うちゅうてきなとりで

the cosmological fort 無職戦闘員による本メモ、創作、外国語の勉強その他

『Politics among nations』Morgenthau

 国際関係論のうち、リアリズムの代表的な本のひとつとのこと。

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 第1部

 政治思想にはリアリズムと理想主義の2派がある。リアリズムは政治の世界を人間の権力の結果ととらえる。世界の改革は力の原則を通しておこなわれる。リアリズムは抽象原理よりも歴史事実を重視する。政治的リアリズムを貫く6つの原則は以下のとおり。

 

1 政治法則の理解による、理論の発展を目的とする。
2 国際政治を理解するカギとなる概念は、「権力としての利益」である。ここでは、経済、政治家の動機、思想信条は、分析材料としてはあまり重宝されない。

 

 個人や一組織を悪の根源と考えることは失策につながる。

 リアリズムにも規範があり、合理的、効率的な外交が良い外交とされる。また、分析の際は理念的な勢力均衡のモデルを用いる。

 

3 Interest(利益)の価値は不変であり、人間はこれに左右される。これはPower(権力)についても同様である。

4 リアリズムは政治行動における道徳の重要性を認識している。しかしあくまで政治的結果が優先である。リンカン曰く「失敗すれば、10人の天使がほめたたえようと意味がない」。

5 特定の国家の政策を、普遍的倫理と同一視しない。リアリアズムは、「すべての国家は力としての利益に基づいて行動する」と考える。こうした認識は相手の権益を尊重することにもつながる。

「政治的中庸は倫理的中庸となる」。

6 リアリストは他の学派と異なるが、それでも人間を多元的な観念に基づくものとみなす。人間の思考は権力だけでなく、経済、道徳、宗教等様々な要素から成り立っている。

 

 ――政治的でしかない人人は道徳的規制のないけものである。道徳的でしかない人人は用心深さ、打算に欠けたバカである、宗教的でしかない人人は世俗の欲に欠けた聖人である。

 以上、国際政治の理解には、精神的障害を克服し、現実を適切に見極める力が求められる。

 

 国際政治の科学

 国際政治分析の難しさは、どの事象をどう定義するかがあいまいである点に由来する。国際政治を理解し、適切な外交を行うためには、状況の類似と違いを見極めなければならない。

 事実はあいまいで常に変化するため、しばしば、歴史はあやまった類推ばかりを引き起こす。国際政治の複雑さは、単純な解決策や予言を不可能にしている。

 レーニンは革命の直前、「わたしたち老人は革命の決定的な戦闘を目にすることがないだろう」と書いた。国際政治の予測はだれにとっても困難である。

 本章では冷戦の状況が述べられている。この時代を考えるにあたっては、権力と平和が中心概念として用いられる。

 

 第2部 権力闘争としての国際政治

 国際政治は権力闘争である。ここでの権力とは、他人の思考行動に及ぼす支配力(man's control over the minds and actions of other men)を意味する。

 政治的な力とは心理的なもので、強制力と影響力、政治的力と軍事的力、利用できる力とそうでない力、合法的力と非合法的力とは明確に区別されなければならない。

 経済、金融、領土、軍事といった領域の方針については、それが真の目的なのか、もしくは政治目的達成のための手段なのかを見分ける必要がある。

 人間社会には必ず権力闘争があり国際政治も例外ではない。権力闘争は人間の営みに必ずついてまわる。いつの時代でも人は諸悪の根源をさがそうとするがこのような特効薬は存在しない。著者は19世紀から続くユートピア主義を批判する。

 権力闘争は3つの基本形に分類できる。すなわち、外交には力の維持、力の増大、力の誇示の3つの方針がある。これらはそれぞれ現状維持(status quo)、帝国主義(imperialism)、威信(prestige)となってあらわれる。

 現状維持status quoは既存の力の枠内で自らの影響力を保持するためにおこなわれる。しばしば、帝国主義政策と勘違いされる。

 帝国主義は力の増大、パワーバランスの変化を狙う政策である。帝国主義の原動力は権力の拡大であり、経済、軍事力、文化がその手段として用いられる。文化には政治思想、ナチズムマルクス主義も含まれる。

 帝国主義を喚起する状況として、著者は戦勝国、敗戦から復興する国、権力の不在をあげる。

 対抗策として融和、封じ込め等があげられる。

 威信政策(policy of prestige)は、現状維持、帝国主義とならんで根本的なものである。個人、国家ともに、社会的な承認への欲求は活動の源となる。

「他者が我々について考えていることは、我々が実は何者かということと同じくらい重要である」。

 威信政策の目的は、自分の力、自分が持つと思われている力、持つと信じ込ませたい力を他国に印象付けることにある。その手段は外交儀礼と軍事力の展示である。

 こうした威信政策は、現状維持や帝国主義を本来の目的としていることが多い。しかし、独裁者のメンツの維持を典型として、威信そのものが目的化している例もある。

 国力を過大評価させるハッタリ外交も、過小評価させてしまう外交も、大抵、害を招く。

 国際政治におけるイデオロギーの要素……権力追求という真の政策は、常に正当化、合理化によって覆い隠される。帝国主義的政策はしばしば反帝国主義イデオロギーを装う。

 

 第3部 国力とは

 国の野望と個人の野望について。現代社会において、個人の欲求は倫理、法、制度によって抑え込まれている。かれらの欲求不満は国の政策に投影される。ナショナリズムの勃興はしたがって孤立した不安的な民衆の出現と軌を一にする。

 ――ナポレオン戦争の時代までは、ごく一部の集団のみが自分たちと国の外交方針を同一視していた。

 国力を構成する要素について……地理地形、天然資源(食糧、天然素材)、産業発展性、軍事力(技術、指揮能力、量と質)、人口とその動向、国民性、国民の士気

 こうした基礎スペックを活かす上で外交能力と政府の能力が重要になってくる。外交力に乏しい国はその資源等を無駄にしてしまう。

 国民性については、例としてイギリスの中庸性、フランスの個人主義、ドイツの完璧主義と集団主義、ロシア人の忍耐強さ、アメリカの発想・革新力等があげられている。

 こうした性格も国際政治でのふるまいに影響を与えるという。

 政府の外交方針は、民主主義国では世論とよく対立する。著者は、国民の支持と、よい外交方針との間でバランスをとること、リーダーが国民の意見を導いてよい方向へ一致させなければならないことを主張する。

 近年では内政、その国の政治思想や哲学も国際政治と無縁ではない。これは冷戦が何をめぐって対立しているかを考えればわかる。

 ――今日、国際政治における権力闘争は軍事的優勢と政治的優勢のみならず人びとの精神をめぐる闘争でもあるからだ。

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 国力評価……国力の分析、評価は外交に携わるものにとって不可欠である。陥りやすい3つの誤りとして、力の相対性を忘れること、状況を不変のものとして考えること、単一の要素をすべての原因とみなすこと、をあげている。

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 第4部 国力の制限:勢力均衡

 勢力均衡は国際政治における選択肢のひとつではなく国際政治の本質である。勢力均衡の崩壊は、阻止しなければならない特殊状況である。

 分割統治(Divide and rule)、割譲(Compensation)、

 その特徴

 勢力均衡の3つの弱点……不確実性、非現実性、不適切さ

 勢力均衡における3つの戦争の形態……予防戦争、反帝国主義戦争、帝国主義戦争

 

 第5部 国力の制限:国際道徳

 権力闘争を抑制するものとして、道徳、慣習、法がある。この3要素をモーゲンソーは社会秩序と比較させて考える。

 国際道徳は外交の主役が貴族社会から国民国家に変わるにつれて変質した。貴族たちの道徳は崩壊し、外交官は外交界の論理ではなく、各国民国家の論理に基づいて行動するようになった。

 一方で国際世論の力に対して著者は懐疑的である。技術の進歩が諸国民の世論を一体化することはなく、ナショナリズムが行動と思考の単位になるだろう、と予測する。また、全体主義や極度に抑圧的な体制、通信検閲、情報操作は、技術の発展により可能となった。技術が必ずしも国際交流や理解を促進するとは限らない。

 

 第6部 国力の制限:国際法

 国際法の起源は1648年ウェストファリア条約によって領域国家(Territorial States)が新しい国家形態の基準となった時点までさかのぼる。国家間関係を規定し、ルールを設けるため、様々な規則が集約されて国際法という概念がつくられた。

 国際法は原始的な分散した法に近い。よって、まったくの絵空事と考えることも、国内法と同等の効力、強制力を持つと考えることも誤りである。

 モーゲンソーは、勢力均衡こそが国際法の運用にとって根本的に不可欠だと主張する。勢力均衡があって法の3要素、立法、判決、執行が成立する。

 国際法の特徴は分散性、非中央集権性でありこれは主権の原則に由来する。いかなる国際法、国際関係も国内におけるような強制力、執行力を持っていない。主権とは領域内における最高権限の保有を意味するが主権者は何者にも拘束されない。よって主権は、強固な国際法という概念とは対立する。

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 第7部 現代世界における国際政治

 時代が下るにつれて国際政治の様相は変化している。たとえば、ナショナリズムは、独立を求める闘争であったものが、現代では権益拡大と維持を求める運動に変化した。また、技術の発展と大衆社会の発展により、プロパガンダが大きな役割を果たすようになった。政治思想は内容の正しさではなく見かけ上の本物らしさによって広範な支持を得るようになった。

 他にあげられる項目として、東西冷戦における、硬直した勢力均衡、バランサーの不在等がある。全体戦争もまた20世紀に入って表れた現象である。

 

 第8部 平和

 平和を求める取組について。

 武装解除国際司法裁判所、国際政府の概要が説明され、そのどれもが強制力をもった秩序維持には不十分であることが示される。

 国際司法裁判所は現状維持は可能だが、国家間の対立・緊張や、帝国主義を抑えることはできない。また、国際政府は中立性を確保することが難しい。

 武装解除についても、既に安定した国家間だけでしか合意は得られないだろう。また、ある兵器の削減をするかわりに、他の兵器を高性能化することが、平和に結びつくのかも疑問である。

 神聖同盟国際連盟国際連合は、それぞれナポレオン戦争、WW1、WW2の反省から生まれたものだが、いまだに効力を持つに至っていない。

 

 第9部 変革による平和

 世界国家、世界共同体

 第10部 調整による平和

 外交には象徴的、法的、政治的役割が課せられる。しかし、通信の発展等により外交は衰退してきている。

 (略)

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 利益、権力を普遍的な価値ととらえ、これに基づいて国家関係を分析する立場をモーゲンソーはとる。外交政策を、現状維持、帝国主義、威信の3つに分ける方式、国力分析の方法について参考になった。

Politics Among Nations

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