映画「サウルの息子」を観に行ったので紹介します。あわせて、年末から年始にかけて観光した資料館について。
◆「サウルの息子」
ハンガリーの若い監督による。
ゾンダーコマンドとして働く男は、自分の息子と呼ぶ子供の屍体を埋葬するためにラビを探す。
終始、男にだけ焦点をあてて撮影されており、収容所の光景は背景としてしか映らない。しかし、言語を絶する現場であることがうかがえる。
サウルと子供の素性ははっきりしないため、おそらく子供の屍体は何かを暗示していると思われる。収容所の人間たちは、写真や、記録に執着し、外界に収容所の実態を伝えようとしている。
本作で希望を感じたのが、事実に基づくゾンダーコマンドたちの反乱である。
ゾンダーコマンド(sonderkommando)というとアインザッツグルッペンの単位部隊や、ドイツの特攻隊を連想するが、こちらは収容所内の特別作業者を指す。
以下の本はまだ読んでいないが、当該監督が参考にしたというものも含め、これから読んでいきたい。
Inside the Gas Chambers: Eight Months in the Sonderkommando of Auschwitz
- 作者: Shlomo Venezia
- 出版社/メーカー: Polity
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Into That Darkness: An Examination of Conscience
- 作者: Gitta Sereny
- 出版社/メーカー: Vintage
- 発売日: 1983/01/12
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アウシュヴィッツと(アウシュヴィッツの嘘) (白水Uブックス)
- 作者: ティル・バスティアン,石田勇治(他)
- 出版社/メーカー: 白水社
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◆しょうけい館
戦傷病者についての資料や遺品を展示している場所。大通りの裏にあり、建物は小さな歯医者かとおもった。ちょうど、水木しげるの企画展をやっていた。
◆予科練平和祈念館
美術館のような外観で、内部は予科練の説明と当時の様子の再現、資料展示等。予科練出身者の多くは特攻に使われたということで、死亡率を示すグラフを見ると当時の異常性がよくわかる。
土浦駐屯地につながっており、課業時間内であれば遺品展示の別館も見学できる。
◆登戸研究所資料館
明治大学生田キャンパス内にある。登戸研究所は陸軍所管の研究機関であり、陸軍中野学校、関東軍情報部、特務機関等と連携して、生物化学兵器、電波兵器、風船爆弾、中国紙幣の偽札など様々な謀略戦兵器を開発した。
わたしが行ったときにはちょうど研究所勤務経験者による座談会が開催されており、おもしろい話を聴くことができた。定期的に企画イベントをやっているようである。
事前に本を読んでおいたので展示物等を観る際に参考になった。
◆その他
今読んでいる『細川日記』のメモ。
――今日の世態は誠に奇態なり。すなわち戦争を学びたる軍人は銃後にありて政治経済に従事しおり、政治経済を勉強したる学生が交戦に従事しおる也。……借問す、是が総力戦の姿なりや。
――自分としてはこのまま東条にやらせる方がよいと思うと申し上げた。それはもし替えて戦争がうまく行く様ならば当然替えるがよいが、もし万一替えても悪いということならば、せっかく東条がヒットラーと共に世界の憎まれ者になっているのだから、彼に全責任を負わしめる方がよいと思う。米国は我皇室に対し奉り如何なる態度をとるか不明なるも、伊藤君もいう通り、個人の責任すなわち陛下の責任は云々するかもしれぬが、皇室というが如き観念は彼らには少ないし、加えるに東条に全責任を押しつければ幾分なりとその方を緩和することが出来るかもしれない。それが途中で2、3人交替すればだれが責任者であるかがはっきりしないことになる。
度々言及される「戦争目的の確立」について……1944年時点での、戦争指導に係る緊要課題が「戦争目的の確立」だったという。
細川日記 上 改版 中公文庫 B 1-35 BIBLIO20世紀
- 作者: 細川護貞
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2002/08/25
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