うちゅうてきなとりで

The Cosmological Fort 無職戦闘員による本メモ、創作、外国語の勉強その他

『It Doesn't Take a Hero』Schwarzkopf その1

 CENTCOM司令官として湾岸戦争を指揮した人物が、子供時代から陸軍に入り退役するまでを書く自伝。

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 著者の父は警察署長、軍人で、母は看護師である。

 両親の教え……男は女を守らなければならない、嘘をつかない、白人のプロテスタントとして生まれたということは、恵まれたことである、しかしそれは自分の手柄ではない、また、他人を見下す権利もない。息子の成功を両親は期待している。

 一時期、地元の陸軍学校に入ると、著者は軍隊の生活に感激した。かれは喜んで制服を着て、行進した。

 父親の仕事の関係で、著者はテヘランジュネーブ、フランクフルトと各地を転々とする。身体が人一倍大きいことが様々な面で強みになったという。

 再び編入した陸軍学校での教訓……自己申告によって罰を与える制度には問題がある。悪いことをして黙っている人間が勝ち、正直に言った者だけが損をするからだ。

 著者と父親はウェストポイント陸軍士官学校に入学するために奔走する。

 学校に入るためには、成績が優秀であるとともに、国会議員からの推薦をもらうか、もしくは特別推薦を受ける基準の成績を保有していなければならなかった。

 無事入学が決まり、新しい生活が始まった。

 かれは常に楽天的に、人生を気楽に考えることを心がけていた。

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 職種選択branch selectionについて。

 ウェストポイントは本来、工兵育成の学校であるため、最優秀者は工兵科に配属される。歩兵科は、軍のトップにはなれないが、アメリカ国民に愛される多くの将軍を生んでいる。

 機甲科、砲科、通信科、兵站科、それぞれに伝統がある。

 当時は空軍創設間もないころであり、空軍に転換する者も多くいた。

 著者は部隊を指揮したいという思いから歩兵科を選択した。

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 ウェストポイントの生活で学んだことが、著者の精神的な基盤となった。なぜなら、現実の軍隊は、学校の理想とは異なるからだ。

 初任地の101空挺団は、エリート集団という看板からはかけ離れたものだった。

 かれは様々な実情を学んだ。

・出世しか考えない人間

・役に立たない下級士官

・士気が低く、練度の低い兵たち

・使えない装備、制度、組織

 尊敬する上官から、著者は次のようにアドバイスを受けた。

 

 ――腐った実情に直面した場合、そこから脱出するか、より高い階級になったときに改善するかのどちらかである。ただし、脱出した場合、「悪いやつらが勝ってしまう」。

 

 その他、部下をやる気にさせる方法、統率方法には何通りもあること、等を学んだ。

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 かれはベルリンの治安維持部隊に派遣された。兵士たちは皆士気が高く、よく訓練されていた。

 その後、南カリフォルニア大学院に2年間通い、修士号を取った。

 

 ケネディ大統領の時代にベトナムへの派兵が増強されたが、世間はこれを戦争とは考えていなかった。

 大学院卒業後、ウェストポイントで教官をとっていたが、ベトナムでの戦闘が激しくなるのを見て現地行きを志願した。

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 ベトナム戦争

 ベトナムにおいて、著者は軍事顧問として勤務した。南ベトナム空挺部隊に配属され、戦闘に参加した。屍体の運搬や取扱いに関して細かく書かれている。軍隊は戦死者の遺体を敬意を持って扱う。

 現場の実情を見ずに無謀な命令を出す指揮官、マスコミ広報対策だけに力を注ぐ指揮官を著者は反面教師とした。

 負傷し、勲章を受けて帰ってみると、人びとはベトナムに関心がなかった。

 しばらくして、アメリカ人の死者が増え、反戦運動が盛んになった。著者は、南ベトナムは自由と祖国のために戦っていると訴えた。

 規律の乱れた大隊を立て直す話、現場に出たがらない指揮官を更迭する話等。

 地雷原での戦いは兵隊の士気を著しく低下させた。

 

 ベトナム戦争の正当性が疑われ、戦地では初級士官と下士官が不足していた。

 兵隊は徴兵された新隊員ばかりで、大学を休学してやってきた即席の士官は、人命を預かる責任感に欠けていた。

 1970年を過ぎる頃、米兵は肩身の狭い思いをしていた。

 著者はベトナム介入の正当性を信じていたが、1度よく考えてみようという気になった。
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[つづく]

It Doesn't Take a Hero

It Doesn't Take a Hero

  • 作者: H.Norman Schwarzkopf
  • 出版社/メーカー: Bantam Books (Transworld Publishers a division of the Random House Group)
  • 発売日: 2013/02/27
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