であり、差別」である。沖縄の人びとは、長年にわたって、重すぎる負担を担い続け、これまで容認してきた人びとですら、どうにかして現状を変えてほしいと訴え、基地集中に対して反対の声を上げるようになっている。

 

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基地はなぜ沖縄に集中しているのか

基地はなぜ沖縄に集中しているのか

  • 作者:NHK取材班
  • 発売日: 2011/09/22
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)