うちゅうてきなとりで

the cosmological fort 無職戦闘員による本メモ、創作、外国語の勉強その他

『君主論』マキャヴェリ

 世襲君主国家はもっとも安泰である。

 「古くから連綿と君位が続いていれば、革新の記憶も動機も消え去ってしまう。変革というものはひとたび起きると、かならずつぎの変革を構築するもので、いわば歯型の石壁をのちのちに残していく」。

 ――人はささいな侮辱には復讐しようとするが、大いなる侮辱にたいしては復讐しえないのである。したがって、人に危害を加えるときは、復讐のおそれがないように、やらなければならない。

 

 君主制には、当時を例にとり、トルコのような中央集権的君主国家と、フランスのような封建制国家がある。前者は中国に近く、君主の下には公僕が隷属しているだけである。一方フランスは家臣団を備えた諸侯によって各地が治められている。

 トルコ型国家は、侵略するときに寝返るものがいないため攻めるのは難しいが、いったん成功すれば統治はやさしい。フランス型国家は、侵略のさい諸侯を寝返らせて容易に征服できるが、この諸侯を手なずけるのが難しい。

 イタリア諸国での具体的な戦史がつづく。残虐行為は一気呵成ににおこない、恩恵は小出しにするのが長く統治をおこなう術である。

 「敵軍はこちらの田舎に到達すると、とうぜんのことのように、村落を燃やしたり壊したりする」。

 「しっかりした軍隊があってはじめて、よい法律がありうる」。

 マキアヴェリの時代はちょうどローマ教皇が俗権を強化しはじめた頃だった。当時の均衡はフィレンツェ、ヴェネチア、教皇領、ナポリ、ミラノだった。

 軍隊には自国軍、傭兵軍、外国支援軍、混成軍があり、傭兵軍と外国支援軍は「役に立たず、危険である」。傭兵は「ほんの一握りの給料が目あてで、ほかになんの動機も、愛情もない」、そしていざ戦闘になると逃げるか消え去るかである。

 ローマ、スパルタは自国軍を整え、スイスは強力な兵力をもつ。傭兵隊長は逸材の場合でしゃばって野心の達成に走り、無能は任務を遂行できない。彼曰く傭兵はイタリアの戦争をだめにしてしまった。

 教皇ユリウスはフェラーラ攻略の際スペイン国王フェルナンドに支援軍を要請したが、こういうことは招いた側に不幸を招く。外国支援軍が負ければ彼は亡び、勝ったら勝ったで外国の虜になってしまうからだ。

 コンスタンティノープルのヨハンネスⅥは、トルコ兵一万人を招いたが戦がおわっても彼らは退去しなかった――ギリシアの、異教徒への隷属は、じつにこのときから始まった。

 勝ちたくないならぜひとも外国支援軍を用いよ、と彼は言う。自国軍こそ真の国力である。

 ――ローマ帝国崩壊の端緒をさぐってみると、それは、ゴート族を傭兵に使い出したことに、もっぱら起因すると知れよう。

 「この世の物ごとのなかで、みずからの力に基づかない権力者の名声ほど、もろく、あてにならないものはない」。

 武力をもたない者は侮られ、兵士から尊敬されない。また、古代戦史を読み学ぶことが大切である。

 「善い行いをすると広言する人間は、よからぬ多数の人々のなかにあって、破滅せざるをえない」。

 お追従はもっとも警戒すべきものだが、誰から真実を言われても怒らないと思われては、尊敬を失う。

 「すなわち、君主は、国内から幾人かの賢人を選びだして、彼らにだけあなたに自由に真実を話すことを許す。しかも君主の下問の事柄にかぎって」。

 「人はやむをえない状況から善人になっているわけで、そうでもなければ、きまってあなたにたいして、邪になるものだ」。これがリアリズム外交の祖というものだろうか。

 ――だれかが助け起こすのを期待して、あなた自身がすすんで倒れこむようなものだ。だれかが助け起こしてくれるような事態は、まず起こりはしない。かりに起きたところで、そんな備えは、あなたの意志によるのでなく、臆病から生じたのだから……

 「もともとこの世のことは、運命と神の支配にまかされているのであって、たとえ人間がどんなに思慮を働かせても、この世の進路をなおすことはできない。いや、対策さえも立てようがない」。

 それでも、「われわれ人間の自由意志は奪われてはならない」。

 モーセがその偉大さを発揮するには、イスラエルの民がエジプトで奴隷にされている必要があった。人間を屈服させるのは愛情ではなく恐怖である。徳の高い人間になるのではなく、徳の高いふりをすることが重要だという。

 

新訳 君主論 (中公文庫BIBLIO)

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