うちゅうてきなとりで

The Cosmological Fort 無職戦闘員による本メモ、創作、外国語の勉強その他

2016-03-01から1ヶ月間の記事一覧

『黒いスイス』福原直樹

一般的に知られていないスイスの歴史や社会を紹介する。 焦点は、スイス社会の閉鎖性と、第2次世界大戦を生き延びるためにどのような方策をとったかとにあてられている。 1 政府は優生学に基づき1920年代から70年代まで、ロマ族の子供を誘拐し施設に…

『The Israel lobby and U.S. foreign policy』John Mearsheimer, Stephen M. Walt その2

2部 ロビー活動 イスラエルロビーは、合衆国のイスラエル支援を維持させることと、中東のバランスをイスラエルに有利な方向に変えさせることを目標としている。かれらは、イスラエルと合衆国の国益が同一であり同様であると主張する。 著者は、このような動…

『The Israel lobby and U.S. foreign policy』John Mearsheimer, Stephen M. Walt その1

合衆国政治に影響力を持つイスラエル・ロビーについての本。事前知識のない私でも理解しやすく書かれていた。 2人の著者はどちらも合衆国の国際政治学者である。 ロビーの概要について検討した後、どのように対処することが合衆国にとって適切なのかを考え…

会葬

わたしは物乞いの塔にやってきた。 青いくちびるをした法学者の分隊に、たちまち、 捕えられて。 かれらは、歯や舌はもちろん、 食道まで青かった。 主要な骨と肉はすべてひきはがされてしまい、わたしは、 かれらの青い羨道をとおって、 胃のなかに、ぼろぼ…

図書案内:ロシアの歴史

・プーチン時代の本……リトビネンコ、アンナ・ポリトコフスカヤ等もおもしろい。 ・秘密警察、グラーグについての本も、今後読んでいきたい。 ・ヴォルコゴーノフの本……『スターリン』と『トロツキー』はまだ未読だがこちらも読む。 ◆全般 『スラヴ民族と東欧…

『Hitler and Stalin』Alan Bullock その2

11 総統国家 ヒトラー政治の特徴……法律および官僚制への軽蔑、部下たちの対立内紛を温存し、自らの権力に依存させる方針、既存の統治基盤や経済構造の利用。 4か年計画……4年以内に軍と経済を戦争遂行可能状態にするというもの。ヒトラーの大原則はドイツ…

『Hitler and Stalin』Alan Bullock その1

ヒトラーとスターリンの対比列伝。2人の独裁者を比較することにより、ナチ党ドイツとスターリン下のソ連の政治体制を違いを検討する。 両者は、共通する点もあれば異なる点もある。どちらも、急激な社会の変化がなければ、ここまで甚大な影響を持つ地位は得…

『中国人民解放軍』矢吹晋

5、6年間本棚に埋もれていた。1996年出版とだいぶ古いので現状と異なる箇所(特に部隊編制等)もある。 著者は他に『トウ小平』等の著作がある。 *** 「党から軍が生まれ、銃口から政権が生まれる」 本書の目的……解放軍の成立、党と軍の関係、組織編制…

『The Essential Chomsky』

言語学者ノーム・チョムスキーの文章を集めた本。 言語学についてはわたしの素人知識では読みにくい部分が多いが、政治的なエッセイは明快だった。 ◆感想 チョムスキーの政治的立場は、自由主義、人権、民主主義を重んじるものである。かれは大国による侵略…

訓練歌

岩の上で不動の子供オリーブの首筋を通る下手人の弾 減速材がかれらの眼からこぼれ落ちる銀色の飴は物見の塔へ

『華僑』游仲勲

華僑についての概要を解説する本。1990年に書かれたので内容は相当古い。 1 中国人の海外移住 中国人は大陸民族であり常に移動していた。大規模な人口流出はアヘン戦争後からで、特に広東省、福建省から多くの中国人が労働力として東南アジア、新大陸等…

図書案内:ロシア文学

ドストエフスキー、トルストイ等の有名な作者だけでなく、SFや幻想文学、アヴァンギャルドにも面白いものがある。 伝統的に、一般市民にとっては過酷な国であり、ディストピア小説や反体制の作品が多いと感じる。 ・ペレ―ヴィン:『眠れ』、『チャパーエフと…

『経済学の歴史』根井雅弘

近代の経済学の変遷について紹介する本。旅行中に読んだのでメモがどこかにいってしまった。 ――経済学の歴史を学ぶ理由のひとつは、私見によれば、現代経済学の背後に隠されている古の哲学や思想の痕跡を再発見し、現代理論を妄信する危険性を防ぐことにある…

『Weapons and Warfare in Renaissance Europe』Bert S. Hall

ルネサンス期における戦争方法の変遷を、とくに火薬に焦点をあてて論じる。 あらゆる時代を通して、戦争に用いられる技術については、古いものと新しいものが併用されている。 西洋の騎士は剣による戦いを好んだが、必ずしも彼らが伝統墨守に固まっていたと…

『宇垣一成』渡辺行男

宇垣一成についての概説本。 2・26事件以降も、宇垣はたびたび後継首班候補に指名された。これは軍縮と近代化を達成したかれの業績と、「陸軍を抑える」ことを期待してのことだった。 宇垣が清浦内閣の陸相に就任したとき、陸軍は薩摩系の上原勇作率いる上…

骨をついばみながらの歌

探検の記録を燃やす異常者のドイツ人にも煙は見えぬ 増上慢のかぶとを吊るしお湯のなかで貨幣をねぶる波の収束 揺れる手で四足の獣の腹をなでる おおこんなにも薄いプロテイン

『知られざるスターリン』メドヴェージェフ

……体制変革を経て公開されるようになったソ連時代のアルヒーフ(文書)をもとに、これまで知られなかったスターリンのさまざまな言行を明らかにする。 内容として、スターリンの死、スターリンの後継者選び、スターリンの個人文書、スターリン批判の前後、ス…

『出発は遂に訪れず』島尾敏雄

「日の果て」 「です・ます」の丁寧語を用いているので、牧歌的な印象を受けた。 ガジュマルの生息する島に、軍人たちがやってくる。彼らは洞窟に魚雷艇を隠し、特攻の命令を待つ。もっともおもしろい場面は、中尉が崩れた土嚢の修理を命ずるが、部下に陰口…

『波の上を駆ける女』アレクサンドル・グリーン

ロシアの幻想文学作家アレクサンドル・グリーン(1880ー1932)の代表作。 資産をもつ男ハーヴェイは、発熱のために汽車の旅を中断し静かな港町に滞在する。海岸沿いの家を借り、医者のフィラートルらと交流する。ある日ハーヴェイは「波の上を駆ける…

『戦争における「人殺し」の心理学』デーヴ・グロスマン

「敵を殺すこと」について心理学の視点から検討する本。 戦争は人間の活動の中心であり、歴史以前から続いてきた。時代や技術レベルが変わろうとも、敵を殺すこと、つまり殺人が戦争の中核であることは否定しようがない。 著者は軍人だが、殺人の経験はない…

『古代インドの文明と社会』山崎元一

古代インドの要素は今もなお残っているため、古代インドを理解することが、現代インドの理解にもつながる。 王朝の変遷は複雑で、人名も覚えにくい。 *** インド亜大陸は中央のヴィンディヤー山脈を境に南北に分かれ、北においては西のインダス河流域と東の…

『戊辰戦争』佐々木克

鳥羽伏見戦争から函館戦争の終結までを時系列に沿って記述する。 明治維新の時点ですでに天皇が政治の道具、「物体」のような扱いを受けていることに注目すべきである。薩長側は天皇を正統性を付与するものとしてたくみに利用しようと試みた。 明治維新が2…

赤い輪

馬の上に 空中線を たてておく 風力計が 首吊り男の あたまの横で 音をならす 木材相互のたわみにふれて 頭領たちは 土を踏む ひげを伸ばした 残酷おどり

『ミグ25事件の真相』大小田八尋

1976年のミグ25事件について、当事者によって書かれた本。 「本書は、二四年有余も封印されていた「事実上の防衛出動」の実態を、法務官の目を通し、陸上自衛隊を中心に描いたものである」。 *** 一九七六年、函館空港にソ連戦闘機ミグ25が強行着陸…

『文化の国際関係』ミッチェル

本書は文化交流の性格と発展、その組織と運営、実践されている活動について論じる。 *** 文化交流、文化外交は、国際関係において重要な位置を占めている。文化交流の本質は理解することであり、文化の相互理解が友好に役立つ。 文化外交や文化宣伝は、それ…

『プルースト文芸評論』

『失われた時をもとめて』の作者による文芸評論。たまたま古本屋で買ったがおもしろかった。 フローベールの文体は特殊である。線過去、点過去の用法に独自性があり、また「そして」を意外な場所で使う。多様な動詞をもちいる一方、「持つ」で済ませたりしよ…

『大地』パール・バック

中国人家族の数世代について書かれた本。 歴史と世の中の動きに対して、個人が抵抗するのは大変困難である。 具体的な年代や、場所は曖昧にされており、社会情勢の叙述や歴史的説明もない。あくまで王龍たちの生活に視点を定めて物語を進める。文が表現する…

『ゴルギアス』プラトン

弁論とは何かについて。プラトンの善に対する強烈な思い入れが感じられる。 ◆メモ 『ゴルギアス』はソフィスト・ゴルギアスとソクラテスらの対話である。 ゴルギアスは「すぐれた弁論術」をもつ弁論家である。弁論術とは「言論について」(p.17)の技術であ…

アフリカ歌

砂粒は魚の言葉川底の骨まで届く子供の言葉 郵便局員専用車両の板金をなめて焦げつき不動のネズミ 水色の鉄帽子たちが木の上から屍体を吊るすゴードンあそび 水盤に注入されるロータスの溶液、今日を生き血で洗う

『はてしない物語』ミヒャエル・エンデ

少年バスチアンは本屋で万引きした本『はてしない物語』の中に入りこんでしまう。 本の中にはファンタージェンという国があり、少年は能力を持った少年に変身して活躍する。 彼はファンタージェンを統べる女王幼心の君に名前をつけることで、ファンタージェ…