特攻隊員の遺書、整備員や周辺住民の手記等をまとめた本。
著者は航空基地の通信員として働いた経験のある作家ということである。
特攻隊員の陰に隠れて、批判から逃れようとする戦争指導者や指揮官の姿勢はよくない。
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特攻に志願した者の大半は学徒出陣で徴兵された学生だった。遺書や手記には、隊員たちが家族や知人、周辺の住民と交流する姿が残されている。
上原良司少尉の遺書は、当時の検閲に引っかかったかはわからないが、その他の遺書とは異質である。
――人間の本性たる自由を亡ぼすことは絶対にできなくたとえそれが抑えられているごとく見えても底においては常に闘いつつ最後には必ず勝つということはかのイタリヤのクローチェも言っているごとく真理であると思います。権力主義全体主義の国家は一時的に隆盛であろうとも必ず最後には敗れることは明白な事実です。……明日は自由主義者が1人この世から去って行きます。
著者は特攻隊員たちへの敬意を示す一方、特攻の立案者や軍首脳については厳しく批判する。有名な富永将軍や、隊を置いて島から逃げた師団長等が列挙される。
――……開けないでといわれたお骨箱をあけました。白木の箱の中に「霊」とゴム印を捺した1枚の小さな紙切れが入っていました。お父様はそれを見つめて『こんなものか、こんなものか』と唇をふるわせておいででした。日本という国の正体がこんなものだったのか、祖国に殉じた大事な正人の死がこんなものだったのかと、お怒りだったのでしょう。
戦後、特攻隊員が蔑まれる時期があった。
特攻隊はバカで間抜けな集団とされ、一方でソ連の決死隊は賞賛された。戦中、英雄扱いされていた特攻隊員の家族は、戦後迫害された。
――……(昭和)27年当時は、特攻は笑いものでした。私は、命をかけて守った日本と国民に裏切られ、非難される彼らが哀れでした。敗戦であっても、生命をかけた行為がなぜ罪悪といわれねばならないのでしょうか。
――戦争はその掲げたスローガンの如何に拘わらず、つねにそれ自身罪悪である。しかし、国家の忠誠義務の要請によって死んだ人は、その人びとの人生は、やはり同様の悲劇ではないだろうか。
◆その他
◆関連本
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