うちゅうてきなとりで

The Cosmological Fort 無職戦闘員による本メモ、創作、外国語の勉強その他

『プリンセス・マサコ』ベン・ヒルズ その2 ――宮内庁による雅子バッシング、皇族への人権侵害

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 皇太子の結婚は進まなかった。アンケートの結果、日本女性の大半は皇太子との結婚を望んでいないことがわかった。なぜなら自由を奪われ、窮屈な環境で生活させられるからである。

 弟の秋篠宮は都内で遊び歩いている悪評が立っており、解決策として兄よりも先に結婚させることになった。

 

 ――こうしたスキャンダルは、いうまでもなく、日本では報じられなかった。……その原因の1つは記者クラブ制度にあるという。

 ――「政治記者はほとんど有名な政治家の腰ぎんちゃくですよ」

 ――「警察記者はペンを持った警察官です。共同通信の記事の90パーセントは記者クラブ発表によるものです」

 ――日本のメディアは自分たちを体制の一部だとみなす傾向があり……。

 

 皇太子は何度も雅子と連絡をとるよう指示し、雅子と小和田家は結婚に同意した。

 世間とマスメディアは熱狂したが、一部の(主に外国人の)ジャーナリストは危惧を表明した。

 

 ――「彼女は非常に現実的で、スマートで、元気で、活発でした。今では三歩下がって歩き、個性もなく、国のために犠牲になったのです」

 

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 雅子は、皇太子のアドバイスを受けて、皇太子妃になれば外交に貢献できると考えていた。しかし、後継者を出産するまでは自宅にほぼ軟禁されることになった。

 

 宮内庁天皇の歴史について。

 

 ――実際は、マッカーサーによる改革の多くは根付かなかった。西洋式の民主主義の代わりに、日本の政治制度はゆがんだパロディのままだった。保守派の自由民主党が戦後ほぼ一貫して政権を握っていた。

 

 戦後、宮内庁の皇族へのコントロールは強化された。皇族で自分の財産を持つものは皆無である。

 

 ――……日本の皇室は生活を納税者に依存する高貴な貧民となった。そして、宮内庁の会計係の手にゆだねられたのである。

 

 税金に依存している事実は、共産党だけでなく、その他の批判の対象となっている。

 

 後継者問題は日本独自である。ヨーロッパの王室は女性君主を認めており、特に不足はしていない。サウジアラビアは後継者候補である皇子が3、4000人に上るため、別の意味で苦労している。

 

 ――「三年たって子供なし――雅子妃の正念場」

 ――……(宮内庁)職員たちは意地の悪い話をメディアに洩らすようになった。

 

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 雅子は鬱になり、また不妊の問題が懸案事項となった。

 やがて、秘密裡に体外受精専門家が東宮御所に招かれ、その後、雅子は子供を出産した。

 しかし問題は収束しなかった。

 

・もう1人出産への圧力

宮内庁職員のリーク……わがままで公務をサボる雅子

・美智子妃との関係が破たん

体外受精専門家の失脚

宮内庁長官湯浅氏の新聞インタビューでの「もう1人ほしい」発言

 

 雅子は体調不良で入院することになった。

 

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 「浩宮の乱」:

 2004年、皇太子が単独で外遊に行く際の記者会見で、「人格否定発言」が飛び出した。

 

 ――「それまでの雅子のキャリアや、そのことに基づいた雅子の人格を否定するような動きがあったことも事実です」

 

 元侍従浜尾によれば、皇太子は宮内庁に宣戦布告した。

 皇太子夫妻は、他の皇族とも対立することになった。

 宮内庁は当初、雅子の症状は「メンタル」的なものであるとし、その後適応障害に変更した。しかし、外国メディアは、雅子がうつ病であると報じた。これは単なる落ち込みとは全く違う病気である。

 鬱を含む精神病にまつわる恥の意識と偏見は、つい最近まで世界中でみられた。

 日本はうつ病患者の認知数が極めて少ないが、一方自殺は多い。多くの日本人はうつ病を病気と認めておらず、「気」の問題と考えがちである。

 

 ――精神的な病気だと認めれば、時代遅れの精神病院に入れられ、薬漬けにされるのではないかという、根拠のないわけでもない恐れを抱くことも、こうした態度の一因となっている。

 

 女官(旧皇族の女性が代々務める役職)たちが、雅子スキャンダルの供給源となった。役人は宗教儀式への欠席を週刊誌でなじった。

 

 ――ある宮内庁の役人は雑誌記者に匿名で語った。

   「これはあそびじゃないんだ。公務よりも重要なくらいだ」

   苦しんでいる皇太子妃の精神状態よりもずっと重要なことは言うまでもない。

 

 宮内庁うつ病治療の権威を招いたが、公式には「うつ病」の言葉を使わなかった。あくまで雅子は適応障害だった。

 

 雅子バッシングがインターネット、メディアで盛り上がったが、問題は、今のままでは間もなく皇室が途絶えるということである。

 

 ――ほとんどの日本人は、皇室のハーレムというこのアイデアは困った時代錯誤で、そのようなものはスワジランドに任せておけばいいと考えている。

 

 皇室継承問題の現実的な解決策は、女性天皇容認(女系天皇とは別)か、旧皇族の復活である。

 2006年、悠仁の誕生により、継承問題は一時棚上げになった。

 

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 田嶋陽子が指摘する根本的な問題……「本当の問題は、雅子妃の公的私的な生活への制限であり、それは彼女の基本的な自由と人権を否定していると書いていたのである」。

 宮内庁は、雅子を離婚させ追い出す方法について研究を始めた。

 雅子の終わりのないうつ病と、「黒衣の男たち」、宮内庁の愚かさが強調される。

 

 悠仁誕生によって、雅子は用なしであると叩かれた。しかし、悠仁も、皇室を継続させるために男子を出産しなければならないというプレッシャーにさらされることになるだろう。

 

 ――「皇室は大使じゃないんですからね。英語を話せる必要もないんです。そのために通訳がいるんですから。彼女の仕事は微笑むことですよ」と攻撃した。

 ――義理の母親の運命を、彼女もたどることになりそうだ。……瞳から光が消え、ときたまメディアの前に姿を現したとき、その口から聞けるのは決まり文句のささやきだけである。

 ――娘の愛子が成長し、宮内庁の養育係によって型にはめられ、従順な操り人形となるのを見守るだろう。

 

プリンセス・マサコ

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