第2次チェチェン紛争は政府側によって意図的に引き起こされたのではないかと考えるジャーナリストがいる。
――テロ対策はすべての人を結束させる最高の口実だ。
――彼(プーチン)はアンドロポフとブレジネフ双方の血を引いた雑種的人物だ。
――プーチンにとって、このチェチェン紛争が必要なことは明らかだ。2000年には、この戦争を踏み台にして国家元首になり、2004年に再選されるためにもこの戦争が役に立つのだろう。
シロヴィキ(KGB、軍、内務省出身者)が国家を掌握しているのがロシアの過去であり現在だという。
――「ブッシュとプーチンの違いを知っていますか?」
「前者は戦争をするために大統領になったのです。後者は大統領に選ばれるために戦争を始めたのです……」
4
エリツィンからプーチンへの交代は、KGBが決定した事項である。エリツィンの下で3度首相の交代があり、その全員がKGB出身者だった。
プーチンはKGB時代に海外工作員として勤務した。また、サンクトペテルブルク市長サプチャークの下で働いたときは、大規模な汚職に関与したという疑いがある。
2000年の大統領選挙だけでなく、その後の議会選挙、大統領選挙にも、不正と操作の疑いがある。
プーチンの発言。
「エリツィンは私たちが選んだ」
大統領選直前に起こされたチェチェン人によるモスクワ爆弾テロ事件は、KGBによる工作だという疑いがある。そのことを暴露したKGB将校リトビネンコは暗殺された。
5
プーチンによって変質したロシアについて。
KGBの指令を受けたプーチンは、専制体制を強めた。チェチェン人のテロにより恐怖を煽り、国民の支持を得た。
新興財閥を統制し、またロシアを発言権のある国に復帰させる一方、KGB=国家のマフィア化は進み、厳しい情報統制・言論統制が敷かれた。
プーチンが民主主義者であるというのは全くの誤解である。著者によれば、かれはKGBの一員であり、警察国家、強権国家を志向している。
6
プーチン体制とは、共産党を失ったロシアがKGBによって完全に掌握された体制である。
KGBは過去の弾圧や犯罪行為を認めておらず、またプーチンもKGB出身者であることに誇りは持っているが反省はまったくしていないという。
――それでは、KGBの工作員とはどのような人間だろう? プーチンがその典型だと言える。冷静さ、辛辣さ、感情を表さない技、嘘をつくこと、芝居をすること、演出をすること、二枚舌、三枚舌の使い方などを教えるKGBの特別養成学院で教育を受けた「チェーカー」の人間である。彼らは命令には盲目的に従い、いくら野蛮な指示を受けても、躊躇せずにそれを実行するように教育されるのだ。
――ソ連政権の力であるKGBが、民衆の人間的弱点(貪欲さ、極端な愛国主義、恐怖、意気地なさ)や蔓延化した密告に基づいた容赦ない弾圧システムであったことを覚えておいていただきたい。
プーチンの選挙用パンフレットより。
――スターリン時代にも、その後にも、ロシアに政治的恐怖時代があったとは思わない。そのようなことを考えたこともないし、迫害が行われたと想像したこともない。
7
KGBロシアによる工作活動は活発である。フランスは伝統的に親ロシア感情が強いため、利用されてきた。
・新聞、テレビ、言論、有料ニュースレターによる情報操作や洗脳
・亡命ロシア人を装ったKGB職員による反体制派情報の収集、国際結婚、研修目的での浸透
・ロシアン・マフィアの進出……資金洗浄、売春産業、暗殺の横行
――私は、一国の市民全体が、騙されることがあり得ると教えられてきた。騙されていても疑わないのである。そのような時に、黙っていてはならない。黙っていることは騙そうとしている人びとの共犯になることだからだ。私は祖国の危機を傍観していたとは言われたくない。
***