1853年に始まったクリミア戦争についての本。
ロシアがトルコに対し軍事動員を行うと、小アジアおよび黒海権益を脅かされると考えたフランスとイギリスはトルコ側につき参戦した。
戦闘は当初バルト海、黒海において海軍を中心に行われたが、本格的な戦闘は、クリミア半島における陸戦から始まった。
イギリス国民は久々の海外遠征に熱狂したものの、緒戦の大失敗と戦争長期化を受けて厭戦ムードが広がっていく。
細かい事実の中には非常に面白い箇所がある。
・緒戦におけるイギリス陸軍クリミア遠征部隊は壊滅的な有様だった。食糧はいきわたらず、冬服はなく、負傷者は放置され、病死者が続出し、軍馬は輸送途上で大半が死んだ。
哀れにおもったフランス兵は、宿営地において、イギリス兵に食事を分け与えたという。
・ナポレオン戦争が遠い昔となった時代、陸海問わず軍隊は不人気であり、兵隊は貧民か犯罪者の漂着先と考えられていた。部隊は、兵隊たちのアルコール摂取と泥酔に悩まされていた。
ネイピア提督率いるバルト艦隊では、船の乗組員はほとんどが老人または徴用された民間の乗組員で、マストを張るといった基本動作さえまともにできなかった。
・当時の米英関係は非常に険悪であり、合衆国はロシア側を支援していた。
イギリスはフランス帝国のように徴兵制を敷いておらず、兵員数が不足したため、各国で外人部隊を徴募した(ドイツ人、スイス人など)。ところが、合衆国において違法に徴募を行ったため、イギリス人担当者が警察に捕まり、外交関係はさらに悪化した。
Crimea: The Great Crimean War, 1854-1856
- 作者: Trevor Royle
- 出版社/メーカー: St. Martin's Press
- 発売日: 2014/12/23
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◆強制外交
最近のニュースを見て核管理や核拡散に興味を持ち、いろいろと本を読もうと思った。
『軍事力と現代外交』では、強制外交(最後通牒などの手段を通して相手国に自己の意志を強制する)に言及して、大国による小国のコントロールはますます困難になりつつあると述べている。
・敵対者は、要求をのむよりも、コストのかかる戦争を選ぶかもしれない。また、国内的な要因や、自己の英雄イメージから、強制外交の受け入れを拒否するかもしれない。
――要するに、強制外交の結果は敵対者に作用する心理的・文化的・政治的変数に依存し、そのために戦略の成功を予測し確保するのが困難だということである。
- 作者: ポール・ゴードンローレン,アレキサンダー・L.ジョージ,ゴードン・A.クレイグ,Paul Gordon Lauren,Alexander L. George,Gordon A. Craig,木村修三,滝田賢治,五味俊樹,高杉忠明,村田晃嗣
- 出版社/メーカー: 有斐閣
- 発売日: 2009/05/01
- メディア: 単行本
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◆最悪の選択肢のなかで一番ましなものは
合衆国は複数の理由(ミサイル防衛能力の不足、多数のロケット発射拠点、中露のけん制、被害予想と政権支持率)から軍事介入が非常に困難であるため、北朝鮮に対しては別の方法で安全を確保しなければならない。
しかし、今から核開発を放棄すればイラクやリビアのようになるのは目に見えているため、北朝鮮が自らそのような行動に出るとは考えにくい。
では核開発プロセスを遅延させるには何が適切かを考える。
政治的暗殺の可能性について……合衆国や韓国(2017年9月に暗殺ユニット設置を表明)の暗殺作戦に実行可能性があるのか疑わしく、またその意図があるかどうか検討を要する。
あるいは、危険な核保有国の1つとして容認・共存していくことになるだろうか。
Bomb Scare: The History and Future of Nuclear Weapons
- 作者: Joseph Cirincione
- 出版社/メーカー: Columbia Univ Pr
- 発売日: 2008/07/31
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合衆国においても過去に人為ミスに起因する事故が発生しており、危険が常に存在することを示している。
下の本は買ったが未読。
・マイノット事件
B-52爆撃機、誤って核弾頭搭載のまま飛行 写真2枚 国際ニュース:AFPBB News
2007年に発生した米空軍における核兵器の管理ミス事件を受けて、当時の空軍長官、空軍参謀総長が辞職し複数の高官が処分を受けた。
また余波として、当時編成予定だった空軍サイバー軍団(AFCYBER)が急きょ中止になり空軍地球規模攻撃軍団(AFGSC)が編成されることになった。