4 侵略開始
ヒトラー、ヒムラーは軍をコントロールするため、ゲシュタポのミュラーらに工作活動をさせた。
国防相ブロンベルクは売春婦と再婚した疑いにより失脚させられ、陸軍総司令官フリッチュは同性愛の冤罪をかけられ失脚した。フリッチュの後任は新ナチのブラウヒッチュがあてられ、また新しい司令部として国防軍最高司令部(OKW)が設置され、カイテル将軍が長となった。
オーストリア併合や、チェコスロバキア解体において、SD(親衛隊情報部)は国外スパイ養成活動を行った。かれらはオーストリアやチェコ、スロバキアの反体制派活動を指揮した。
ポーランド侵攻直前には、SDのナウヨクスらがポーランド兵に変装して国境の放送局を襲撃し、ヒトラーによるポーランド侵攻の口実を与えた。
ポーランド侵攻以降、SDとゲシュタポからなる特別集団(アインザッツグルッペン)による殺戮が始まった。国防軍は当初反対したが、やがてカイテル以下が屈服し殺戮部隊と協調するようになった。
ヒムラーは国防軍の輸送部門をSSに担わせ、軍の独立性を削ぐことに注力した。
1939年10月、警察機構は国家保安本部(RSHA)に統合され、ハイドリヒが長官となった。
5 戦争のなかのゲシュタポ
・ユダヤ人虐殺の開始
・武装SSの創設
・パリのクノッヘン機関……ヘルムート・クノッヘンは哲学博士だったが、1937年SDに加入し、パリの亡命者新聞や出版物の監視・通報業務に取り組んだ。
占領地や戦場では、SSと軍、他の党組織同士の縄張り争いが常につきまとった。
クノッヘンらは国外の新ナチ団体、反ユダヤ主義団体に便宜を図った。
クノッヘンに続いて、オーベルクがフランスの国家警察・SSを指揮した。フランスにおいては、極右・フランス警察組織との協力体制がつくられた。SSが全面指揮を行ったチェコやポーランドとは、状況が異なっていた。
・PPF(フランス人民党)、ミリス(民兵団)、は国家人民連合 (RNP)、 らの協力。
――ここで逆説的ではあるが、ナチ党がその協力者を募ったのは、いちばん激しく愛国者と自称した連中のなかからだった、という事実をもう一度確認しておきたい。
オーベルクはドイツのゲシュタポの編成をそのままフランスでも転用し、弾圧活動を行った。
6 迫害・拷問・虐殺
・ゲシュタポの地域事務所で行われた拷問と処刑について。
・人質と処刑……フランスでは、レジスタンスの活動に報復するために、処刑のための人質が収容所に貯蔵された。フランス全土で2万人以上の人質が処刑された。
・アインザッツグルッペンによる殺戮行為と、「Sトラック」
・チェコ(ベーメン・メーレン保護領)の統治……ノイラートの穏健政策に不満を持ったヒトラーは1941年9月からハイドリヒを派遣し、大量の逮捕、処刑を行った。
1942年5月、イギリスから派遣されたチェコスロバキア自由軍の工作員2名がハイドリヒの車両に爆弾を投げ暗殺した。
ナチの報復は苛烈で、終戦までに36万人あまりのチェコ人が殺害された。
後任のRSHA長官はオーストリア出身のカルテンブルンナーがあてられた。諜報部の実質的な指揮はシェレンベルクがとっていた。カルテンブルンナーは、同郷のアイヒマンとは密接に協力した。
・1941年7月の文書により、ソ連捕虜はジュネーブ条約適用外であると定められた(捕虜の殺害)。
・人体実験……ヒムラーの要請により、SS空軍予備役軍医ジグムント・ラシャーが『悪魔の飽食』風の人体実験を行った。
その他、細菌、ウイルス実験や、断種実験も進められた。
・オーベルクとフランスの親独政府は、人質処刑をやめさせるためにSSとフランス警察との協調体制を整備しようとしたが、効果は上がらなかった。レジスタンスのテロと、報復の人質処刑が繰り返された。
・1943年、戦況が悪化すると、フランス国内でフランス人の武装SS募集が始まった。
ダルナン将軍のSS上級突撃隊長への指名。警察長官ルネ・ブスケの更迭。
7 狂気の終焉
・軍情報部の解体……1943年、軍情報部は解体され、ヒムラー、SDのシェレンベルクによるカナリス海軍大将への攻撃が始まった。カナリスは失脚した。
・1944年7月20日のヒトラー暗殺作戦(「ワルキューレ」)は失敗した。直接関与していないカナリス将軍も絞首刑となった。
・連合軍のノルマンディ上陸以降、ドイツ支配の基盤は崩壊していき、ゲシュタポの役割も二義的なものになっていった。
ヒムラー、ゲーリンク、ボルマンは互いに仲間割れし、単独講和をしようと各自が独走を始めた。
***
解説によれば、以下の点は現在の研究と異なるという。
・国会議事堂放火がゲシュタポの陰謀であるとは確定していない。
・ゲオルク・エルザーによる爆弾テロは、完全な単独犯である。
その他、ユダヤ人の脂肪を石鹸にするというのも、実際には都市伝説だと聞いている。
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