公開:2005年
監督:ラース・フォン・トリアー
「ドッグヴィル」の続編。
前回、村を亡ぼしたグレイスと父ギャングたちが、マンダレイの村にたどりつく。グレイスは時代錯誤の白人地主から黒人奴隷たちを解放し、黒人たちに民主主義や自由の価値を教えようとするがうまくいかず、またしても破局となる。
黒人差別と、解放の失敗をテーマにしているため、前作よりもアメリカ合衆国に対する批判が露骨である。テーマや主張が明快なので、イソップ童話に近い。
現実を省みない理想が失敗するということを伝えようとしている。一方で、『カラマーゾフの兄弟』で書かれているように、自立心や適当な準備のない人間たちは、自由ではなく隷属を求める。
グレイスの人間的な未熟、欠落、愚かさがより強調されており、ひどい扱いである。
おもしろい図像……トンプソン銃を持ったギャングたちをバックに、自由と民主主義を訓示する女。最後、怒りにまかせて鞭を振りまわす女。